#2

<登場人物>


キリヤ:旧新宿区営自警団所属。バイク大好き運動神経抜群・超・健康優良児、21歳。頭は悪いが人懐っこいお調子者。銃による近距離射撃で戦う。


ケイト:キリヤとエノンの同期の自警団員。普段は穏やか、テンションが上がると口が悪くなり、その時の記憶がなくなる。テンションが下がると元に戻る。21歳。

スチールハンマーで「旧式」AI兵を破壊する。

双子の弟、ヤナギがいる。


イブキ:改新宿区長のひとり娘、刀を振り回す高校生。17歳。

直情型、好奇心旺盛。傲慢過ぎる性格がトラブルを起こす。


ジョーカー:旧新宿区の繁華街、ニュー歌舞伎町のド真ん中にあるバイク屋「グリッタールーター」店主。

口が悪い。バイク屋は表の顔、裏では改新宿区の極秘任務を請負う。年齢不詳、性別不問。


ユーリカ:旧渋谷区営自警団の一員。口は悪いが正義感が強い女子高生。イブキとの兼役推奨。


ヤナギ:旧渋谷区営自警団、団長ヨミの補佐。ケイトの双子の弟。

基本的に敬語で会話をする。キレやすい。ケイトとの兼役推奨。


ヨミ:旧渋谷区営自警団、団長。

整った顔立ちが印象的な美女。

左腕を整形でガトリングガンにしたばかり。ジョーカーとは付き合いが長い。


エノン:話の中で登場。旧新宿区営自警団の団員。キリヤとケイトとは古い付き合い。ケガをしたとき左腕に浮き出る「8」に見える痣が悩み。



2024.1.29

加筆修正をしました。


-----------------物語はここから-------------------


 

-旧渋谷区神宮前・区営自警団事務所


ユーリカ:なんだ?そのツラ…


ヤナギ:……


ユーリカ:てめぇ、耳ついてるよな?あ?


ヨミ:ユーリカちゃん、発情期なの?


ユーリカ:なんだ?ヨミ、お前もケンカうってんのか?


ヨミ:盛りの猿みたいね、ユーリカちゃん

私はそんなくだらないことしない


ヤナギ:ですね、ヨミさんの言う通りです


ユーリカ:ヤナギ…てめぇ…!!


ヤナギ:ユーリカ、それ偽物ですよ


ユーリカ:は?


ヨミ:…だいぶ精巧な造りをした偽物ね

…これじゃ、整形には到底使えないわ


ヤナギ:これ、どこで拾ってきたんですか?


ユーリカ:旧豊島区の西池袋の公園跡地…

こんなキレイな石見たことねえから、つい…


ヨミ:西池袋公園跡地…

昔、オートマタ人体融合反対運動のあった所ね


ヤナギ:ユーリカ、ボク言いましたよね?


ユーリカ:……


ヤナギ:ボクたちの担当地区は旧渋谷区神宮前


ユーリカ:……けどよ…これ拾ったとこに旧式がいきなり出てきやがったんだ…


ヤナギ:旧豊島区西池袋、旧江東区汐留、旧港区麻布十番…

とくに旧新宿区ニュー歌舞伎町には手を出すなと…


ユーリカ:って言っても!!

自分の目の前で旧式に殺されかけてる奴がいたら助けるだろ?!!


ヤナギ:担当の区営自警団に連絡すれば済む話です


ユーリカ:…その区営自警団の奴らが旧式に殺されてたんだよ!!


ヤナギ:…それはそこの自警団が弱かっただけ…ボクたちには関係ないです


ユーリカ:けどよ…


ヤナギ:けども何も関係ないです

担当区域以外のとこにいちいち首を突っ込むまないでください


ユーリカ:くっ……!


ヨミ:ヤナギちゃんの言いたいこと、理解出来た?

ユーリカちゃん、今日から一週間この街の外に出るの禁止ね


ユーリカ:はあ?!!ヨミてめえ…!!


ヨミ:やる気があるのはいい事よ

でもね、自分が良かれと思ってやった事がお節介になることもあるの

 

-ヨミ、ジャケットを羽織る

 

ヤナギ:ヨミさん、時間ですか?


ヨミ:ええ、行ってくるわ


ヤナギ:気をつけてください

ボクは後から向かいますね


-バイクに乗り、去っていくヨミ


ユーリカ:目の前にいる人間助けるなとか…!

担当区が違っても同じ自警団員だろ?!おかしいだろ!!


-旧新宿区ニュー歌舞伎町バイク屋「グリッタールーター」


キリヤ:なぁージョーカー、これ譲ってくれよ〜


ジョーカー:ヤダね


キリヤ:俺とお前の仲だろ〜


ジョーカー:だぁー!!野郎が擦り寄ってくるんじゃねえよ!気持ちわりぃ


キリヤ:いいじゃんかー!1960年代製バイクのサイドミラー、めちゃくちゃかっこいいんだからくれよ〜


ジョーカー:バカヤロー!1960年代製なんて今から何年前だか分かってんのか?


キリヤ:…えーと、今が2114年だろ?…1960に100たしたら2060で…


ジョーカー:…(ため息)


キリヤ:わかった!!100に54足して154年前!!


ジョーカー:ビンテージの中のビンテージなんだよ!!てめぇみてえなすーぐバイクぶっ壊す野郎にはぜってーやらねえからな!!


キリヤ:ジョーカーのケチ!!


-店の扉が力強く開く


イブキ:ねえ!ジョーカー!!


ジョーカー:今度は嬢ちゃんかよ…


イブキ:この私が店まではるばる来てあげたのよ?感謝しなさい!

それより、キリヤ来なかった?


ジョーカー:キリヤ探してんのか?


