突発性ソウゾウ爆発

@OS_N_

恋、無関心

「ただいま。」

S氏は自宅の玄関の扉を開け、ひとり独白のように呟いた。

そこは小さなワンルームのマンション、S氏の自宅だ。


「おかえりー、今日もおつかれさま」

部屋から聞こえてくる、労いの優しい声。

S氏は特に気を留める様子もなく、いつものように雑に靴を脱ぎ捨て部屋に入ると、着替え始める。


「ふぅ。」

S氏は小さな部屋にはやや不釣り合いな大きさの椅子に、どっかりと腰をおろす。部屋の中は、モノが散乱した棚、万年床のベット、大きなPCデスクがあるだけのシンプルな部屋だ。S氏は一日の疲れを癒すように、ゆっくりと目を閉じる。


「ーーは、今日ご飯何食べた?」

問いかける声が意識の中に入ってくる。


「あー。ご飯食べなきゃ。」

S氏は声の問いかけに答えるような、独り言のような、半端な返答をしてキッチンに向かう。冷蔵庫を開けて中を確認し、いくつか材料を取り出す。豚肉とキムチを手早く炒め、冷えたご飯をお椀によそい、インスタントの味噌汁を付ける。


全て一人前だ。


「ええなー。おいしそうやなー」

しゃべり続ける声を気に留める様子もなく、遅めの夕飯をPCデスクの前に移動させる。S氏は、ゆったりと椅子に座り、軽く手を合わせると、箸を手に取り食事を始める。


無言で食事を続ける。


と、唐突に食事の手を止め、跳ねるように顔を上げた。

そのまま、じっと視線を向ける。まるで目の前の一挙手一投足、一言一句を逃すまいとするように。


「やっぱ好きだな。」

S氏の視線の先、部屋に一つだけあるディスプレイ。そこには動画サイトのウインドウと、しゃべり続ける女性の姿が映し出されていた。S氏は顔に笑みをたたえたまま、じっと彼女に視線をむける。

彼女の何がそうさせるのか、見た目?、話し?、はたまた性格か?それは誰にも分からない。


そんなS氏のことを気にも留めずに、ディスプレイの向こう側の女性は話し続けた。

「そんでなー」

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