2章 銀狼と鳳凰
第16話 3ヶ月後
「やぁぁぁぁぁ!!」
白い鎌が熊型の
「シッ!!」
俺は転がった上半身にある
「お疲れ様でした」
「うん。お疲れ様。さっきの動き良かったよ」
「ありがとうございます」
雪城さんが初めて実戦に出て3ヵ月が経っていた。雪城さんは死神として順調に成長していた。他にも変わったこととがある。それは双園基地の出撃体制だ。2人1組で
「だいぶ慣れたみたいだね」
「確かに慣れはしましたが、反省することも多いです」
「でも、しっかりと反省を生かして成長しているよ」
「鍛えてくれている銀崎さんのおかげです」
時間がある時に俺は雪城さんに実戦的な戦い方を教えていた。
「練習っていうのはすればするほど身体に覚えるんだ。頭が真っ白になって、何も考えられなくなっても身体は動くようにしてもらいたいんだ。特にステージ2以上の
「銀崎さんでも頭が真っ白になることがあるんですか?」
「あるよ。ステージ2はそういうことはなくなったけど、それ以上は余裕がない時が多いからね。ないようにはしたいんだけど……」
「ステージが上がるとそんなに強くなるんですね……」
雪城さんはまだステージ2以上の
「戦わないのが一番なんだけどね。さ、帰ろうか」
「はい」
ーーーーーーーーーー
「お帰り」
基地に帰ると音羽副所長が作戦室でモニターに映し出された地図を見ながら腕を組んでいた。
「どうかしたんですか?」
「ああ、ここでさっき妙な
音羽副所長が地図を指さした。
「妙な
「反応があったりなかったりチカチカしているんだ。反応があったと思えば、すぐ消えたり、10秒ほど反応があったりセンサーの誤作動としか思えない反応だ」
「それは確かに妙ですね……。かといって確かめないわけにもいきませんね」
「だな……」
俺はモニターを眺める。確かに
「……これってこちらを挑発しているようにも思えませんか?」
「挑発?死神を誘っているってことか?確かにそう思えてもおかしくはない反応だが……。なんで挑発するんだ?」
「それは……
「まあ確かに
「とにかく見てきますよ。センサーの誤作動であればそれでいいですけど、下手したらステージ2以上の
「そうだな。悪いな。帰ってきたばかりなのに」
「いえ、大丈夫です」
「私も行きます」
雪城さんが声を上げる。
「ありがとう」
「ところで反応があった場所って何があるんですか?この辺りには行ったことがなくて……」
「だろうね。北地区の一番北って人がほとんど住んでいないエリアだし、何もないんだ。
俺もほとんど行かないエリアなので詳しくは覚えていなかった。
「廃工場だ」
音羽副所長が答えた。
「あーー……そうでしたね。教会に行った時に見た記憶があります」
おぼろげながら記憶が蘇った。
「かなり距離があるから、車を出した方がいいな」
音羽副所長がありがたい提案をしてくれる。
「助かります。じゃあ、10分後に駐車場に集合しよう」
「わかりました」
ーーーーーーーーーー
「本当に何もないですね」
「だね……」
1時間後、俺と雪城さんは目的の廃工場に来ていた。現在は使われていないということで人の気配はないし、鉄くずが散らばっていた。
「さて、
「移動したんでしょうか?」
「っぽいね……。音羽さん、
俺は無線で音羽副所長に確認をする。
「反応自体は相変わらずだ。しかし、少し東に移動している」
「了解です。東ね……」
俺は東の方角を見る。そこにはひときわ大きな建物があった。
「あそこに反応があるみたいだ。行ってみよう」
「わかりました。大きい建物ですね」
「一応、反転状態になっておこう」
先制される可能性も考えて反転状態になっておくに越したことはないと思った。
「「
俺は建物の扉を蹴り飛ばし、中に侵入する。
「…………」
中を確認するが、見た限りでは
(…………いない……?)
遅れて雪城さんが入ってくる。
「……いませんね……」
「ああ。奥に進もう」
俺たちは周りを警戒しながらゆっくりと進んで行く。しかし、
(……
「銀崎さん、ここが最奥みたいですね」
「みたいだね……」
「結局いなかった……ですね……」
「うん。一度建物の外に出て……危ないっ!!」
俺は雪城さんの周りに
「きゃっ……!!」
何かが飛び出し、俺が作った壁に攻撃をする。
「
俺は飛び出してきた何かに斬りかかる。
「!!」
敵は軽やかな動きでそれを躱す。
「
雪城さんが鎌を出し、着地したところに攻撃する。しかし、その攻撃も後方にジャンプをして躱されしまった。俺たちのと敵の距離は5mほどになった。
「大丈夫?」
「はい。大丈夫です」
俺たちはここで相手の姿をはっきりと確認する。見た目は猿のようだった。大きさは2mほどで、腕がやけに長い。
「敵は動きが早い。反応を誤魔化す手段がある以上ステージ2以上の
「……はい、もちろんです」
「よし。雪城さんには相手を引き付けて欲しい。全体防御を厚めに展開して、敵の攻撃を受けないようにしておいて」
雪城さんも
「はいっ」
雪城さんは俺の指示通りに厚めに全体防御を展開する。これであればよほど強力な攻撃をされないと突破されないだろう。
「「!!」」
猿型の
「ちっ……」
俺は紙一重で攻撃を躱す。躱した直後に空中に剣を出して飛ばすが、あっさりと躱される。
「厄介だな……」
敵は素早い上に遠距離攻撃も持っているときた。いやらしい戦い方ができるパーツが揃っていた。
「どうしますか?遠距離攻撃を持っているとさっきの作戦が使えませんね」
「ああ……。隙が無いな。来るぞ。
「銀崎さんっ!!」
「俺狙いかっ……」
(……やはりステージ2だな……)
ステージ1であれば、近くの相手からだったり無差別だったりすることが多い。しかし、こいつは効率的にこちらを減らしに来ている。
「はあっ……!!」
俺は防御をせずに、相手に向かって前進する。このまま一気に懐に飛び込む作戦だった。
「ぐっ……。らぁぁぁっ……!!」
俺は攻撃を受けながらも加速する。
「ギイィィ……!!」
飛び込んでくるのを見た
「遅い」
俺は
「はぁっ!!」
そして、くるりと身体の向きを変え、次は横に両断する。狙いは右胸の
「……よし……」
「だ、大丈夫ですか?」
雪城さんがこちらに駆け寄ってくる。
「うん。大丈夫。肩に一発もらっただけだから」
「…………。」
雪城さんは俺を何とも言えない表情で見ていた。
「
それよりも俺は
「ふう……。建物から出ようか。報告をしないといけないし」
「……はい」
雪城さんの表情は暗いままだった。
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