第597話 義兄光秀


 ※昨日の投稿で、投稿する話を盛大に間違えたため訂正しました(昨日朝9時ごろ訂正)

 正しい話の並び方は、


 ・閑話 細川政元という男

    ↓

 ・修羅場開始(ドキドキワクワク)

   ↓

 ・義兄光秀(本日投稿した話)


 と、なります







 私としては光秀さんよく頑張った! 感動した! と、いう感じなのだけど。どうやら他の人にとってはそうではないみたい。ざわ、っと室内がざわめいた。


 まぁ、そりゃあ今は占領した苗木城の城主になったとはいえ、それ以前は大した武功も地位もなかった光秀さんが織田弾正忠家の娘を側室に迎えたいというのだ。喧嘩売っているとみられても仕方ないかしら。


 ただ。

 お義父様はたぶんこういう人間が大好きなタイプだ。


「よくぞほざいたものよな。……おぬしはどうしたいのだ?」


 お義父様が早苗さんの方を見る。ほほぉ、この時代に娘の意見を聞くとはなんとも先進的というか奇特というか。さすがは三ちゃんのお父さんか。


 大の大人でも冷や汗を流すお義父様の視線。それを受けても早苗さんは平然としていた。――きっと覚悟を決めているのでしょう。


 床に手をつき。

 しかし視線は外さないまま。

 早苗さんは織田信秀を睨め付けた。


「妾、光秀様に嫁ぎとう御座います」


 静寂が室内を支配する。

 でも、その静寂はすぐさま破壊された。


「……で、あるか!」


 どこかしら琴線に触れたのか、嬉しそうにカンラカンラと笑うお義父様。その様子に光秀さんはもちろんのこと、織田家臣団もオロオロしている。


 笑いすぎて呼吸困難になったのかぜぇぜぇと息をするお義父様。忘れがちだけど彼はまだまだ病み上がり。いくらポーションで病巣が消えても、衰えた筋肉や体力が回復するわけじゃない。まぁつまり、無茶するな。


「くっ、くくっ、はぁ、はぁ……。唯々諾々と苗木に嫁いだおぬしが、まさか儂に直接意見するとはな。――この男、そこまでの人物か?」


「三郎(信長)ほどではないでしょうが、出世することでしょう」


「で、あるか。なにかと可愛がっていた三郎と比べるとは本気のようだな」


 どこかイタズラっぽくお義父様が光秀さんを見る。


「で、あれば。おぬしは今日から三郎の義兄であるな」


「…………、……は、はは、有難き幸せ」


 嬉しいような大変なような。そんな感情を隠しきれないまま深々と頭を下げる光秀さんだった。


 いやぁ、しかし明智光秀の義弟織田信長かぁ。……ちょっと歴史を変えすぎじゃない三ちゃん? まだ1548年よ?


『すべての原因が何か言っている』


 まるで私のせいで歴史が狂いまくっているみたいな物言いであった。解せぬ。私ほど史実を重視し伝統を重んじタイムパラドックスに注意を払っている未来人はいないというのに。


『戦国時代生まれなのに未来人判定でいいんですか?』


 未来というか『現代』でも生きていたのだからセーフでは?


『あなたは設定がややこしすぎる』


 プリちゃんにだけは言われたくないわい。


 と、そんなやり取りをしていると、


光秀義息よ。あとで那古野城にも顔を出しておけ。早苗も久しぶりに三郎の顔を見たいだろうからな」


「ぎょ、御意に」


「三郎は少々気むずかしいが、まぁ、うまくやるがいい」


「はっ、重々承知して――いえ、とても器が大きい御仁かと」


 なんだか「なにせあの帰蝶を嫁にするくらいっすからね! 器がでけぇっすわ!」と光秀さんが言っている気がするのは気のせいかしら?


『実際あなたを嫁にしている時点で天下無双の器ですし』


 解せぬ。




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