イブキ:そうよ、ケイトが探してきてって言うから……仕方なく…


ジョーカー:ケイトの頼みじゃ仕方ねえよなぁ、嬢ちゃん


イブキ:な、何よ!その言い方!!

ジョーカー:一丁前に顔赤くしてんじゃねーよ、現役女子高生様がよ(笑う)


イブキ:ジョーカー…あんたねえ……


キリヤ:(M)ふー、助かったぁ…

サンキュージョーカー

今イブキに捕まったら命がいくらあっても足りねえ…

逃げる以外の選択肢無し!

俺のかわいい愛車カワサキ・エストレアちゃん!発進!!


-キリヤのスマホが鳴る


イブキ:これ…旧新宿区営自警団のスマホの音!

私のだけじゃない!!もう一台音がする!


ジョーカー:にしてもホントうるせーよな、その音


イブキ:ジョーカー!キリヤのこと匿ってたわね!!


ジョーカー:嬢ちゃん、今はそれどころじゃねーだろ?


イブキ:そうだった!!じゃあね、ジョーカー


-イブキ、店を出る


ジョーカー:最近更に増えてんな、旧式の暴走…


-火が立ち上るコマシアター前公園


ヨミ:…いや……死にたくない……


イブキ:こんな近くで!

…逃げ遅れてる!!


ヨミ:こ、怖い……


イブキ:お姉さん、今助けますからね!!


ヨミ:……うっ、うぅ(涙を流す)


イブキ:自警団メンツ他は誰もいないの?!

いくら私でも一人で今にも自爆しそうな旧式AI兵を5体も相手に出来ないわよ……


ケイト:イブキ、ごめん!避難誘導に時間かかった!


イブキ:ケイト!!…ぜ、全然…!!

むしろこのくらい私一人でも倒せるわ!


ケイト:それは心強いね


イブキ:私を誰だと思ってるのよ


ケイト:最速で研修を終えた区営自警団の大型新人、でしょ?


イブキ:わかってるじゃない


ヨミ:……


ケイト:お姉さん、はやくここから離れてください!


ヨミ:は、はい!!


ケイト:援護射撃は期待できなさそうだけどやるしかないね


イブキ:ええ…


ケイト:イブキ、一体ずつ一緒に倒していくよ!


イブキ:わ、私に命令するなんていい度胸ね


ケイト:僕が旧式の足に打撃を入れるから頭部の一点にブレードを突き刺して!


イブキ:了解したわ!


ヨミ:(M)あれがヤナギの双子の弟…

顔はそっくりだけど、ヤナギよりも優男ね


キリヤ:お姉さーん


ヨミ:きゃっ!


キリヤ:ちょっと、そんなにびっくりしないでくれません………か………っ!!


ヨミ:すみません…

?…どうしたんですか?


キリヤ:…あばばばば……!!


ヨミ:泡吹いてますよ、大丈夫ですか?


ジョーカー:キリヤ、町民の避難終わったぞ

…ん?……てめぇは……


ヨミ:あら?…ジョーカー?


ジョーカー:おい、旧渋谷区営自警団の団長様がニュー歌舞伎町に何の用だ?


キリヤ:ジョーカー!!お前、こ、ここここのび、びびび美女と知り合いなのか?!!!


ジョーカー:あ?てめぇはまず自警団の仕事してこいや!!

オラぁ!!(キリヤを蹴り飛ばす)


キリヤ:いってーー!!ジョーカー!てめぇ覚えてろよ!!!


ジョーカー:うるせえバカは引っ込んで仕事してろ!!


ヨミ:あの子自警団だったのね


ジョーカー:ああ、キリヤっていうんだ

クソバカでめちゃくちゃだが射撃と人命救助が得意なヤツだ


ヨミ:ふふ、面白い子


-ニュー歌舞伎町コマシアター前公園


イブキ:よし!!


ケイト:あと3体…


イブキ:…頭部中央、直径10cmのコアを破壊しないと自爆する……最初はイカレてると思ってたけど

旧式駆除、私だいぶ慣れてきたわね


ケイト:イブキ!!後ろ!!


イブキ:えっ?


キリヤ:うおおおおおお!!!


イブキ:きゃああ!!


-蹴り飛ばされたキリヤがイブキにぶつかる


ケイト:遅かったー……


キリヤ:いてててて……


イブキ:ちょっと!何すんのよ!!バカキリヤ!!


ケイト:二人とも大丈夫?


イブキ:大丈夫じゃないわよ!!ほら!バカキリヤがぶつかったせいで制服の左袖が破れちゃったじゃない!!


キリヤ:おい!旧式に間合い詰められてるぞ!!


ケイト:くっ…!!


イブキ:…どうすんのよ


キリヤ:なんとか……

するしかないよな!!


-突如ガトリングガンが撃ち込まれる


キリヤ:へっ?この銃声どこから??!!


ケイト:よし!!間合いが出来た!!

(ケイトの雰囲気が変わる)…ボクが一気に全部ぶっ壊してやるよ!!


イブキ:あっ闇ケイト!(きゅん)…じゃないかった!いくわよ!!!


ジョーカー:ヨミ…また整形したのか……


ヨミ:私は基本的に手ぶらでいたいの


ジョーカー:あんた、今の左腕はガトリングガンなんだな


ヨミ:ええ、ガトリングガンの軽量化が実現したって聞いて直ぐに左腕を交換したわ


ジョーカー:それオートマタと人体の融合ってやつだよな、オレはぜってーやらねえからな


ヨミ:あら、便利なのに勿体ない

最新鋭のオートマタ…軽量化は当たり前

以前は医療用金属で作られていた銃身もいまは人と同じ細胞の金属で作れるの

これって本当にすごい事なのに


ジョーカー:あんたと違ってオレはただのバイク屋店主だ

必要のねえことはしねえよ


ヨミ:そう


ジョーカー:何より人と同じ細胞で出来た金属なんて気味の悪いもん、自分の身体に入れたくねえしな


ヨミ:ふふっ、私達ってほんとに合わないわね


ジョーカー:…で、ニュー歌舞伎町に何しに来たんだ?


