第24話……ベッツという男

――惑星ドーヌル。


 この惑星は、このユーストフ星系において4番目の惑星だった。

 そして2番目の惑星がアーバレストである。



 このドーヌルにおいて反乱がおきる。


 この惑星はアーバレストより住みよく、住んでいる星をマーダ連邦に奪われた人たちが多く移り住んでいた。

 ……が、それは多くの悲劇を招く。

 この星も多くの地域が乾燥しており、多くの移民たちを養う耕作地や水が足らなかったのである。


 それは住民間の不和を招き、武力抗争に発展していく。


 さらには、周辺の不法な武装商人を巻き込み、より大きな武装抗争となり、ドーヌル政府は正式に惑星アーバレスト政府に助けを求めてきたのであった。




☆★☆★☆


「治安出動ですか!?」


「ああ」


 私はフランツさんに呼び出される。

 惑星アーバレストは田舎であるが、とても平和だったのだ。

 治安出動などかかるわけがない。



「実はとなりの惑星だよ。正式には二個となりなんだがね……」


 フランツさんは冗談交じりに言う。



「……で、私がですか?」


「ああ、他に船が無いんだよ。あのカーヴ殿の船で、地上部隊3000名を運んでほしい」


 確かにフランツさんの率いた艦隊は大損害を受け、ドックにて修理中だ。

 無事な宇宙船は老朽艦がほとんどだ。

 その点、クリシュナは浄水設備としてのみ、その存在価値を最大化していたのだ。



「まぁ、水道代が若干上がるかもしれんが、ドーヌルへ行ってくれ!」


「はっ! わかりました」


 私は久々に張り切っていた。

 何しろ、最近地上勤務ばかりで、地面に根が生えそうだったのだ。

 久々の宇宙空間へと、気持ちは逸る。


 私は愛車の装輪気動車を走らせ、A-22基地へと急いだのだった。




☆★☆★☆


「おい、起きろ!」


「出撃ですかい!?」


 ノンビリと机で寝ているブルーを叩き起こす。



「ああ、治安維持にドーヌルまで出向く。だが、地上部隊を送り届けることが主任務になるはずだ」


「ほいほい」


 奴隷商人のところで、多くの地上部隊も救い出していたのだ。

 よって、いくらかの余剰兵力もあってのドーヌルへの出撃だった。



「レイ、武器食料の計算を頼む!」


「あいよ!」


「トム、地上部隊の指揮を頼む!」


「了解でさぁ!」


 私はこまごまとしたことを部下に丸投げし、ブルーと共にクリシュナへと急ぐ。

 今回は地上部隊を3000名も連れて行く。


 彼等はクリシュナに接続した老朽艦に乗ってもらう。

 クリシュナの戦術コンピュータは武装したよそ者を嫌うからだ。



「機関正常!」

「随伴宇宙船接続よし!」


「よし、クリシュナ発進せよ!」


 クリシュナは赤い砂漠地帯を離陸。

 砂嵐を突き抜け、漆黒の宇宙空間へと舞い上がったのだった。




☆★☆★☆


「降下準備良し!」

「管制より入港OKでました!」


「よし、降下せよ!」


「了解!」


 惑星ドーヌルの衛星軌道上から、クリシュナはその身をドーヌルの重力に任せる。

 大気圏に揉まれ、艦体は灼熱に晒される。



「入港良し!」


「タラップ降ろせ!」


 その後、管制の誘導に従いドーヌルの宇宙港へと入港。

 岸壁へと接続し、地上部隊を降ろした。


 それに続き、私とブルーも艦を降りると、でっぷりとした男性に出迎えられる。



「ようこそ、ドーヌルへ。私、治安担当のベッツと申します。お疲れでしょう、こちらへどうぞ!」


 ベッツという方に車の後部座席を勧められる。

 せっかくなので、私とブルーは車に乗り込む。



「どこへ行くんです?」


「カーヴ様一向にホテルを用意しております!」


「おっ!? ホテルいいですね!」


 ブルーは満足げだ。

 確かに久々のホテルだ。

 悪い気分ではない。



「こちらがお部屋になっております!」


「!?」


 ブルーと小声で『酷いホテルだったらどうします?』と囁いていたが、逆の意味で裏切られる。

 ついた先は、立派な大理石造りの高級ホテルの特別室だったのだ。



「流石に豪華すぎませんか?」


 と、ベッツさんに問うと、



「いやいや、国賓ですからな。これくらいは当然でございます」


 ……確かにそんなものかな、と納得。

 ブルーと二人で精一杯に寛ぐ。


 ふかふかのソファーに、備え付けの美味しいワイン。

 前の世界でも味わったことのない贅沢さだった。


――その晩。



「おおう!?」


「旦那、凄いですな!」


 留守番のレイやトムに悪いと思ってしまうほどのディナーが出る。

 豊かな山海の幸が並び、よだれが出そうな湯気が部屋を充満したのだった。



「おお凄い!」


「お湯が沢山ですな!」


 次に驚くのは、お風呂。

 プールのような大きな湯船一面に、たっぷり湯が貼ってあった。

 惑星アーバレストは水が貴重なのだ。

 ご領主のライス伯の屋敷にもないような立派な風呂であった。



「いやいや、旦那。来てよかったですな!」


「ああ、惑星ドーヌルがこんないい所とは知らなかったな!」


 二人でのんびり風呂につかり、その後はフカフカのベッドで寝た。



 そんな酒池肉林の生活を二週間過ごした後。

 突如、フランツさんから通信が入る。



「カーヴ殿! 苦情が殺到しとるのだが、仕事はしているのかね?」


「……いや、あの、それがですね」


 ……どうやら、ベッツという男に嵌められたようであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る