シャープペンシルで<嘘>を書いてみた

卯月ゆう

プロローグ

 君は繊細な性格なんだよね......。


 放課後の教室。

 夕日が教室の中に降り注いでいる。それはどのように思えるだろう、一日が終わった安堵なのか、寂しい夜の世界なのか。教室の中にたしかな陰影が形作られていた。

 校舎の中には、遠くから聞こえる練習の声しか響いていない。そんな時間帯に私は教室へ足を踏み入れた。


 * * *

 私は、彼の前に手を広げてみせた。

 手のひらの上には、彼のシャープペンシルが乗っている。

「ほら、落ちてたんだよ」

 * * *


 彼はその声に反応したのか、瞳からは涙がこぼれていた。

 私の腰に手を当てて泣きついてきたんだ......。


 私はどうすればよいのか分からず、彼の頭をそっと押さえるしかできなかった。

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