第10話

 次に来るのがスクール水着。これはもう性的な目的でしか使い道が無いだろう。せっかく大人になったのだから、ビキニでもワンピースでもパレオでもいくらでもアダルティな水着を楽しんだらいいのにと思う。


 が、勿論、 プールに泳ぎに行くときには、そのような大人っぽい格好になるのだろう。


 ほかには、看護師やキャビンアテンダントなどの職業ものが好まれるらしい。 不謹慎な話であるが、 恋人同士にもそんな刺激が必要な時があるのかもしれない。


「智樹……」


「えっ? なに」


 ずっと惚けた顔してただろうから、不審に思った姉に声をかけられたのかと思ったが、そうではなかった。


「美味しい?」


「うん、とても美味しいよ、姉ちゃん」


「そう。よかった」


 慈愛に満ちた姉の顔が女神に見える。 親しみやすくどこか神々しくもあるのが自分の姉だったのだ。きっと学校でもモテるのだろう。弟は気が気でなかった。

 

 じっくりじっくりと味わいながら、時間をかけて反芻するように食事をした。 それでも30分ほどすると食べ終わった。家に帰ってくるまでに、デザートも買ってきた。


「 ケーキはみんないちごは好きだろうから、 ストロベリーショットのほかに、プリンやモンブランやチョコレートケーキとか1通り買ってきたわよ」


「うわーい、嬉しい、お母さん」


 智佐も喜んでいる。 今まで何度か繰り返した外での 会食よりもくつろげて楽しい食卓だった。これが家族の団欒と言うものだろうか。いや、久しぶりのことだから余計に そう感じるのだろう。


「紅茶を淹れるね」


 姉が 立ち上がるとすかさず弟がついていく。カップ出すのとお湯入れるの手伝うよ。


「ありがとう、智樹」


 二人だけで会う時にもカフェでよくケーキを食べたものだ。 中学生と高校生の2人は、 コーヒーよりも紅茶を好んだ。この年頃だと、 眠気覚ましなどの目的を除いて、まだ好んで苦いコーヒーを飲む習慣も無い。


 本当は、2人とも1番好きなのはプリンアラモードだった。それも、カップに小さくまとめられたものではなく、舟形の銀色の食器にたっぷりの果物と共に盛られた クラシカルなアラモードが好きだったが、最近では喫茶店もフランチャイズのチェーン店が多いため、昔ながらのプリンアラモードを用意している店は少なかった。高校生がすぐに見つけることができる範囲ではと言う事かもしれない。カフェ通であればそういった店も知っているのだろう。それは2人がさらに幼い頃に食べた、 両親の買い物に連れ出され家族4人での外出した記憶の象徴だった。


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