ヨミ:話さないとダメ?


ジョーカー:旧渋谷区の自警団団長がエリア外に来てんだ

何も無い訳、無いよな?


ヨミ:…あなたは、はぐらかせそうにないわね


-コマシアター前公園


キリヤ:ふぅ…これで全部やったか?


ケイト:ああ、全部ぶっ壊せたハズだ


イブキ:…っ…(気を失う)


キリヤ:イブキ、しっかりしろ!!


ケイト:左腕から血が出てる…止血だ!


キリヤ:くっそー!!血止まれよぉお!!


ジョーカー:どうした!!


ケイト:イブキが怪我して…ジョーカー、救急車呼んで!!


ジョーカー:お、おう!


ヨミ:……て、手伝います!!


ケイト:?お姉さん、どうしたんですか?


ヨミ:出血が酷いわね……止血バンド貸してくれる?もっと強めにしないと


キリヤ:ここは野郎のオレがやりますよ!!ここをキツくすればいいんすね!


ヨミ:じゃあ、お願い


キリヤ:はい!!男キリヤ、任されましたあ!!


ケイト:……


-約一時間後、ニュー歌舞伎町クリニック


ジョーカー:…冷や汗かいたぜ……


キリヤ:ヨミさん……超絶美女で看護師とかマジ女神……


ジョーカー:ん?看護師?


キリヤ:おう、ヨミさんが何してる人か聞いたら看護師だってよ!

まさに!昔のドラマでいう白衣の天使…天使っつーか本物の女神…!!


ジョーカー:はあ…(ため息)


ケイト:頭に血が上っててイブキの怪我に気付けなかった…


キリヤ:あんだけ暴れる旧式なんてしばらく相手にしてなかったからな


ケイト:エノンの援護射撃があったら違ったのかも


キリヤ:起きちまったことは仕方ねーだろ

旧式はいつ暴走するかわからねえ

そこにケイトの狙撃手国家試験が重なっちまった、タイミングが悪かっただけでケイトのせいじゃねーよ


ケイト:……


キリヤ:お前は気にしすぎだ!

旧式と戦うと決めた時点でイブキも怪我する覚悟、出来てたと思う


ケイト:…そうかな……


キリヤ:歯切れ悪いなー

イブキなら大丈夫だ!あのギャーギャーうるせー現役女子高生がこんなことでくたばるかよ!


ケイト:それも、そうだね


キリヤ:おうよ!


ジョーカー:いまの会話聞かれてたらお前らイブキにぶった斬られてただろうなあ〜


キリヤ:ジョーカー、イブキにいまのこと言うなよ


ジョーカー:じゃあ1960年代製バイクのサイドミラーは諦めろよ


キリヤ:それはまた別の話だろ!


ケイト:二人とも、静かにして

病院の中だよ、大声出さないでよ


ジョーカー:わりい悪ぃ

ところで、ヨミはどこ行った?


ケイト:ヨミさん?…あ、止血を手伝ってくれた看護師さんのこと?


キリヤ:ヨミさん…ヨミさんっていうのか〜

ヨミさん!!……女神っぽい名前!!


ジョーカー:訳分かんねーこと言ってんじゃねーよ


-イブキの病室


ヨミ:……間違いない

これはオートマタ人体融合実験の被検体の印…

この子は「6」…左腕の側面に痣みたいに浮き出るのね

さっき血は止血バンドで隠しながら採取したけど

今ならこのまま被検体を持ち帰れるわね


ジョーカー:なあ、院内の病室って全室防犯カメラついてるよな?


ケイト:どうしたの?ジョーカー、そんな当たり前なこと聞いて


ジョーカー:なんとなく…な、


キリヤ:ヨミすわあぁああんんん!どこにいるんですかぁああ????


ケイト:キリヤうるさいよ!


ジョーカー:にしても、ヨミのやつどこ行きやがった?


-突然停電する院内


キリヤ:わ!暗い!!怖い!!


ケイト:照明だけじゃない…ペースメーカーの電源も落ちてるし、手術室の映像も消えた!


ジョーカー:どういう事だ?

ニュー歌舞伎町の病院が停電なんて有り得ねえ…


キリヤ:ジョーカー、どうなってんだよ!


ジョーカー:オレもわかんねーよ!

ニュー歌舞伎町の照明以外の電源は

発電システムを止めない限り落ちることはねえハズなんだが…


ケイト:ということは発電システムが止まったってこと?


ジョーカー:…んなこと有り得ねえ…あっちゃいけねえ!!


キリヤ:ジョーカー、どこ行くんだよ!


ジョーカー:お前らは院内の人達の救護してろ!


キリヤ:ジョーカー!!


-歌舞伎町地下街跡地


ヤナギ:……反吐が出るな


ヤナギ:(N)60年くらい昔、いまの新雲暦(しんうんれき)が始まる前…まだ太陽が地球を照らしていた時代

エネルギー不足と世界食糧危機への対策として当時の死刑や終身刑以上の囚人を使ってある実験が行われていた…

食糧としての人肉利用、人体を使った発電法の開発…

発電法の開発、なんて大層な響きしてるけど

どうせ火力発電の燃料にしただけなんだろう

現に今、この国の火葬場は全て発電所も兼ねてるしな

にしてもこの地下街跡地はカビ臭さの中に気持ち悪い血の匂いがする…


ヤナギ:気持ち悪…


ヨミ:お疲れ様


ヤナギ:ヨミさん、早く出ましょうよこんなとこ…


ヨミ:私はここの最深部にも用事があるの


ヤナギ:はあ…そんな大荷物を抱えて行くんですか?


