第177話 新しい時代のために

「それに僕も、実は商売をやってみたいんです」

「お商売を?」

「ええ」


 太郎は、今の梅さんの身元引受人でもある師匠と他のことも話し合いました。


「せっかく御用商人とお知り合いになったし、それに、広場でお団子売るの楽しかったので」

「ああ、あのお団子はおいしかったですねえ」

「そうでしょ? あれはおばあさんが僕のために色々考えて開発してくれたものなんですが、まずはあのお団子の作り方を習って、それで売ってみようかなと思います」

「でも、こんな大地主の御曹司おんぞうしが、そんな苦労なさらなくても」

「いえ、自分の手できちんと稼いで、そういう生活がしたいんです」

 

 太郎はおじいさんおばあさんと一緒に田畑を耕した時の充実した経験、それからこの間の団子売りの体験から、そう考えるようになっていました。


「なので、たとえば、師匠の一座の公演についていって、梅さんはそこでうずめ様、僕はそのそばで団子売り、なんても素敵じゃないですか?」

「いや、いいですねそれ」


 師匠は太郎の自由で前向きな考え方がすっかり気にいりました。


「お団子だけじゃなく、色んなおいしい物が売れたら楽しいので、そういう研究もおじいさん、おばあさんたちともして、そうそう、やらし屋さんとも一緒に本も売れたりしたら楽しいかも」

「なんでしょう、太郎さんは本当に新しい時代のことを見ていなさるんですねえ」


 師匠がシンプルな点3つの上2つみたいな目を細く細く細めて、とてもうれしそうに言いました。


「本当に、うちの大事な弟子をお任せできる方ですよ太郎さんは。俺はうれしい」

「そう言ってもらえると僕もうれしいです。まだまだ未熟ですが、色々と教えてください」

「おう、まかせとけ」

 

 師匠は梅さんの芸だけではなく、太郎のこれからの師匠にもなってくれるでしょう。

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