第7話
悪趣味と言うより、のぞき見趣味に近いものだろう。男にはそんな欲求があるのだろうと優奈にも想像はできた。
クラスの男子たちが絶えず自分を含む女子の噂話をしたり、あまり考えたくないような妄想をしていることだって知っていて考えないようにしていた。考え始めたら嫌悪感で学校でも普通にクラスメートとして接することができなくなる。
実際、女子の中には極度の男性不信や恐怖心を抱いているため学校への通学や繁華街でのショッピングなどすら苦痛に感じている生徒もいる。優奈も相談を受けて、「気にするな」や「他人の思考など想像してもきりがない」などと励ますのが精いっぱいだった。
この弟はどうなのだろうか? 弟だって生身の男だ。そのような感情や欲望がある事は否定できない。だけど、姉としては弟はいつまでもかわいい子どものままでいてほしいと言う気持ちもある。これは、母親に近い感情なのだろうか?
いや、親であれば1日も早くわが子を一人前の大人として巣立たせることが義務でもあるから、これは姉独特の感情なのだろうか?
優奈は知らなかった。世の中の姉と言うものは、一般的に弟にそこまで愛情深いものではないと言うことに。
そしてまた、世の弟たちもふつうは姉を暴君としておそれ疎ましく思っているものなのだ。
「そうか、あんたも人並みに女子の実態をのぞき見したい願望があるのか」
「おんなのこも同じじゃないかなー」
智樹はこともなげにそう言った。いわれてみればそうである。もっとも、優奈は弟が同性の友人たちとどんな会話をしているのか気にしたことはなかったが。
階下から両親の呼ぶ声が聞こえた。
「晩御飯これからつくるからお茶でも飲んでくつろぎなさい」
父の言葉に居間のソファでくつろぐ姉弟。
「本が少し減ったかな」
以前より部屋が広くなった気がする。
「二人しか住んでないからね。お母さんの雑誌も無いし、テレビも買い替えてないわ。食事する時は、テレビを見ないし」
一緒に暮らしていたころには、食後にそのままテレビのバラエティ番組を観たりすることが多かったが、家族のだんらんあってこそのことだ。中学に上がるころには優奈が料理をして、食事が終わるとすぐに洗い物をした。
リビングで家族でテレビを見ると言うのは、みんなで見たい番があって一緒に見るわけじゃない。
「私と、お父さんの2人だけだと、見るテレビ番組もそれぞれ見たいものだけになるよね。あと智樹たちが戻ってくるからってお父さんが要らないものを捨ててたわ」
帰ってくる家族の荷物をおくことができるように、なるべく家の中のスペースを確保している。
「母さんも俺も、荷物はそんなに多くないよ。必要なものだけを持ってくるつもりだから」
食器などは昔使っていたものがあればかまわないと言う。智樹の勉強机ぐらいは引っ越し業者が運んでくるとのことだった。
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