ヨミ:それもそうね…どうしましょう?


ヤナギ:知りませんよボクは


ヨミ:いろいろと使えそうだからこのまま持っていくわ


ヤナギ:じゃあボクは帰りますね


ヨミ:弟くんには会わないの?


ヤナギ:嫌ですよ、めんどくさい


-同時刻、ニュー歌舞伎町クリニック


キリヤ:(息切れしながら)はぁ…はぁ…電気作るのってこんなに大変なんだな…


ケイト:キリヤ、まだまだ足りないよ!!もっと発電機回して!


キリヤ:くっそー!ケイトお前もやれよ!!


ケイト:僕は…この通り、だよ

よしよし、大丈夫だからね

(小児科患者を撫でながら)怖くないよ〜


キリヤ:ちびっ子のヒーロー気取りかてめぇ!


ケイト:無駄口叩いてないで、さ、発電機回して回して!


キリヤ:なんで俺ばっか!罰ゲームかよ!!


ケイト:仕方ないなあー

発電機回すの少し交代するから、イブキの様子見て来て


キリヤ:はいはい


-歌舞伎町地下街跡地地下二階


ジョーカー:…ウソだろ…

地下発電施設の扉が開いてやがる…


ヤナギ:ん?


ジョーカー:あ??ケイト…病院にいるはずじゃ…?


ヤナギ:ケイトじゃないです、ボクはヤナギです


ジョーカー:まあいい、てめぇ…扉の中で何しやがった?


ヤナギ:何もしてないです


ジョーカー:…中で何もしてねえかもしれねーが、扉はどうやって開けた?答えろ


ヤナギ:そんなことより…

そろそろかなー(スマホを見せる)


ヤナギ:ニュー歌舞伎町、大変なことになりますよ


ジョーカー:っ!これは…!!


ヤナギ:ボクにかまってる時間無いですよ


ジョーカー:クソが!!

(電話をかける)おい!自警団、団長はいるか!早く変われ!!


ヤナギ:じゃ、ボクは帰ります


ジョーカー:新宿駅の南口に旧式の大群が来てる!!早くしろ!!ニュー歌舞伎町に向かっていやがる!!


-歌舞伎町地下街跡地地下十三階


イブキ:…うっ、……


ヨミ:あら


イブキ:いたた……お姉さん、誰?


ヨミ:私はヨミ


イブキ:ヨミ…さん……


ヨミ:おはよう被検体「6」号さん


イブキ:は?


ヨミ:そっか、個体名が別にあるのね失礼


イブキ:被検体?個体名?……お姉さん、漫画やアニメの見過ぎじゃない?

私はイブキ、今は旧新宿区営自警団の最年少団員よ


ヨミ:区営自警団の団員とか別にどうでもいい

私は被検体「6」号に興味があるの


イブキ:この訳の分からない状況でこれだけは分かる

……私、あんたの事嫌いだわ


ヨミ:嫌いでいいわ


イブキ:いちいち鼻につくわね


ヨミ:そ、勝手にイライラしてくれて結構よ


イブキ:舐めた口聞いてんじゃないわよ…


-ニュー歌舞伎町クリニック、キリヤが戻ってくる


キリヤ:ケイト!!イブキがいねえ!!


ケイト:え?


キリヤ:病室にいたはずのイブキがいねえんだよ!!


ケイト:どういう事?


キリヤ:俺、探してくる!


ケイト:え?ちょっと、キリヤ!!


-キリヤがバイクに乗って飛び出すとほぼ同時にケイトのスマホが鳴る


ケイト:(スマホを見て)……ウソだろ…

この旧式の大群、なんの冗談だよ…


-ニュー歌舞伎町内をバイクで走るキリヤ


キリヤ:イブキ、どこだよ…!!

ん?……あれは…ケイト?


ヤナギ:…またか(ため息)


キリヤ:ケイト、お前病院にいるはずじゃあ…


ヤナギ:ボクはヤナギ、ケイトなんて名前じゃないです


キリヤ:ウソだろ?同じ顔してんじゃん!


ヤナギ:同じ顔…だと?


キリヤ:ああ、髪型以外身長も同じくらい!


ヤナギ:ボクをあんな奴と一緒にするな!!(数発発砲)


キリヤ:いきなり撃つことないだろ?!!キレた時のケイトまんまじゃねーか!ただ、あいつは銃使わねーけどな


ヤナギ:黙れ!黙れ黙れ黙れ!!(乱発)


キリヤ:おい!撃つなよ!!だぁーー!!撃つなって!!


ヤナギ:くたばれこの野郎!!オラァ!!(乱発)


キリヤ:クッソ!!お前にかまってる暇はねえんだよ!!


-歌舞伎町地下街跡地


ジョーカー:まずは発電システムの復旧しねーと…

カビと血の匂いが充満して臭くてたまんねーからここには入りたくねーのによお…

何してくれてんだよ、発電システム止めた奴は…


ヨミ:こんなに殴っているのに

なかなか意識を失わないのね


イブキ:…はぁ…はぁ…(息が切れる)このメス豚!!あんたのドSな性癖に私を付き合わせるんじゃあないわよ!!


ヨミ:現役女子高生はお家が立派でも口はとっても汚いのね(踏みつける)


イブキ:ぐっ……


ヨミ:あなたの人として生きてきた部分は要らない

でもね、被検体「6」号としてのあなたは欲しいの


イブキ:訳の分からないこと抜かして…調子乗んじゃないわよ!!


