第592話 冒険者ギルド(※一応戦国時代もの……で、あるはず)


 討伐した魔物から骨や毛皮、肉、魔石などを確保完了っと。


「というわけで、お肉は食用なのでいい感じに民へと分配。骨や皮、魔石などはそのうち活用するので倉庫に突っ込んでおいてください」


「委細承知。お任せくだされ」


 自信ありげに胸を叩く細川政元であった。


 ちなみに突っ込んでおく倉庫は大阪梅田ダンジョンの地下一階、ギルド本部予定地に設置してある。一種の空間収納ストレージなので容量はかなり大きいし、素材の自動振り分け機能付きだ。


『スキルで空間収納ストレージを持っているのはまだいいですが、そんな気軽に空間収納ストレージを増設しないでもらえません?』


 気軽にできるのだからいいじゃない。細かいことは気にするな。


『人間を名乗るならせめて人間らしい言動をしてくれません?』


 まるで私が人間だと自称する化け物みたいな物言い以下略。


 おっと、ギルド本部と言えば。


「政元には冒険者ギルドを作ってもらいましょうか」


「ぎるど、ですか?」


「この時代で言えば『座』ですかね?」


「……ほぅ。察するに冒険者を統轄する組織ですか。……なるほど。座(ギルド)に所属しなければ迷宮(ダンジョン)に入れないようにすれば、冒険者も自然とギルドに集まり、我らは上納金(年会費)を得ることができると」


 ちょっと、説明する前に理解するのやめて――いや、やめなくていいか。説明する手間が省けて楽だわー優秀だわー。


「ギルドには冒険者が討伐した魔物を買い取ってもらいます。値段は大体こんな感じで」


 テキトーな紙を取りだし、ダンジョンの中にいる魔物の種類ごとに買い取り金額を記載していく。

 もちろん私が作ったダンジョンなので、出てくる魔物の種類も私が設定可能だ。原材料に龍脈の澱んだ魔力を使うだけで。……マッチポンプ? 何のことか分からないわね。


「ほぉ、なかなかに高価な……。買い取り自体は承知いたしましたが、元手になる銭がないのですが……」


 魔物の素材を加工した品を販売できるようになればギルドの収入源になるのだけど、現状は上納金でしか稼げないものね。魔物の買い取りをできるほどの銭はない。


 ただ、このダンジョンの主目的は(当面の間は)澱んだ魔力の浄化なので、損得計算は後回しだ。

 というわけで空間収納ストレージからジャラジャラと銭を取り出す私である。


「はい。しばらくはこの銭を運営資金に充ててください」


「こ、これほどの銭を一つの座に……。何とも奢侈なことで……。いやしかし有珠アリス様の直系ですからな。このくらい豪勢でも不思議ではありませぬか」


 うんうんと頷く政元だった。有珠アリスさんがどんな人物だったのかちょっと気になるわね。


 いい機会だから昔話でも聞きましょうかと私が考えていると――通信用の魔導具が震えた。どうやら明智光秀さんからの緊急連絡らしい。







 光秀さんからの緊急連絡。

 とは言っても苗木城が誰かから攻められたとか、美濃東部で一揆が発生したというわけではなく。明智のみっちゃんがお義父様(織田信秀)に呼び出されたらしい。


 いやいくらお義父様でも斎藤家の家臣である光秀さんを呼び出すことなんて無理なので、表向きは『茶会でもせぬか?』という感じらしいけど。


 しかしこの明智のみっちゃん、お義父様の娘・早苗さん(つまり三ちゃんの姉であり、私の義姉)といい感じ・・・・になっているのである。さらに言えば早苗さんの元夫の居城(苗木城)を攻め落とした上で。


 う~ん、端から見れば鬼畜よね光秀さん。城を落とし、城主を追い落とし、その妻を手籠めにしたのだから。そりゃあ父であるお義父様も一言言ってやりたくもなるでしょう。


『光秀さんがそういう鬼畜っぽく見えるのは、すべてあなたが悪いのでは?』


 ははは、何をおっしゃるウサギさん。苗木城を攻め落としたのは向こうからケンカを売ってきたからだし、妻を残して逃げるような男には早苗さんは相応しくないし、光秀さんと早苗さんが仲良く(意味深)になったのは二人が求め合ったから。私は何も悪くないのである!


『そういうところです』


 こういうところらしい。解せぬ。




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