第23話 放浪する厄災
<宿屋>
「はぁーとりあえずここに…」
「えへへ……」
俺は寝ていたセレンをベットを上に置く。
寝顔はなんとも楽しそうな笑顔でよだれを垂らしながら寝ていた。
「こいつ最初に出会った時こんな奴じゃなかっただろ」
俺はつくづく思う。
最初に出会った時俺をからかい騙そうとしていた。
だから最初の方は警戒した。
あいつを疑い突き離していたが…
「…………」
あいつは自分が俺と同じ不死身になりたいからという理由でここまで旅をしてきた。
しかし実際はなりたいどころか不死身の俺を同情までしてくる。
「俺はお前の本当の目的がわからない、セレン」
その寝顔が本当かどうかも……
コンコンッ
ドアをノックする音が聞こえた。
宿屋の店主か?
しかしこんな時間に何故?
俺は警戒をしつつゆっくりとドアを開ける。
すると……
ドアを開けた先にいたのは奇抜な格好をした緑色の髪の少年、手にはアコーディオンらしき楽器を持っていた。
「やあ!ひさしぶり!!」
バンッ!
俺は勢いよくドアを閉めた。
最悪だ……
……俺はその姿に見覚えがある
「ねぇ!開けてよぉ!!ねぇ!!」
ドンドンとドアを叩きまくる少年
俺はもう一度ドアを開けると少年はにこやかになる
「なんのようだ、ベーガスト」
「えへへ、ようがなきゃ会いに来ちゃダメ?」
少年は当たり前のように俺に語りかけて来た。
俺は明らかに嫌な態度を取るがそんな事は気にしていない様子
「チッここだとあれだ、場所を変えるぞ」
「おっけー!」
俺達は寝ているセレンを部屋に残し宿屋を出た。
*
さっきまで活気があった町は静まり帰りそこらかしこの家の明かりは消えていた。
明かりを灯すものは街灯ぐらいしか見当たらなかった。
その中に俺は広場のベンチに腰掛けベーガストは後ろにある木の幹に座っていた。
「あはは何百年ぶりかなーこうしてこうして話すことは」
「………………」
こいつは絶対に警戒しなければならない
何故ならこいつは……
「そんなに警戒しないでよー僕達は親友じゃん」
「俺は羽虫と友になった覚えはない」
こいつとは腐れ縁
昔からの知り合い
そう、昔から
「ねぇねぇ一緒にいた女の子誰!?もしかしてついに!!」
ベーガストは足をジタバタさせる
「お前の『眼』ならわかるはずだ、あいつが何者かぐらい」
「なーんだつまんなーい、まぁそこの話なんだけど」
「なーんで君が魔女と一緒にいるのかなぁ?」
ベーガストはそう言うと木から飛び降り俺の目の前に立つ。
そして両目を見開き
______もしかして世界を滅ぼすつもり?_______
ベーガストの眼の中には何かの紋章のようなもの写っていた。
風が吹き木々が揺れる。
「お前には関係がない、滅ぼすのなら勝手にやってろ」
「あははは、僕も別にやるつもりはないよー」
ベーガストはそう言うと手を伸ばし飛んで来た黄色の蝶を指先に止めた。
「まぁこの国で何かやる予定はないよーとりあえず君の顔が見えたから挨拶しただけ、じゃあまたいつか………」
精霊の加護が君を導きますように
ベーガストはそう言うと風の中に消えていった。
まるで魔法のように
俺は一人静まった広場で空を見上げた。
「今日はなんでこんなに変な奴と会うんだ?」
*
「ふんふーん♪」
ベーガストは町の裏路地をご機嫌に歩く。
「いやーまさかベリトに会えるなんてラッキーだなー今日は」
彼は昔からの知り合い
いつからは覚えていないが僕が人の姿をする前からの仲だ。
「おいガキ!」
「おや?」
ベーガストが後ろを振り向くと3人の男が立っていた。
手には剣を持っており明らかに一般人ではない。
「おいガキ、お前ここがどこかわかるか?俺達盗賊団の狩場なんだよ」
「狩場?」
ベーガストは小首を傾げる。
確かにここは人気が無く強盗や窃盗が起きても誰も気づかない
この人達にとってはうってつけの場所だろう。
しかしそんな状況の中ベーガストは気にもせず再び歩き出そうとする。
すると前方からまた同じように3人組が現れ前と後ろで挟み撃ちになった。
「ねぇねぇ通してよー?今新曲考えてるんだからさぁーー」
ベーガストの頼みに対して盗賊の女は鼻で笑う。
「は、じゃあとりあえず今持っているもの全部だしな!」
「えー僕金も何も持ってないよぉー」
「嘘つけ!!ガキがあまり調子乗ってると……」
すると盗賊の女の隣を一匹の蝶が飛び盗賊の指先に止まる。
「なんだぁこいつは?」
「あはは綺麗でしょその子可愛いよね!」
盗賊の女は蝶を見つめる
「親分どうしたんですか!親分!」
子分の言葉に反応せず見つめ続ける盗賊
まるで何かに魅了されているような
「親分!!」
子分の言葉にやっと反応した。
今まで俺は何やってんだぁー?
一体この感覚は…
まぁいい
「野郎どもやっちま___ぎゃああああ!!」
親分と呼ばれていた盗賊の女の体がいきなり腐り始めみるみる溶け出していく。
全身が膨れ上がり体の水分がなくなって行くのが目に見えた。
「な、な、なんなんだこれ!!」
「あははは!!やっぱり人間にはこの毒は効くんだね」
「に、逃げろーー!!」
子分達は逃げるようと後ろを向くがそこにはなんと無数の蝶がおり、子分達に襲いかかる。
「ぎゃああああだずげぇぇぇぇ」
「しにだくねぇぇぇ!!」
無数の蝶に刺された残りの5人はわずか数秒で体が腐り果て目玉や臓器が飛びちっていた。
その光景は見るも無惨であり蝶たちは子分達から吸い尽くすと跡形もなく消えていった。
「なーんでいつもこの子達をみんな怖がるのかな?こんなにも綺麗じゃないか…」
ベーガストは路地を通り抜ける風に消えこの町去った。
人や魔族など彼を恐れている者からはこう言われている。
世界を最悪に堕とした7つ力
妖精と精霊の狭間に位置するもの。
最悪の存在
精霊の災害 放浪のゼパル
世界が抗うべき災害の1つだ
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