第44話……アリジゴクと缶詰
「何しに来たかと問われれば、わが主はともに戦ってくれる味方を探している! あなた方は我が主の味方になってくれないだろうか?」
「……味方とな?」
「ああ、そうだ!」
私は族長の老人に、現在のセーラさんのおかれている状況を伝え、一人でも多い協力者がほしい旨を伝えた。
族長は周りの者とひそひそと相談をした後、こちらに向き直る。
「我々の味方は強くなくては困る。その強さを証明できるか!?」
「ああ、望むところだ!」
……ああ、言ってしまった。
まぁ、面倒くさい交渉事よりも、力比べなんかの方が楽でいい。
「……ではこれを探し出して、倒して来い!」
族長は古びた羊皮紙を見せてきた。
それに描かれているのは、巨大な昆虫であるアリジゴクの姿だった。
その広大な巣の中では、ラクダや人が襲われている絵が描かれていた。
「我が見届けよう! せいぜい頑張るんだな!」
族長のそばの屈強な若者が名乗りを上げる。
どうやら目付のようだ。
私が巨大アリジゴクを倒したかどうかを見届けるらしい。
「……では、こっちへ来てくれ。早速行こう!」
不思議な顔をする若者を手招きし、愛機である【サンダーボルト】の後部銃座に乗せてやる。
この機は本来二人乗りであった。
「……では、行くぞ!」
私は族長たちと別れ、愛機にて飛び立った。
濃い砂塵が舞うも、空は蒼く澄み渡っていた。
☆★☆★☆
【システム通知】……目標を探知開始します。
愛機の戦術コンピュータと生体リンクした副脳が、機の赤外線センサーを使って目標を割り出す。
2時間ほど飛んだ後に、目標らしきものを発見した。
「……げげげ」
目標に接近した私は絶句した。
長さが数百メートルもある例の芋虫が、巣の中央部で巨大なアリジゴクに襲われていた。
凶悪な顎の大きさだけで、500mもありそうな巨大なものだった。
その巣も広大で、直径40kmにも及ぶ、すり鉢状の巣が作られていた。
「とりあえず、これでも食らえ!」
私は愛機を急降下させ、高性能爆弾を投下。
巨大なアリジゴクの周囲に爆炎が上がる。
さらに、操縦桿のカバーを外し、ビームライフルのトリガーを引く。
次々に光弾が曳航を現し、アリジゴクの硬い表皮に着弾。
硬いであろう表皮が次々に飛び散り、赤黒い体液が迸る。
「しまった!」
このまますぐにケリが付くかと思ったが、巨大アリジゴクは砂の中に姿を消してしまった。
その深さはセンサーの予測では100m以上。
この機の武装では、破壊を確実にするのは難しそうだった。
「どうした? 早く倒してしまえ!」
後部座席に乗る若者が煩い。
彼は私が困っていることを悟ると、ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべた。
……が、その時。
巨大な巣めがけて、十数条の太いエネルギー光線が上空より次々に殺到。
莫大な砂塵を巻き上げ、アリジゴクの巣を破壊。
アリジゴクの本体を丸裸にした。
――ドドドドド
私はここぞとばかりに、ビームライフルのトリガーを引く。
更には、ハードポイントに残る対艦ミサイルの残弾を全てぶち込んだ。
アリジゴクの断末魔が周囲に響き渡り、私はこの任務を全うした。
「……お、お前は、天空の神の力までも操るのか!?」
後部座席の若者は、立派な体をがくがくと振るわせて驚愕している。
多分、上空からの謎の光線のことを言っているのだろう。
……すまん。
この機の火力では足りなくて、コッソリとクリシュナへ援護射撃を頼んだのだ。
しかし、打ち明けると五月蠅そうなので、このまま黙っておくことにした。
☆★☆★☆
「……間違いありません。このお方はタダものではありません」
先ほどまで後部座席で震えていた若者が、族長に巨大アリジゴクの討伐結果を報告。
さらには謎の光線のことなど、彼等には驚くべき一部始終を語った。
さらに証拠として、表皮の一部分を持ち帰ったのもあり、族長は素直に信じてくれた。
「勇者様、試すようなことをして申し訳ありません! この度のことは御許しを」
族長のみならず、皆が私にひれ伏す。
「いやいや、やめてください。それよりも、わが主に会って頂けますか?」
「はい、それはもう!」
族長は嬉々として、セーラさんとの会談に応じてくれた。
――翌日。
会談はクリシュナの貴賓室で行われ、双方の繁栄を約束する友好条約及び、軍事同盟が締結された。
また、この惑星の名は、便宜上サンドマンと呼称されることになった。
惑星サンドマンの軍事力は当てにはならないが、ライス家との協力を表明する貴重な新規勢力の誕生は、外交上としては大きな成果だった。
☆★☆★☆
――会談後。
「セーラ殿、これは旨いですな!」
「でしょ? この缶もイケますわよ!」
惑星サンドマンの有力者をクリシュナに招き、盛大に晩餐と行きたかったが、材料がないために缶詰パーティーとなる。
「勇者殿、この魚をお代わりしたいのだが!」
「かしこまりました。ブルー、鯖カレー缶追加で頼む!」
「あいよ!」
実はクリシュナには地球製の缶詰が沢山積載されていた。
それは軍用の高級糧食程度ではあったが、この世界にはない味もあり、概ね高評価を得たのだった。
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