見捨てられた令嬢は、王宮でかえり咲く

堂夏 千聖

第1話

プロローグ

それはちょっとした好奇心だった。


クリスマスの前夜。

雪がしんしんと降り続いている。


夜会帰りだろうか、酔った男女が行き交う。

大通りを走る馬車も徐々に数を少なくしていた。


(一体旦那様は、どこへ行くのかしら?)


こっそりと屋敷の裏門を出る。

馬車も使わず出ていく年の離れた夫、シルビオの後を、12歳の少女エレオノーラはこっそりと、速足で追いかけた。


彼女の夫であるシルビオは路地に入ると、ある建物の前で足を止めた。

何かの店だろうか、看板は出ていない。

ドアについているノックをすると、中から美しい女性が出てきた。

豊かな黒髪を揺らし、毛皮のコートに身を包んでいる。首元には大きめの宝石。

彼女はシルビオを見つめると、うっとりと見つめ、腕を絡めた。


エレオノーラは息をのんだ。

昼間、使用人たちが噂していた、絶世の美女とはきっと彼女のことだろう。

何かの間違いであってほしい、祈るような気持ちで後を追ったのだ。

しかし、現実は厳しい。


(あんな美しい人と、毎夜会っていたなんて・・・。)

失意の中で、屋敷への道をとぼとぼと歩いていると、頭の上にふと大きな影。

見上げると、馬の腹のようだった、





「あっ!」

瞬間に、体は宙に投げ飛ばされ、考える暇もなく地面にたたきつけられた。


「・・・っ!」

痛みで声も出せない。


雪で馬車が滑り、小さなエレオノーラは跳ね飛ばされてしまったのだ。

あわてて、御者がおりてきた。

中にいた貴族の姫だろうか、着飾った少女があわてて降りてくる。

「大丈夫?!しっかりしなさい!」


御者が呼吸を確認する。

「息はあるようですが、意識が・・・。」


着飾った少女は、少し思案した後、

「そう、この時間では医師も対応してくれないでしょう。ケガはないようだけど心配ね。ひとまず、連れて帰って手当てしましょう」

そういうと、馬車にエレオノーラを運び込み、あっという間に、走り去ってしまった。



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