ヨミ:これ、わかる?(左手を外す)


イブキ:えっ……


ヨミ:私、この前左腕をガトリングガンに整形したのよ

これで旧式をたくさん廃棄するの…そして…


イブキ:……


ヨミ:私は旧式から人類を救った英雄になってこの国を大掃除するの


イブキ:…狂ってる


ヨミ:本当に口が悪い子(脇腹を蹴る)


イブキ:ぐっ…!!


ヨミ:あなたのような口の悪いガキは再教育してあげないとね(踏みつける)


イブキ:…かはっ!……

あ、あんた…なんか…に……

パパの……代わりは務まらない!!


ヨミ:改新宿区長の一人娘

…実はオートマタ人体融合実験の被検体だった

この事が国民に知れ渡ったら大変よね


イブキ:あんた、そんな作り話で…パパを脅すの?


ヨミ:いいえ、私は国民に真実を伝えたいの


イブキ:あんたがそれを国民に言ってもただの狂言でしか無いわよ…

絶対、誰ひとりとして信じない!


ヨミ:だから、狂言と言われないようにする必要があるの

その為に旧式をぶっ壊しまくって国民を守った英雄に私がなる

その為にはもっともっともーっと整形が必要なの


イブキ:整形…モンスター!!


ヨミ:あなたもオートマタが融合した人間、私とおんなじ整形モンスターね


イブキ:私は…あんたとは違う!!

整形なんてしてないし、私はパパとママの一人娘!人から産まれた人間よ!!


ヨミ:あなた、幼い頃の記憶ある?


イブキ:いきなり何よ…


-ヨミ、イブキの腿を撃ち抜く


イブキ:…ぐあっ…!!


ヨミ:普通の人間は腿を撃ち抜かれたら大抵絶叫するの…


イブキ:この変態ドS女…!!


ヨミ:私に悪態をつく前に…自分の撃たれた腿を見て


イブキ:……っ!!


ヨミ:美しいわ…元々は血の通わないオートマタだったハズなのに

見た目が人体に融合して筋肉や骨、血管も人間そっくりだわ…少し神経が電気を帯びてるけど


イブキ:…何、コレ……


ヨミ:(スマホをイブキに見せながら)改新宿区長の一人娘、旧式AI兵の自爆に巻き込まれ両足を失う

これ、7年前の改新宿区ニュースの見出しよ


イブキ:旧式の自爆に巻き込まれた…?


ヨミ:覚えてないのかしら?


イブキ:……


ヨミ:きっと愛しのパパがこの事故のことをあなたの記憶から消したのね


イブキ:……ウソよ…


ヨミ:腿に空いた穴を見ても信じられない?


イブキ:…うっ、(涙を流す)


ヨミ:悲劇のヒロイン面ね…反吐が出る!!


-銃声が響く


イブキ:ジョーカー!!


ヨミ:あら、思った以上に早かったわね


ジョーカー:ヨミ…お前、ずいぶんと良い趣味してんな


ヨミ:そうかしら


ジョーカー:女子高生泣かせて拷問か?

…未成年への暴行は重罪だぞ


ヨミ:ただの女子高生なら…重罪ね


-一発の銃声が響く


イブキ:ぐあっ!!…


ジョーカー:嬢ちゃん!!


ヨミ:ジョーカー、あなたは今お呼びでないの


ジョーカー:…てめぇはお呼びでなくてもよぉ、その嬢ちゃん守れって区長から頼まれてんだ

それにオレはニュー歌舞伎町商店街を、これ以上血で汚したくねえんだよ


イブキ:(泣きながら)…ジョーカー……


ヨミ:それ以上近づかないで

一歩につき一発、彼女に撃ち込むわ


ジョーカー:…人質はもっと丁重に扱えよ


ヨミ:丁重に、ねぇ…


イブキ:ジョーカー、私のことはいいから!

はやくこの変態ドS女を撃って!!


ジョーカー:そうもいかねえんだよ、嬢ちゃん


イブキ:…なんで?


ヨミ:(イブキを踏みつけながら)あなたは人質なの、勝手なこと言わないでもらえるかしら?


イブキ:…痛っ…!!


ジョーカー:ヨミ、オレの忠告を無視したな?


ヨミ:あら、忠告なんてされたかしら?


ジョーカー:ああ、オレは忠告したからな…

人質はもっと丁重に扱えってな!

キリヤ、いいぞ!


-キリヤが人を抱えて現れる


キリヤ:っ…よっと…!(抱えていた人を雑に下ろす)


ヨミ:…何よ…これ……


キリヤ:何よこれって……えーと、人質って言えば良いですかね、ヨミさん


ヤナギ:…ヨミ…さ…ん…

す、みま…せん……


イブキ:えっ?!ケイト???


ジョーカー:あんたんとこの部下か?

バカキリヤがやり過ぎたみてえだ


キリヤ:俺悪くないからな!

こいつをケイトって呼んだらいきなりブチギれて襲ってきたんだ!!


イブキ:ウソ…ケイトじゃないの?


ヤナギ:…どいつもこいつもボクのことをケイトと間違えやがって……!!


ジョーカー:こいつはケイトの双子の弟、ヤナギ

現在、旧渋谷区神宮前エリアの自警団に所属してる団員だ

見た目は瓜二つだが、キレると敬語じゃなくなるとこがケイトとの違いだな


イブキ:よく見たら髪型が違う…


キリヤ:これ以上イブキに怪我させたらこいつ更に殴りますよ、ヨミさん


ヤナギ:…お前……ボクのこと何だと思ってんだよ


キリヤ:ん?殴っても良い人質?


