第22話……メドラ星系

「進路をメドラ星系に捕れ!」


「了解!」


 クリシュナは最寄りの有人星系であるメドラ星系を目指す。

 この星系は、フランツさん率いる艦隊がマーダ連邦から解放した星系であった。



「大気圏進入!」

「耐熱シャッター閉鎖!」


 有人星系とはいえ、人類の手に復帰直後の為、管制システムなどはない。

 クリシュナは適当な荒れ地へと着陸した。



「……では行ってくる!」


「司令、お気をつけて!」


 クリシュナには留守番にレイとトム。

 一緒に装輪装甲車にのるのは、相棒のブルーだった。


 なぜならブルーと私はバイオロイド。

 多少の有害物質をものともしない体質だった。


 とりあえず、私達は荒れ地をひた走り、とあるドーム状のコロニーの残骸へと着いた。




☆★☆★☆


「入場料はおひとり様3000クレジットです」


 コロニーの入り口にはお婆さんがいて、入場料を要求される。

 私とブルーは顔を見合わせるが、おとなしくクレジットカードで支払うことにした。



「毎度あり!」


 威勢の良いしなびれた声を後ろに、私たちはコロニーへと入る。



「しかし、中も凄いですな!」


「……ああ」


 お金を払って中へ入った光景もまた、外と同じで荒野だった。

 建物が無残に壊され、建築物の原形を留めていない。



 トボトボと歩くと、瓦礫の下から声がした。



「お兄さん、カードゲームをしないかい?」



 瓦礫の下から小さな子供の姿が見える。

 ゆっくりと近づいていくと、地下に繋がる階段へと案内された。



「是非、遊んでいってください!」


 瓦礫の下は、なんと地下賭博場だった。

 片隅にバーもあり、そこそこの大きさである。



「いらっしゃい、コインは何枚いりますか?」


「一枚いくらですか?」


「100クレジットになります!」


 ……げ、高い。

 それはジュースが一本買える値段であったのだ。



「貰おう!」


 なんとブルーがお金を出してくれた。



「お前、カジノとか得意なの?」


「任せて下さい!」


 得意げに私に10枚のチップを渡した後、彼はスロットマシーンの列へと消えていった。


 仕方なく私はバーでお酒を頼む。

 珍しい煙草も売っていたので吸ってみる。



「……ぉ、これはイケる!」


「でしょ? 旦那」


 歯が不自由そうなバーテンが笑う。


【システム通知】……違法麻薬を検知。

 すぐに捨ててください。


 ……げ。

 結構うまかったのだが、仕方なく灰皿へ。



「なあ、マスター。この近くで宇宙船が不時着してないかい?」


 そう言うと、彼は無言でチップを要求。

 それに応じると、目線で奥の男と話せと合図してくれた。




☆★☆★☆


「遭難した宇宙船についての話が聞きたいのだが、ここでいいかね?」


 私はバーの奥に座わる、明らかにアウトローな感じのひげだるまに聞く。



「ああん?」

「何か聞きたかったら、この俺様にカードで勝ちな!」


「わかったよ、ルールを教えてくれ!」


 私は男にルールを尋ねる。

 どうやら前の世界で言うポーカーに似たゲームであった。

 私はすぐにゲームに興じる。


 ……が、



「フルハウスだ!」


「……くっ」


 ところが、何度やろうとも勝てない。

 追加でコインを両替しても、サッパリ勝てなかった。



「あんた弱いな! 話にならん、ガハハ!」


 しかし、4ゲーム目。

 私は相手のイカサマを見抜く。

 すぐさま相手の手首をつかみ、捻り上げた。



「いでで……、貴様何しやがる?」


「イカサマをしたら、殺してもいいんだっけ?」


 そんなルールは聞いてないのだが、私は腹が立っていた。

 そんな騒動を起こしていると、この男にバーのマスターが駆け寄ってきた。



「ボス! 変なブタ野郎がコインを荒稼ぎしていやす! なんとかしてくだせぇ!」


 私と男がスロットの列に目を移すと、山のようにドル箱を積み上げるブルーの姿があった。



「ボス、なんとかしないと、この店は破産ですよ!」


「あいつを何とかしてほしかったら、情報を出しな! ごちゃごちゃいうなら、この手首を引きちぎるぞ!」


 私はここぞとばかりに高圧的にでた。



「……くっ、お前ら仲間だったのか!」


 男はすぐに屈した。




☆★☆★☆


「あの船はな、奴隷商人が買っていったのよ」


「奴隷商人?」


「……ああ、俺たちはそう呼んでいる。表の看板は何かしらねぇがな!」


 どうやら、フランツさんの乗っていた巡洋艦ウィザードはこの星に不時着。

 非合法な連中に捕まり、この星の収容所に送られているとのことだった。



「どうしたら助け出せる?」


「売られたものは、買い戻すしかねぇ!」


「……なわきゃねーだろ!」


 訳の分からない裏のルールなど知ったことではない。

 非合法に攫われたのであれば、非合法に攫い返すまでだった。

 私は強引に男から収容所の位置を教わる。



「おい、ブルー帰るぞ!」


「ええ? もう少し稼ぎたかったなぁ?」


 穏便に済ますため、割り引いての換金に応じてその場を去った。



 ……ブルーと帰りの車の中。



「てか、ブルー凄いな。博打の才能があるんだな!?」


「旦那、あるわけないじゃないですか! 俺の特技と言えば、機械を弄ることですぜ!」


 ブルーは笑って小さな電子工具を見せてくれた。



 ……くそっ。

 お前もイカサマだったのか。

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