第12話 決着
「こちらは目的地に到着した。そちらはどうだ?」
インカムで川崎さんから通信が入る。
「こちらも目的のマンションに到着しました。では、同時に侵入しましょう」
「了解だ」
通信を終え、篁さんの方を見る。彼女は頷いた。
「
「はい、一応。3秒ほどできます」
「十分です」
透過は
「「
俺と篁さんは反転状態になる。そして一瞬透過状態になり、マンションに入る。
「!!」
マンションに入った瞬間に悪寒が走る。
「……こっちが当たりか……」
「えっ……何で……わかったんですか……?」
「空気が違います。マンションの中に入った途端空気が重くなったのを感じませんか?」
「…………そんなことないと思いますが……。今のところ黒い霧も見えませんし……」
「上の階に行きましょうか」
「……はい」
階段を使って俺たちは上の階に上がっていく。このマンションは7階まである。フロアを一周し、
「…………いませんね」
「そうですね……」
5階まで上がったが、黒い霧を見つけることはできなかった。川崎さんからの通信もない。
(…………まさか2つともハズレか?俺の勘違い?)
その可能性もゼロではない。さっきの悪寒は気のせいという可能性がある。その時だった。
「……銀崎さん……あれ……」
「…………ええ、見えます」
篁さんの視線の先の部屋からは黒い霧が漏れ出していた。やはりこちらにいたようだ。
「発見を報告します」
「お願いします。俺はもう少し近づきます」
俺は黒い霧が漏れ出している部屋に近づく。手には鋏を用意し、いつでも戦えるように準備をする。
「…………ふうーーーー……」
深く呼吸をする。
(…………よし……)
後方を確認すると篁さんが近づいてきていた。
「俺が先に突入します」
「了解です」
「3、2……1……0!!」
俺は部屋に飛び込む。そしてあたりを見渡す。
(…………いない……?そんな馬鹿な……確かにここから黒い霧が……)
部屋に入るが鬼型の
「っ……!!」
俺はUターンして部屋から出る。
「くそっ……!!」
廊下には黒い霧が大量に溢れていた。
「篁さんっ!!」
篁さんの姿が見えない。
(迂闊に突入してしまったな……。嵌められたかっ……。こいつ……もう……すでにステージ3になってるのか?)
俺達が見た黒い霧は俺達を誘い出すためにわざと用意していたのだろう。どこか別の部屋で俺たちが2手に分かれるのを待っていたのだ。
「篁さんっ!!篁さんっ!!」
大声で呼びかけるが篁さんからの返事は返って来ない。この大量に発生した黒い霧に飲み込まれた可能性が高い。
「…………。」
動きが止まる。
(……何を迷っているんだ、俺は!!篁さんの命がかかってるんだ。迷ってる暇なんて……ないっ!!)
俺は持っていた鋏を2つのパーツに分解する。それは柄の先に丸い持ち手がついた刀のようだった。
「はぁっ!!」
そして黒い霧に向かって大きく振りかざす。
「ギャァァァァ……!!」
黒い霧が切り裂かれ、鬼型の
「離せっ!!」
俺は鬼型の
「ギッ……!!」
鬼型の
「……そんなんじゃ防御のうちに入らねえよ」
鬼型の
「…………銀崎……さん……。これは……」
篁さんは何が起こったのかわからないというような表情を浮かべている。
「すみません。作戦ミスでした」
「……いえ……」
「大丈夫ですか?」
「……はい……」
俺は篁さんを地面に下ろす。
「少し離れててください」
黒いコートを脱ぎ捨てる。
「…………」
「すぐに終わらせるんで動かないでください」
両手に分解された鋏を握る手に力がこもる。
「ギィィィ!!」
先程切り落とした腕が一瞬で生えてくる。
「そんな……」
さらに角が大きくなり、腕がもう2本生えてくる。
「ガァァァァァァ!!!!」
鬼型の
「ガァ……?」
しかし、すぐに咆哮は大人しくなる。そして、ドスドスと何かが落ちる音がマンションの廊下に響く。
「…………す、すごい……」
鬼型の
「ァァ……」
鬼型の
「やはり頭は良いようだな……」
「銀崎さんっ!!逃げちゃいます。追わないとっ……」
「ええ!!」
鬼型の
「おっと……」
俺は急に足を止める。
「銀崎さん?」
「俺達の出番はここまでのようですね」
「えっ……」
俺は鬼型の
「…………あっ……」
視線の先では茜さんと鬼型の
「止めは茜さんに任せましょう。今、行っても火村さんの戦闘に巻き込まれてしまいます」
「そうですね。火村さんの攻撃範囲は広いですからね」
篁さんは安心した表情を浮かべる。
「
茜さんが叫ぶと空中に刀が現れる。そして、左手で握る。その顔は不敵な笑みを浮かべていた。
「さて……さんざんとうちのシマを荒らしてくれたツケを払ってもらおうか」
「ギ……ギぃ……。」
鬼型の
「その命でなぁっ……!!」
茜さんが右手をふるうと自身と鬼型の
「……終わりだな……」
「ですね……。必勝パターンに入りましたね」
茜さんの必勝パターン、それは炎で敵を囲み動けなくしてから炎ごと刀で真っ二つに切るというものだ。どちらか片方だけでも
ボガーーーーン!!
大きな爆発音がして、炎が弾け飛ぶ。茜さんは悠々と炎の中心から出てきた。
「やりすぎですね……」
「……ええ……」
茜さんに欠点があるとすれば戦闘が派手になりすぎることだろう。茜さんの
「あーあ……またやってるよ……」
今回も例に漏れず、巨大なクレーターを作ってしまっていた。しかし、茜さんはスッキリとした顔をしていた。
「後始末……何とかなりますかね……?」
「さっきの爆発で窓ガラスも何枚も割れてるでしょうし……かなり大変ですね」
「いえーい!」
後始末のことを考え始めていた俺達の方を見ながら、茜さんは無邪気にピースをしていた。
「ふふっ……本当に火村さんは……」
篁さんの顔から笑みがこぼれる。
「相変わらずですね……」
俺もつられて笑った。
「行きましょう」
「はい」
俺と篁さんは茜さんの方に向かった。
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