第7話 この子どこの子?

 とりあえずなんだか分からない状況をなんとかして、すやすや眠る赤ん坊を見て、おじいさんとおばあさんは顔を見合わせました。


「……………………」

「……………………」


 二人共、何をどう言えばいいものか分かりません。


「もしかして」

「ん?」

「あの桃、罠だったんじゃ……」

「罠?」

「ええ」

 

 おばあさんが深刻な顔をして続けます。


「どこぞの誰かが生まれた赤ん坊が邪魔で、それで、あの桃に入れて流して、誰かに拾ってもらおうとして、それをわたしが拾ってしまったってことじゃ……」

「あ……」


 もしかしてそうかも知れない。


「おじいさん、ごめんなさい……」

「え?」

「わたしが、意地汚く大きい桃を拾ってしまったばっかりに……」

「おばあさん……」


 しゅんとするおばあさんに、おじいさんはどう声をかけたらいいのかと考えました。


「いや、いやいや、よく考えてごらん?」

「え?」

「うちには子どもがおらん。そこにこんな子がやってきた。これは、わしらに育てなさいとの天のご命令かも知れん」

「おじいさん……」

「今まで、ポチだってコロだってタロだってミケだってミイだって、どんな犬や猫でも、うちに迷い込んできた子は最後まで大事にしてやっただろう? 人間の子だって同じじゃないだろうか」

「おじいさん……」

「それにな、もしも、おばあさんの言う通り、どこかの誰かが捨てたとしたら、そのうち育ててくれてありがとうってお礼に来てくれるかも知れん。どっちにしろ、こうして引き受けてしまったんだ。大事にしてやろう」

「そうですね、ええ、そうです」


 二人共今まで市で動物を買ってきて飼ったことはありません。

 ですが、迷い込んできた動物は犬でも猫でも鳥でも爬虫類でも魚でも、どの子もご縁のある子として、ずっと大事に、我が子のように可愛がってきました。


「生き物は、命は大事にしてやらにゃいかん」


 ただし、食べる目的のイノシシやヤマドリは除く。

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