第14話……クリシュナ発進! 第2宇宙速度へ!
――3日後。
【システム通知】……情報解明成功。データ保存します。
私の副脳が、マーダ連邦の兵士から強奪した情報の整理に成功する。
記憶を吸いだせるといっても、極々必要な分だけを断片的に、だ。
一応は相手が機械でも行うことは可能である。
情報を整理すると、マーダ連邦は危険宙域の狭間を縫って、この惑星アーバレスト付近に出没したようである。
しかし、その航行可能な範囲は狭く、大艦隊が通行するのは未だ不可能な航路らしい。
「ご領主様、こちらがデータとなります!」
「有難う、カーヴ!」
最近の私は、セーラさんを【ご領主様】と呼ぶようになっていた。
セーラさんは私の手からファイルを受け取り、丁寧に読み込んでいった。
「とりあえず、代表会議を招集します! カーヴも出席してね」
「はっ」
その日の午後。
再び館の地下の総司令部にて、対策会議が行われることとなった。
☆★☆★☆
地下の総司令部会議室には、アーバレスト国家主席兼総司令官としてセーラさんが上座に座り、各閣僚などが脇を固める形で席に着いた。
ちなみに私は防衛アドバイザーという形で、セーラさんの後ろに控えている。
メイン巨大モニターによって、一通り今回の事案が説明される。
敵は危険宙域の狭間から入ってきた戦闘艦であり、それは惑星ドーヌルの防衛隊によって殲滅された。
その時被弾したドーヌルの戦闘艦が、操艦不能に陥りアーバレストに墜落したとのことだった。
「次に対策について話し合いたいと思う」
議長であるセーラさんが出席者に意見を求めると、野党第一党【反戦平和党】の党首であるレア=クノールという女性議員が発言を行う。
「みなさん、そもそも我々が武器を持つからマーダ星人に襲われるのです。我々が率先して武器を捨て、平和を乞えばマーダ星人も武器を捨てるものと考えます!」
「対策が武器の破棄ですと? 正気かクノール議員! マーダ星人は我々を食うのですぞ!」
フランツさんの代理で出席していた次席参謀のクルーゲさんが、怒気を込めた声でクノール議員に反論する。
「我々を食らうマーダ星人は皆殺しにすべきなのです! その方法手段も問うべきでありません!」
「いや、武器を捨てた和平こそが唯一の道だ!」
このような両極論が飛び交い、私には無為と思える時間が過ぎる。
やがて私には、不謹慎にも眠気が訪れようとしていた。
……そんな時、
「そこに座っている、新しい軍師殿のご意見をお聞きしたい!」
「……え!?」
私に意見を求めてきたのはクノール議員。
唐突な出来事で、私の眠気が一気に醒める。
「小官の意見といたしましては、とりあえずは機雷の敷設によって、件の航路を塞ぐことを提案します!」
私は急ぎメインモニターを使い、できるだけ画像を多めに使って説明。
和平派にも抗戦派にも受け入れられるように努めた。
「ふむう、とりあえずはこの案を行ってみては?」
「ですね、それがいいかと」
意外なことに、会議参加者の殆どの賛意を得ることに成功。
その後、賛成多数で決議された。
「……では、この兼の実行責任者をカーヴ第2基地司令に任せます!」
「はっ」
言い出しっぺということで、私がこの機雷敷設の担当に決まる。
フランツさんもいないことだし、順当な人事であった。
その後、セーラさんの私室に呼び出された。
「カーヴ、今日は助かったわ。これからも私を助けてね!」
「ははっ、仰せのままに」
「あはは、ここではそんなに堅苦しくしないで!」
「は、はい!」
ロッキングチェアにて寛ぐセーラさんに笑われる。
その屈託のない笑顔が可愛い。
「あ、カーヴ。夕食はまだですの?」
「はい」
「では、食べていくといいですわ!」
その後、久々セーラさんに夕食に招かれ、館の方々とも談笑する機会を得たのだった。
ちなみに献立はハンバーグであり、残り物をブルーに持ち帰ると、とても喜ばれた。
☆★☆★☆
『エネルギー充填、大気圏用ブースター加圧85%!』
『主機接続開始、クリシュナ離陸可能!』
「離陸!」
正式名をアーバレスト第2基地と変更された通称A-22基地の運河を伝い、海上へと進んだところでクリシュナは離陸した。
海面に大きな波紋が浮かび、クリシュナの巨体が大空へと飛翔する。
『大気圏離脱。現在、第2宇宙速度域!』
私は戦術コンピューターの報告に頷いたあと、艦橋の窓から外を見る。
眼下に見る惑星アーバレストは赤茶けた星であった。
以前に私が不時着した時は、とても奇麗な青い星だった記憶があるのだが……。
「旦那、レイへのゲスト認可が下りましたぜ!」
「ああ、ご苦労さん!」
仕事が終わったブルーにコーヒーを勧める。
艦に残っていたインスタントではあるのだが、意外と味はイケた。
今回の作戦に伴い、A-22基地のレイ副指令にクリシュナに乗ってもらうことにしていた。
クリシュナにはゲストアカウントというものがあり、各種チェック事項を満たせば、一時的に乗艦することが出来たのだ。
「レイ、入ります!」
「どうぞ!」
レイが敬礼して艦橋に入って来た。
それはクリシュナの重力制御装置が働き、惑星重力圏からの離脱時の違和感が和らいだ頃だった。
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