第149話 転売屋とは?

「それなんですが」


 太郎があまてらす様の話の腰を折るのは悪いなと思いながら、遠慮そうに話しかけます。


「外道の鬼、って何なんですか?」


 太郎にしてみたら、いきなり現れた妙なやつらがいきなり洗濯娘たちをぶっとばし、出見世の人たちにも乱暴しているので思わず止めた、それだけのことです。乱暴ではありましたが、「外道」とまで呼ばれる意味がいまいちよく分かりません。


「太郎さんはほんにこの島や鬼のこと、ご存知なくていらっしゃるんですねぇえ」


 あまてらす様はうれしそうにクスクス笑い、いつものように扇で口元をふぁさふぁさと仰ぎました。


「外道の鬼とは、みなが欲しがるお宝を、野蛮な手段で手に入れたり、転売屋と一緒になって売ったり、そんなことをする鬼とも呼べない鬼のことなんです」

「転売屋?」

 

 太郎にも「野蛮な手段で手に入れる」というのはなんとなくわかりますが、「転売屋」というのがよく分かりません。


「昨日、太郎さんもご覧になったでしょう? 元々、ここで売られる本は、どれも数が少なく手に入れるのが難しい本ばかり」

「らしいですね」

「なので、みな、必死になって手に入れたがる。でも当然、手に入れられない者も出る」

「かも知れませんね」

「それを、欲しがる人に高い値段をつけて売って、悪どい稼ぎをするのが転売屋ですよ」

「なんと、そんな悪いことを」


 そう言って、なんとなく分かった気がしていますが、何しろお金に苦労したことのない太郎、高く売ることのどこが悪いのか、本当のところは全く分かっていません。

 ですが、さっきのように無理やりに奪うようにする行為、それが高く売るためだとすると、それはやっぱり悪いことだとなんとなく理解したようです。

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