巫女と不思議な空間
八咫空 朱穏
第1話『妹の頼み事』
今日はこんなところかしら。
普段この村で生活しているから、神社から里に下りること自体、回数は多くはないが日常の範囲内。しかし今回の外出は、少しばかり特別なものだ。
昨晩のこと、私の部屋の
「姉さん……。ちょっと、いい……かな?」
「ええ、大丈夫よ」
「お願い、が……あるの……」
「お願い? 珍しいわね、何かしら」
「そろそろ、
「何を?」
「神社の、植物……。大丈夫か、診て……もらう、の……」
「誰に?」
「フェネル、に……」
「フェネルにお願いすればいいの?」
「うん……」
妹は小さく
「でも、なんで私に
「明日、から……
この時期、
この手伝いは、
夕朱穂谷は、皇国
なにしろ、皇国全土の神事で使う米をここだけで育てているのだ、火灯刻社の関係者だけでは
手伝いと言ってもそんなに軽いものではなく、そこに行っている間は、
ここ
私が手伝いに行こうとすると、決まって妹は『私、が……行く、の……』と言って
私にはよくわからないが、極力他人と話そうとしない妹がここまで意志を示すのは珍しい。それに、妹に楽しいと言わしめるものは滅多にないので、私はその仕事を任せてしまう。
そういう訳で、毎年妹が夕朱穂谷へと手伝いに行っているのだ。
「そういうことね。わかったわ」
「姉さん、ありがとう……」
昨晩そんなやりとりがあって、私は妹からおつかいを頼まれている。……が、ひとつ重大な問題がある。
聞いておけば良かったと
知り合いで真っ先に思いついたのが神社の神主。しかし、なぜか東雲よりも別の場所の方が
次にフェネル。彼女は魔女だから、店の場所を知っているはず。……いやいや。彼女の店に行こうとしていて、その場所がわからないんだからこれでは
その次に思い浮かんだのがソラ。たまに境内で空を
何なら、彼も店を営んでいる。店
動かないことには何も始まらない。勝手に見当をつけて、まずは彼の店に行くことに決めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます