鳩胸慕情 〜アーノルドの場合〜
ポテろんぐ
第1話 俺の乳首茶は飲めねぇってのか!
全国から男の中の男の不良が集まる『魁!!男塾』のように、ここはアメリカ、ビバリーヒルズにある、全米からイケてる奴らが集まってくる土下座高校。
アーノルドはこの学校に通う高校二年生。イケメンだし、成績優秀でテストの成績はいつもオールA。
もちろん両親は大会社の社長で金持ちで、性格もとっても良いやつ。
そして乳首相撲の全米の高校生チャンピオンで、すでにプロのスカウトが目に付けていると言う、同級生の女子達の注目を集める学年で、いや学校で一番イケてる男だ。
学校で一番イケてる男、アーノルドの乳首部の練習には、今日も女の子たちの歓声が飛んでいる。
「きゃー、アーノルドさーん!」
女の子の黄色い声援に同じ乳首部の奴らは「やれやれ」と呆れてしまう。
「全く、アーノルドのせいで俺たちの練習にも身が入らないよ」
「いつもすまない」
アーノルドはため息をついた。そう言うアーノルドも大会が近くから乳首相撲に集中したいが、無碍にもできないから注意もできない。
学校1のイケてる男、アーノルドも大変だ。
「アーノルド、大会が近いんだ。俺と相手を頼む」
「OK、ケビン」
大会も近い事もあり、乳首相撲部は熱気に溢れ、一番強いアーノルドに戦いを申し込んでくるチームメイトも多い。
「行っておくが手加減はしないぜ!」
アーノルドはそう言って自分の乳首、通称『マイ乳首』に相棒のカブトムシ『ピカチュウ』を装着する。
乳首相撲は己の乳首と相手の乳首を紐で繋いで引っ張り合う格闘技だ。そして乳首に紐を装着するものは洗濯バサミが基本と言われているが、公式ルールでは乳首にくっついていればなんでも良いとされている。
アーノルドが使っている相棒はカブトムシのピカチュウだ。コイツはアーノルドと全米チャンピオンまでの道を共に登った最高の相棒だ。
「レディーゴー!」
アーノルドの乳首相撲の試合が始まった。
「ぐ、ぐおおお」
試合は開始してすぐにアーノルドが優勢。相手の乳首は強烈な力で引っ張られ、今にも敗れそうだ。もう後がない。
乳首相撲の勝負は乳首を引っ張られ、その痛さで相手がギブアップをしたらKO勝ち。
他にも乳首を引っ張られる事で乳首がバルブごとが引っこ抜かれたらテクニカルノックアウトになる。
「どうした、ケビン! そんなんじゃ、次の大会も一回戦負けだぞ!」
「く、くっそおおおお」
アーノルドの全米級の引っ張りに悶絶をし、ついに限界が来たケビンの乳首が引っ張られすぎて、
バイーン!
大きな音を立てて、相手の乳首がバルブごと引っこ抜かれ、アーノルドが見事に勝利した。
「勝者、アーノルド!」
審判がアーノルドの手をあげる。
「くそ! また負けた!」
「ふ、まだまだ修行が足りないな」
そう言って、アーノルドとケビンは試合終了の握手をした。そして、
「ケビン、お前の乳首茶を飲ませてくれるか?」
「え? 俺の乳首茶を」
乳首を引っ張りすぎて、乳首のバルブが外れてしまうと、穴が空いた乳首から女性なら母乳、男性なら乳首茶が出てきてしまう。
試合後、アーノルドは紙コップをバルブが外れたケビンの乳首があった場所に持っていき、乳首茶を注いた。
バルブが外れて流れる乳首茶は、そのまま放置すると床が濡れてしまうので、試合に勝った方が飲んであげるのが礼儀とされている。
そして日本の茶道で『結構なお手前で』と褒めるのと同じように、人肌に温まっている乳首茶を飲んで『てかお前、こんなにあったかい体をしていたんだな』と言ってあげるのが礼儀とされている。
「てかお前、こんなにあったかい体をしていたんだな」
乳首茶を飲んだアーノルドにそう言われたケビンは、頬を赤らめた。そして、
「ば、馬鹿野郎……脇の下はもっとあったかいんだぞ」
と儀礼通りに言った。
これで友達だ。
この乳首茶を飲むのは別に強制ではなく、『友達になりたくないやつの乳首茶は別に飲まなくていい』と言う暗黙のルールがある。
むしろ、乳首茶を飲んでおいて、Bまで許す覚悟がないなら、逆に相手に失礼だと自論を掲げる人もいるくらいだ。
その後、嗚呼、優しいアーノルド……お前と言うやつは、バルブが外れて穴が空いたケビンの乳首に『風邪ひくぞ』とまたバルブを詰めてあげた。
乳首のバルブは乱暴に扱うとガバガバになって、うまくハマらなくなる事があるので大変なのだ。
その場合やコケシとか、乳首と同じ大きさの穴を塞ぐものを無理やり突っ込んで一生を送らないといけない。
リングの外では、アーノルドに勝負を挑んで負けた部員が、負けすぎてガバガバになったバルブを端っこで装着しようと必死で苦戦していた。
もちろん、バルブがガバガバになったら、もう二度と乳首相撲をすることはできない。
乳首のバルブは神様から与えられた賜物なのだ。
「どうした! 大会は近いんだぞ! もう終わりか!」
この日は、アーノルド一人で部員全員の乳首のバルブを外してしまった。全く、この男の強さと言ったら……やれやれ。
「きゃー、アーノルド様、かっこいい」
「ふん! 高校生のガキが調子に乗りやがって! どけ!」
その時、アーノルドに歓声を送る女子の群れを押し除け、一人の巨体が部室に入ってきた。
「ん? 誰だ? 関係者以外は立ち入り禁止だぞ」
アーノルドがそう言うが、その男は帰ろうとしない。
「お前がアーノルドか。全米の高校生チャンプだからって調子に乗ってるってのは?」
「そうですが、何の用ですか?」
アーノルドは、パッと見た瞬間に『只者ではない』と言うオーラをその男から感じていた。
その時、バルブを乳首に嵌めようと苦戦していた部員が、入ってきた男を見て驚いた声を出す。
「あ、あの人は!」
すぐにアーノルドに近寄る。
「おい! アーノルド。この人は検便大学の乳首相撲部のキャプテンのゴンチチさんだぞ!」
「なんだって、あの大学乳首相撲カリフォルニア州チャンピオンのか!」
正体を知られた男は、自慢げにアーノルドを見下ろした。
「正体が分かったなら話は早い。アーノルド。俺と勝負をしろ」
ゴンチチさんはそう言ってアーノルドにコーカサスオオカブトを見せつけた。
「あれはコーカサスオオカブト。あれを乳首につけるってのか! さすが大学乳首相撲はスゲェぜ!」
ゴンチチのコーカサスオオカブトを見て感激している部員の横で、アーノルドは少し考えた。
この男と戦えば自分もただではすまない。
おそらく、乳首の粉の一粒レベルのギリギリの戦いになるだろう。
乳首相撲は、バルブが外れずに勝負がつかない場合は、削れて床に落ちた乳首の粉の量が多い方が判定負けとなる。
それは乳首が削れてしまうので、年頃には痛いところである。
しかし、相手は大学かリフォルニアチャンプ、強い男と戦いたい。そしてアーノルドは覚悟を決め、頷いた。
「良いでしょう。大学のカリフォルニアチャンプ、相手に不足はありません」
アーノルドはそう言って乳首にピカチュウを装着した。
「よし! 勝負だ!」
全米高校生チャンプと大学カリフォルニア州チャンプの野試合が始まった。
ゴンチチがシャツを脱ぐと、歓声が上がった。
「黒い。なんて黒い乳首なんだ。あれが大学生。近寄ったら吸い込まれそうだ」
アーノルドは初めて見るエゲツないドス黒さの乳首に恐怖を覚えた。まるで、人間の目だ。こっちを絶えず睨みつけている人間の目だ。
このドス黒い乳首でゴンチチがアーノルドを威嚇して来た。
対してアーノルドの乳首は真ピンク。
見た人の心をホッとさせてくれる、とても優しいお乳首をしてらっしゃる。
大会中の仕上がったおピンクぶりときたら、デスメタルバンド界隈の男達がアーノルドのところに来て「乳首をピックで弾かせてください」と頭を下げにくるほどだ。
「レディー、ファイ!」
ゴンチチの掛け声と共に試合が始まった。
ボニューン!
「ぐわあああ! バルブがぁ! バルブがぁ!」
アーノルドは開始早々に乳首を引っ張られ、バルブが弾け飛んだ!
「あ、あのアーノルドが瞬殺だと!」「こ、これが大学チャンプの実力かぁ!」
アーノルドは弾け飛んだ乳首を手に取り、ゴンチチを見上げた。
「お見事です。大学カリフォルニア州チャンプ」
そう言って、アーノルドは自分の乳首から滴れる乳首茶を紙コップで受け、ゴンチチに「さぁ、お飲み」と差し出した。
これは乾杯を意味する屈辱的行為だと言われているが、最大の敬意を相手に表す行為でもある。
「ふん。くだらん」
しかし、ゴンチチはアーノルドの乳首茶を飲まず、そのまま道場を後にしてしまった。
「飲まなかった」
乳首茶を飲んでもらえなかった場合は、自分で飲み「おいちぃーのに」と可愛く言うのが作法とされている。
「おいちぃーのに」
「なぜ、アーノルドの乳首茶を飲まなかったんだ。大学チャンプ、失礼なやつだぜ」
「いや、ケビン。あの人はやはり凄い人だよ」
アーノルドは自分の乳首茶の不味さに「おえっ!」と餌付きながら言った。
アーノルドの言う通り、土下座高校を後にしたゴンチチは悔しさでいっぱいだった。
「あの野郎。手加減しやがった」
大学チャンプが高校生に手加減をされた、これほどの屈辱はない。だからゴンチチは乳首茶を飲まなかったのだ。
アーノルドは今日の練習で部員達の乳首茶を大量に飲んでいた。なので、もう腹がタプンタプンだったのだ。
そこにゴンチチが来たもんだから、もう飲めないし、これ以上本気でやるとゲロが出そうだった。
だから、わざと負けた。
ピカチュウに接着剤をつけて、乳首のバルブを抜きやすくしていた。
「くそ! アーノルド。この屈辱は次の大会で晴らしてやるぜ!」
二人の決着は次の大会『全米全裸野郎乳首相撲大会』になる!
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