ヤナギ:……てめえ!!

ヨミさん、ボクのことは良いから

早く用事を済ませてください


ヨミ:そう…


ヤナギ:ヨミさん、早く!!


-一発の銃声が響く


イブキ:…っ!!


ジョーカー:ヨミ!!


キリヤ:はあぁああ?!ウソだろ?!

何の、躊躇いもなく撃った……


ヨミ:…ヤナギ


ヤナギ:あ、なたの…改革のため…なら

……この命……惜しくなんて、ありません……


ヨミ:…ありがとう、ヤナギ


ヤナギ:ヨミ…さ、ん……この国を……た、頼み……ます……


-ヤナギ息を引き取る


ジョーカー:ヨミ!!人の命を何だと思ってやがる!!


ヨミ:……犠牲無しに改革は起こせないものなの

ヤナギは私の改革の為に命を捧げてくれた…それ以上でもそれ以外でもないわ

全てはこの大日本帝国のため!!


ジョーカー:…旧愛国主義者か……!


キリヤ:旧愛国主義者?

国の為に何たらとか駅前で毎日スピーカーやらなんやら使って演説してるヤツらのことか?


ジョーカー:それだけならまだかわいいもんだ


ヨミ:…ふふっ


イブキ:国の…為…?


ヨミ:ええ、この大日本帝国を旧式から救い再び経済大国に戻すの


イブキ:大日本帝国を経済大国に戻す…その為には人を殺しても良いと思ってるの?!


ヨミ:…さっき私が言ったでしょう?

犠牲無しに改革は起こせないって!


-改新宿駅南口


ケイト:キリヤもイブキも通信が繋がらない…二人ともどこに居るんだよー!何気なくジョーカーもどっか行っちゃったし…


-通信機に視線を落とすケイト


ケイト:GPS、何も反応無いな…

それにしてもなんでこんなに旧式が集まってきたんだろう…しかも旧新宿区のニュー歌舞伎町に向かってるよね、これ、、


ケイト:(N)新雲暦(しんうんれき)が始まって7年が経つ。

太陽光を失った地球の気温は急激に下がった。

海水温の低下で南極と北極の氷が陸続きになり

南半球の国はほぼ氷の世界

北半球は昔、北海道と呼ばれていた日本の国土まで氷の世界になった。


光合成が出来なくなった植物は激減。

植物を糧にしていた虫や草食動物、

草食動物を食べていた肉食動物

そして、人間も…どんどん減っていく。


ケイト:…旧式AI兵が作られた当初は太陽光が無くなるなんて、想定されてなかったもんな

地球を痛めつけた人間が太陽光を奪われ

自分達が作ったものに襲われて減っていく…

この新雲暦(しんうんれき)の歴史を伝えていく人は未来にいるのかな?


不謹慎なこと言うけど…

人間は地球から1人残らずいなくなるかもしれないね

まあ、ボクは寿命を全うして死ぬ予定だけど…


-旧歌舞伎町地下街跡地、最深部


ジョーカー:これ以上、嬢ちゃんに危害を加えるな


ヨミ:殺しはしないわ


イブキ:…さっき平気で人を殺したくせに

あんたの言葉なんか信用出来るわけないじゃない!!


ヨミ:…っ!黙りなさい!このメスガキ!!(銃口をイブキに向ける)


キリヤ:イブキ!!


-弾丸が一斉掃射される


キリヤ:……えっ…?


イブキ:何…?


ジョーカー:クッソ……痛ってえ!!……がはっ!!…


-ジョーカーが倒れる


ヨミ:ニュー歌舞伎町商店街を血で汚したくないって言ってたの…あなたよね?ジョーカー


キリヤ:…おい!!ジョーカー!しっかりしろ!!!血だらけじゃねーか!おい!!


ジョーカー:キ、リ…ヤ……


イブキ:(泣きながら)ジョーカー!なんでよ!!


ジョーカー:気にすんな……嬢、ちゃん……少し…休ませてくれ……


キリヤ:ジョーカー!!目を開けろよ!!ジョーカーーー!!!


イブキ:ジョーカー!!嫌よ、こんなの!!


ヨミ:………


キリヤ:(小声で)イブキ、救急車呼んでくれ…


イブキ:…キリヤ……私ね、…


キリヤ:っ!!(イブキの傷を見て)

お前…!!血だらけだぞ!!


イブキ:手、動かせないの……


キリヤ:え?


イブキ:手首のスジ、切られちゃった…


キリヤ:ウソだろ……


イブキ:ママの愛刀も粉々にされて無くなって

私、もうキリヤ達と一緒にこの街を…守れなくなっちゃった


キリヤ:……


イブキ:…両手のスジを切られて、両足に風穴をたくさん空けられて………たくさん血を流してるのに…

……どうして私、死なないの?


キリヤ:……!!!


ヨミ:あなたまさか……心臓もオートマタなの?


イブキ:ウソ……


ヨミ:オートマタの心臓もその腿と同じ…で…??!!


-イブキを青い糸状の光が包み込む


キリヤ:イブキ、お前!


イブキ:え??……さっきまで腿に穴が空いてたのに…


ヨミ:撃たれたところが…青い光の糸みたいなもので塞がってる…!!


キリヤ:…足痛くないのか?


イブキ:痛いよ、でも……動かせる…!!


ヨミ:…!!


イブキ:え、何これ…今度は腿から糸が出てきた!!


キリヤ:なんだこれ…!!


ヨミ:(うっとりしてため息をつく)…素敵


キリヤ:手首に巻き付いてるけど!それ大丈夫なのか?


イブキ:わかんないよ…!!

でも、血が止まって…傷が塞がってる…

私の体、どうなってるのよ!!


