第147話 控えおろう!

「お役人様!」


 こちらはお上の権威を傘に来て太郎たちをひれふせさせようとしていたやらし屋、なんとかあまてらす様のキラキラをよけつつ、お役人を叱咤する。


「一体どうなっておるのですか! さあ、早くこやつらを捕らえてください!」

「だまれい!」


 悪徳役人はまるで自分が正義の味方のようにやらし屋を怒鳴りつけ、


「この紋所が目に入らぬかあ!」


 と、あまてらす様から受け取ったある物をつきつけた。


 じゃあああああああん!


 そんな音がするようにしてやらし屋に突きつけられた物、それは、


「そ、その紋所は……」


 見た途端にやらし屋は、


「ははあー!」


 とひれ伏して、できるかぎり平べったく地面に張り付いてしまいました。


「え?」

「一体何?」

「何がどうしたの?」


 見ている周囲はぽか~ん、です。


「きさまらあ、何をしておる、これじゃ、この紋所じゃあ! 控えおろう!」


 言われてみんなあらためてその差し出すものを確認し、


「ああっ!」


 と、やらし屋の後を追うように、敵味方の区別なく次々と地面に張り付きました。


「ええっ、何?」


 太郎がきょとんとしていたら、


「太郎さん、あれ、あの紋所、ようくご覧なさいな」


 あまてらす様が楽しそうにほほほほほ、と笑いながら、悪徳役人が持っているそれをひょいっと取り上げ、太郎に見せてくれました。


「え、これって」

「そう、おかみの紋所です」


 そう、そういう偉い人の紋所が入った印籠です。みなさん、これがどういうものかよおくご存知の「アレ」ですね。


「ええっ、なんでこんなもん!」

「なあに、簡単なこと。これをお貸しくださった方、あたくしのふぁんでしてね」


 なんと、あまてらす様、とんでもない方とお知り合いだあ!

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