第72話 アレの話
「いいですよ、その頃に何日かまとめてお休みをあげましょう」
「本当ですか!」
3人の洗濯娘の目がきらきらと輝きました。
「ありがとうございます!」
「このご恩は忘れません!」
「うれしいです!」
飛び上がらんばかりに喜ぶ洗濯娘たち。
なんだかすごくいいことをした気がします。
「じゃあ、それで教えてもらえるのかしら?」
「分かりました、話せることはお話しします」
3人娘はニコニコしながらそう約束をしてくれました。
「それで、鬼ヶ島というのは一体なんなんじゃ?」
「それなんですけど」
洗濯娘たちがおじいさんとおばあさんを右手でちょいちょいと呼びました。
「なんじゃ?」
「なんですか?」
「あの、あまり大きな声ではできない話なんで」
そう言って、小さい声でこそこそと話します。
「はい、私たちがしゃべったってことは内緒にしておいてほしいんです」
「分かった、内緒にしよう」
「ええ、あなたたちから聞いたって絶対誰にもしゃべりませんよ」
「お願いします」
5人は秘密を共有するようにうんうんとうなずき合いました。
「じゃあ、鬼ヶ島、じゃなくて、アレの話を聞かせてくれるかな」
「はい、アレの話ですね」
これでもしも誰かに聞かれたとしても鬼ヶ島の話と知られずに済むでしょう。
「えっと、なんでもアレが宝物を持ってある島に集まるって話でしたよね?」
「はい、そうです」
「その宝物っては一体なんなんじゃ?」
「それは……」
ちょっとだけ口ごもり、
「まあ、色々なんですが」
「色々?」
「はい、本当に色々な物があるらしいです」
「ほう」
「アレたちが1年かけて集めた自慢の宝物を持ち寄って、それを見せ合うとか」
「そんなことが」
おじいさんとおばあさんは想像しました。
ゴツゴツと尖った岩が生えた島。そこに鬼たちが集まって、下品に笑いながら宝物を持ち寄って笑っている。考えるだけでぞっとする光景でした。
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