ヨミ:素晴らしい!!!…っ!!!(自分の右手首を斬る)


イブキ:あんた何してるの?!!


ヨミ:…やはり私の体内にあるオートマタでは自分の身体のパーツは再生出来ないのね


キリヤ:やめろ!!


イブキ:きゃあ!!


ヨミ:(自分の足を斬りながら)っ!!…何も起きない!!……なんで?!


キリヤ:やめろって言ってるだろ!!


ヨミ:ここを斬れば……さすがに…ねぇ?


キリヤ:なんの冗談だ!やめろよ!!


イブキ:無理!見たくない!!


ヨミ:…私が整形に使ったのはこのメスガキのよりも優れている最新のオートマタでしょ?!


イブキ:いや!!やめて!!


ヨミ:私は、…私はこの大日本帝国を再生させるために左腕をオートマタに整形したの!!

人の細胞と同じ造りの金属、これはその最新鋭モデルって聞いたから私……直ぐに整形したのよ?


キリヤ:人の細胞と同じ造りの金属だあ???


-イブキを包んでいた青い光が消える


イブキ:え、ウソ……手が……動く…!!


ヨミ:なんですって…!!


キリヤ:イブキ、ここから離れろ!!

ジョーカーは俺がなんとか担ぎ出すから早く行け!!


イブキ:…キリヤ…


キリヤ:急げ!!


イブキ:うん!!


ヨミ:行かせない…!!


-何発も発砲される


ジョーカー:……どりゃー!!


キリヤ:ジョーカー!!生きてたのか!!


ジョーカー:勝手に殺すんじゃねーよ!ニュー歌舞伎町商店街の人間舐めんな!発砲なんか日常茶飯事なんだよ!!


ヨミ:…防弾ジャケット……!!


ジョーカー:(ジャケットについた弾丸を払いながら)ったくよー、にしても撃ち込み過ぎだろ!!表面を払っても払っても弾が落ちてきやがる!!


キリヤ:…さっき撃たれた時、血だらけだっただろ?!


ジョーカー:バカヤロー、血のりだ

このジャケットが防弾ジャケットってバレたらまた撃たれちまうだろうが!!


キリヤ:これ以上心臓に悪いことするなよ〜…


ヨミ:…不死身のジョーカー…!!


ジョーカー:そりゃオレの昔の二つ名だが

いまはただのバイク屋店主だ


-突如、エンジン音と共にバイクが一台ヨミに激突する


ヨミ:…きゃあっ!!


イブキ:あ…!


キリヤ:ケイト!!


ケイト:キリヤ、イブキ!!やっと見つけた!!


ジョーカー:ケイト…お前…


イブキ:遅いわよ…バカ!!


ケイト:…何コレ


ヨミ:ヤ…ナギ……?


-ケイトの雰囲気が変わる


ケイト:あ??おい!!今ボクのこと何て言った?


ヨミ:ヤナギ……じゃ、ない……!?


ケイト:ボクはケイト、愚弟ヤナギとごちゃ混ぜにすんじゃねーよ!!


-ヨミ、一発の弾丸を撃つ


ケイト:っと!!危ねーなあ!おい!!

こんな近距離で銃ぶっぱなすとは、随分とイカれた頭してんな!!


ヨミ:……ウソ…(震える)


ケイト:フン、整形モンスターか?お前

恐怖やら何やらで顔の造形がおかしくなってるぞ


ヨミ:…えっ?


キリヤ:…なんだ……あれ……

顔がめちゃくちゃになってる!!

美女じゃなかったのかよーー!!


ヨミ:う、うそ…!!


キリヤ:鼻が右に片寄った!

え?どうなってるの、これ


ジョーカー:そいつがオートマタ整形手術の副作用ってことか


ヨミ:い、いやよ…嫌!!


ジョーカー:あ!顔の造形が変わったと同時に傷口が塞がりやがった!!


ヨミ:い、嫌よ……見ないで!!


ケイト:さぞご自慢のご尊顔だったんだろうが、今じゃ目も当てられねえなあ!!


ヨミ:…やめて!!


キリヤ:本当に…美女じゃなくなっちまった…


ジョーカー:キリヤって本当に女を見る目無いよな


ケイト:同感だ


キリヤ:うわ!裏ケイトにまで言われた!!


ジョーカー:己の願望のためとかほざいて

躊躇いもなく人殺しするヤツが美女だなんて、

おかしな話だよなあ


イブキ:…命を軽んじる人間だもの

隠していたか定かでは無いけど…

心の汚さが表に出てきただけよ


ヨミ:や、嫌ぁああ!!……

いやぁあああ!!!


-およそ20分後


キリヤ:…うわ……なんだよこの旧式の大群


ケイト:さっきの…ヨミさん、だっけ?

この人が意識失うまでニュー歌舞伎町へ向かって来てたんだよ?


キリヤ:いすぎだろ……気持ち悪っ!


ケイト:こんな大群を相手に戦わないといけなかったんだよ!!!

そんな大変なときにキリヤもイブキも連絡とれなくてさ…

僕がどれだけヒヤヒヤさせられたか……


イブキ:………


キリヤ:ん?どうした?


ケイト:…イブキ、無理してるでしょ?


イブキ:無理なんかしてない!!


ケイト:足と腕に大ケガしてたって聞いた

なんでもないって、我慢し過ぎだよ


イブキ:正直に言うと…怖い…

私の足が人間と同じ細胞で出来た金属のオートマタだったなんて……信じたくない


-イブキの頭をポンポンと触るケイト


イブキ:…っ!!…子供扱いしないでよ!


ケイト:よく頑張ったね、イブキ


イブキ:うっ…(泣き出す)うわあああ!!


