転生したら水属性魔法使い! 他の属性の魔法使いと出会って魔王を倒してくださいby女神→やだよ!田舎でスローライフしたいですby主人公。
うんこ
第1話 若干のシスコン癖あり。
紅蓮蒼(ぐれんあおい)、16歳。
どこにでもいる高校生。
家族構成、父、母、妹。
身長170cm、62kg。
顔、普通。
髪、黒。
好きなモノ、ラノベ、ゲーム。
異世界系のものが特に。
帰宅部。
中学まで空手をやっていた、一応初段。
そのせいで不良に絡まれることは無かった。
女の子は好きだが、今は特定の好きな女の子なし。
若干のシスコン癖あり。
蒼の目の前にいる、白装束、白い髪の女性。
彼女は手にしたタブレットの様なものに人差し指を這わせながら、蒼のプロフィールを読み上げる。
―――そして、最後にこう言った。
「ようこそ、異世界へ」
と。
◆
事の始まりは約一ヶ月前に遡る。
それはいつも通りの日常だった。
朝起きて学校に行き、授業を受け、帰ってからゲームをする。
そんな何の変哲もない生活を送ってきた。
しかしある日突然、それは起きたのだ。
「おにいちゃーん! あれかってぇ!」
妹の美麗(みれい)がテレビ画面の向こう側のおもちゃを指さしながら俺を呼ぶ。
蒼はコントローラーを置いて振り返る。
そこには、段ボールで自作したプリティマジカルの魔法ステッキを持った美麗の姿があった。
蒼は思わず苦笑する。
もうすぐ小学六年生になるっていうのにまだこんなものに興味があるのか……。
俺はため息交じりに口を開く。
可愛い……
蒼は黒髪ツインテールの美少女、美麗の手を取り、こう言った。
「お兄ちゃんの言うこと、何でも聞くか?」
「うんっ」
即答である。
丁度、お年玉の残りがある。
蒼は、美麗のために無意識に使わずにとっておいたお年玉の残りを使うことにした。
「行こう! イオゥンへ!」
◆
プリティマジカルの魔法ステッキ。
これは魔法少女アニメの主人公、愛崎えみりが持つ魔法の杖だ。
このアニメを見て育った子供たちなら誰もが憧れる代物だろう。
だが、蒼は別にこれを欲しかったわけではない。
可愛い美麗のためだ!
ただ、自分のお金を使って買う以上、妹には喜んでもらいたいと思う!
「お兄ちゃん! ありがとう!」
笑顔の美麗。
蒼の身体に電気が走る。
大好きな妹に喜ばれるなら、俺は妹専用の金庫になる。
そう誓った時だった。
「きゃー!」
イオゥンは人通りが多い。
子供の鳴き声は珍しくない。
だが、今聴こえたのは、悲鳴だ。
若い女の。
「わー!」
「きゃー!」
蒼は異常な事態だと悟る。
前方の人だかりが蜘蛛の子を散らした様に、バラバラになる。
血を流している人もいる。
人をかき分け、日本刀を振り回す凶刃の姿が見えた。
「美麗、逃げるぞ!」
蒼は美麗の手を取る。
「ううっ……」
美麗は恐怖で動けなくなっていた。
目に涙を一杯ため、さっき買ったばかりの魔法ステッキを握り締めている。
美麗の足元には水たまりが出来ていた。
おしっこを漏らしていた。
「やばい!」
無敵の人が向かって来る。
「美麗に手を出すな!」
蒼は無敵の人の前に立ちはだかる。
「どけー! 俺は死ぬんだー!」
無敵の人が日本刀を袈裟切りに振り下ろす。
ザクッ!
蒼は激痛の中、意識を手放した。
◆
「で、ここに?」
蒼は自分で自分を指差した。
目の前の美しい女性は、頷いた。
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