第108話 3匹の理由
さて、こうして太郎と3人のお供は一緒に旅をすることになり、その夜は旅籠に泊まることになりました。
「じゃあ、鬼ヶ島へは『お祭り』の日にならないと入れないんだね」
「はい」
「そうなんです」
「当日まで入れません」
洗濯娘たちはおじいさんとおばあさんに話したよりも、本当はもっと詳しいことを知っていたようです。でもおかげで鬼ヶ島に入れる日や時間、その方法は調べずに済みました。
「それで、なんで犬と猿と雉だったの?」
「はい、それなんですが」
洗濯娘たちは目的地とそこへ行く理由はかいつまんで話しましたが、あの時は何しろまだお腹が空いていたし、そこまで詳しくは話をするゆとりはありませんでした。宿に落ち着き、食事も出してもらってお風呂にも入り、やっとゆっくり話ができる体制が整ったのです。
「何しろ鬼ヶ島に入るには何かの扮装をしてくること、というのがお約束になってるんです」
「うん、それはお昼に聞いたね。まさか洗濯子ちゃんたちが鬼ヶ島に行くつもりで休みをもらった、というのにはびっくりしたけど。まだその理由も聞いてはいないし」
「はい、ごめんなさい」
「それはいいけど、で、なんで?」
「はい、それでですね、前の町で扮装一式を揃えたんですが、何しろ足元を見られてしまって……」
3人が言うことには、普通の人間の姿では入れないのでみんな時間をかけて扮装を作ってくるのだそうですが、何しろ3人には急に行くことを決めたので、そんな時間がありませんでした。それを分かっていて扮装屋は普段の数倍の値段をふっかけてきたのでした。
「そりゃもう高くて」
「それで仕方なく一番安いのを選んだので、ああなりました」
「本当はもっとかわいい、それこそ『あまてらす様』や『うずめ様』みたいな格好したかったんだけどねえ」
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