第38話……惑星ジュノーへの援軍
――PIPIPI
クリシュナの艦橋で、ブルーと夕食を食べていると、超光速で緊急通信が入る。
通話モニターに出てみると、フランツさんだった。
『カーヴ殿、元気にしているか?』
「はい、何事でしょう?」
『実は友軍惑星がマーダに襲われて絶体絶命なのだ。あとひと月持つかどうかも分からない。至急駆けつけて欲しい。宙域座標はBVX-863の第三惑星ジュノーだ』
「わかりました! 急いで駆け付けます!」
『詳しいデータは圧縮して送る。頼んだぞ!』
映像通信が切れた後、詳しい宙域データが送られてきた。
惑星ジュノーは惑星アーバレストから何百光年も離れており、映像通信に使うエネルギーコストも馬鹿にならなかった。
「旦那、出撃ですかい?」
「……ああ、そうだ。至急ワープの準備を進めておいてくれ!」
「了解!」
私はブルーに長距離の次元跳躍航法を指示。
さらには、ペットのポコリンをチャイルドシートに縛り付けた。
「ぽここ?」
「すぐ終わるから、おとなしくしてくれよな」
……というのは真っ赤な嘘で、クリシュナは十数回の長距離ワープを敢行。
連続ワープの強行軍にて、二週間がかりで惑星ジュノーが可視光線で見える位置までついた。
☆★☆★☆
「旦那、あれが敵さんの母艦ですかね?」
「そうらしいな」
クリシュナは小惑星に偽装し航行していた。
今のところ敵にバレた節はない。
もちろん味方にもだ……。
マーダ軍は既に惑星ジュノーの周辺宙域を制圧。
惑星揚陸艦を繰り出し、地上戦に移っていた。
敵影は20隻余り、旗艦と思しき母艦は全長3km以上もあり、クリシュナの約10倍の大きさであった。
「先制攻撃を掛ける! 艦の前方の岩塊を爆破と同時に、敵母艦の周りの護衛艦を砲撃する!」
「了解!」
「ぽここ~♪」
クリシュナの艦首主砲が一斉に火を噴き、青白い光条が次々にマーダの護衛艦群に突き刺さる。
夥しいガンマ線の濁流を受けて、マーダの艦船が一瞬で蒸発する。
「続いて、主砲塔も砲撃。母艦を丸裸にしてしまえ!」
クリシュナの戦術コンピューターが私の声を認識。
3基の砲塔レールガンが、次々に電磁加速した高次元質量弾を敵に浴びせかけた。
『敵火砲来ます!』
「電磁防壁、出力最大!」
クリシュナの前方の防御力は、地球連合軍の中でも屈指であった。
遅れたこの世界の兵器では、凡そクリシュナを前方から撃ち抜くには能わない。
『ミサイル接近、数160』
電磁防壁などの前方のシールドを迂回し、誘導兵器が後方より襲い来る。
「迎撃ミサイル発射、対空機銃応戦せよ!」
クリシュナの後甲板で防空用のVLSが作動。
併せて、戦術コンピューターとリンクしたレーザー機銃が、敵のミサイルを叩き落とした。
15分ほどの砲撃戦で、敵は大型母艦以外爆砕してしまった。
しかし、敵母艦は防御システムと装甲が硬く、クリシュナでもなかなか有効弾が与えられないでいた。
「艦載機、発艦!」
『ぽここ~♪』
敵護衛艦を排除した後に、後方の電磁カタパルトから発艦したのは、ポコリンがのる戦闘機である【サンダーボルト】。
彼の機は敵母艦にアブのように集り、嫌がらせのように脆弱部へダメージを与えていった。
「敵母艦が逃げます!」
「逃がしてしまえ!」
「いいんですかい?」
ブルーは不満そうだ。
このまま戦えば、時間は掛かれども撃沈は確実だったからだ。
「今は時間が惜しい、地上の支援に回るぞ! 私も艦載機ででる!」
「了解!」
クリシュナにブルーを残し、私とポコリンの機は、地上に展開するマーダの地上部隊へ攻撃。
機に搭載されていたミサイルを次々に発射。
マーダの地上戦闘車が次々に爆発炎上していく。
ミサイルを撃ち尽くした後は、ビームバルカン砲で丁寧に地上掃射を行っていった。
「一時帰投する、補給を頼む!」
『了解!』
ウーサのところでエネルギーや弾薬を補給出来ていたために、今回の攻撃は容赦なく、ふんだんに反復して行うことが出来た。
この反復攻撃は8時間も継続。
激しい機体運動のGで、私の表皮はボロボロになり、あちこち血も滲んだ。
艦載機でマーダの対空兵器を黙らせた後は、クリシュナも衛星軌道上から砲撃に加わった。
これに応じて惑星ジュノーの人間側の地上部隊も反転攻勢。
マーダの地上部隊は次々に壊滅していった。
☆★☆★☆
地上の戦いにある程度メドが付くと、惑星ジュノーの司令部から通信が来た。
『援軍に感謝する! 貴部隊の所属を問う!』
「所属は惑星アーバレスト、ライス伯爵麾下であります!」
クリシュナは歓声を上げる同胞たちの輪の中に着陸。
まさに救世の英雄の登場といった感であった。
「よくやってくださいました。ご領主のジュノー男爵がお待ちです!」
高級将官が総出で出迎えてくれ、彼らが招く車にブルーと乗る。
クリシュナにはポコリンだけがお留守番だ。
車上から見渡すと、この星も例にもれず荒野が拡がる。
地表の環境が厳しいらしく、この星でも人間はドーム状のコロニー暮らしであった。
ひと際大きな半円ドームのコロニーに着き、街中で歓喜の歓迎を受ける。
「誰だか知らんがありがとう!」
「おかげで助かりました!」
ドーム内の街で一般の方からも御礼を言われた。
そして街中でもひと際大きな建物の中、案内された男爵の部屋に通された途端。
待っていたのは罵声だった。
「なんだこの半機械の化け物は? それにその小汚いブタは何者だ!?」
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