キリヤ:ケイト〜、お前ってさ


ケイト:何?


キリヤ:鈍感だよな〜


ケイト:ど、鈍感ってなんだよ!!


キリヤ:俺の口からは言えねえなあ


ケイト:キリヤ!教えてよー!!


キリヤ:やだね!!


-キリヤ達から離れた所で通話するジョーカー


ジョーカー:今回は何とかなったが…

これ以上ニュー歌舞伎町商店街を巻き込まねえで欲しいんだが…

大日本帝国随一の防衛都市とか言われて、旧式がわっさわっさ出てきやがる…平和に商売も出来ねえんだよ

それと!!

………やっぱ、何でもねえ


-電話口から微かに笑い声が聞こえる


ジョーカー:にしてもあんた、酷なことするな…

万が一嬢ちゃんが死んじまったらどうするつもりだったんだ?

……そうかよ、オレに話す義理なんかねえもんな


ケイト:で、これが旧式を呼び寄せていた原因らしいんだ

ヨミって人の左腕に付いてたガトリングガンから出てきた


キリヤ:何だこの赤い石


ケイト:人工宝石ヒューマイト、こんなに大きなものは僕も初めて見るよ


キリヤ:へぇー…すいぶんとキレイな石だな…


ケイト:これにUVライトをあてると…こうなる


キリヤ:わっ!赤く光った!!


ケイト:ヒューマイト、人間の細胞とほぼ同じ構造をしていて通電性に優れている

色が赤いのは僕らの体内に流れるヘモグロビンが含まれるから

旧式AI兵の心臓部に使われてるんだ


キリヤ:こんな直径えーと、4cmくらいの石になんで旧式が群がるんだよ


ケイト:(ため息)…旧式AI兵は現在なぜ暴走して自爆するか、おさらいしてくれる?


キリヤ:……俺、頭使うこと苦手だ…!


イブキ:もしかして…旧式達は異常を起こした部分を修復するために

自らこの石を探して群がってきたってこと…??


ケイト:可能性としてはゼロじゃないね

ちなみに…さっき僕たちがいた歌舞伎町地下街の最深部にはもっと大きなヒューマイトや緑、紫に光る石がたくさんあったよ


イブキ:最深部の石とこの大きなヒューマイト?とかいうものに反応してあの大群が来たってこと?


キリヤ:…もしかして…旧式自身も自爆を恐れているのか?


ジョーカー:(タバコの煙を吐く)かもしれねえな…


キリヤ:旧式AI兵の中にまだ異常を起こしていないヤツがいて

そいつが他の旧式を集めることが出来るとしたら…


ジョーカー:…いくら防衛都市って言われてるニュー歌舞伎町でも対応出来ねえな、ありゃあ


キリヤ:そうならない為にも…俺ら自警団がいるんだ!…だから!!


ジョーカー:あん?


キリヤ:だから!町の平和を守るために1960年代製バイクのサイドミラー、俺にくれ!!


ジョーカー:はあ?!馬鹿言ってんじゃねえよ!!


キリヤ:ニュー歌舞伎町は俺が守るからその報酬だ!!サイドミラーくれよ〜ジョーカー!


ジョーカー:理由つけてビンテージ手に入れようとしたって無駄だ!!

バイク屋店主のオレがやらねえったらやらねえんだよ!!


キリヤ:ジョーカーのケチ!!


ジョーカー:ケチで結構だ!!

ってお前!!またバイク壊しやがったなー!!


キリヤ:へっ??


ジョーカー:あーあーあーあー!!

せっかくのカワサキ・エストレアがキズだらけじゃねーか!!


キリヤ:うおおおお!!めっちゃ擦ってる!!いつの間に?!?!


ジョーカー:初めから決めてはいたが、あのサイドミラーはぜってーてめえにはやらねえ!!


キリヤ:えええ?!俺とお前の仲だろ〜

なあジョーカー!!


ジョーカー:擦り寄ってくんじゃねえ!!

クソ野郎菌がうつる!!


キリヤ:人のことバイ菌みたいに言うなよ!!


ジョーカー:お前はバイ菌よりタチが悪いんだよ!!


キリヤ:ひでえこと言うなよー!!なぁージョーカー!!


ジョーカー:ビンテージは今後一切ぜってーお前にはやらねえ!!


キリヤ:ジョーカーのケチ!!


ジョーカー:この際ケチでもなんとでも言え!やらんもんはやらん!!


-旧渋谷区神宮前、自警団本部


ヤナギ:…ヨミさん、壊れちゃいました


ユーリカ:どういうことだよ!ヤナギ!!


ヤナギ:言葉の通りです

旧新宿区の発電システムを占拠する予定が失敗してしまいました

それに、旧式をおびき寄せるために使ってた人工宝石ヒューマイトも奪われた

…あれを手に入れるのはとても大変だったのに


ユーリカ:旧式を…おびき寄せる…?

ヤナギ、てめぇ…何を言ってんだ?


ヤナギ:ボクがこの自警団を使って出来ることはもう何も無くなりました


ユーリカ:はぁ?


ヤナギ:ユーリカ、君はもう必要ないです


ユーリカ:(震えながら)意味わかんねえ…!!


ヤナギ:言葉の通りなのですが


-ユーリカの眉間を弾丸が貫く


ヤナギ:変な正義感持ったうるさい小娘だったね、おやすみなさいユーリカ

そういえば…被検体「6」号もうるさい女子高生でしたね


-ユーリカの死体を蹴りながらヤナギは呟く


ヤナギ:被検体「8」号…

ボクは君を探しに行ったのになんでいなかったの?

次は必ず迎えに行くからね、個体名「エノン」…



to be continued

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