第552話 見つかっちゃった


「……ん~?」


「あれ~?」


 それ・・を感じ取った私と師匠は南の方角を見つめながら首をかしげた。その先にあるのは大坂本願寺。


 魔術的に見れば、大した実力者がいるわけでもない。

 大きな寺院だからそれなりに知識の集積はあるだろうし、親鸞聖人の『血』を受け継いでいるおかげか法主はそれなりの才能を持っているみたいだけど……それだけ。きちんとした(魔術的)教育を受けてきたわけじゃないのだから、大したことはできないはずなのだ。


 だというのに、世界のことわりすら揺るがしかねないこの乱れ・・は……。


「……死者蘇生カルぺ・ディエム?」







「私は悪くない」


「私も悪くない」


 誰かに向けて言い訳する私と師匠であった。


「まさかこんな魔術の衰退した世界で死者蘇生カルぺ・ディエムが実現するとは思わないじゃない?」


「ほら私って異世界の神様だから、この世界での出来事ってちょっと感知が鈍くなるというか」


「言うなれば小学生の夏休みの自由研究で核融合炉が完成しました、的な?」


「言うなれば産まれたばかりの赤ん坊をダンジョンに放り込んだら完全制覇しちゃった、的な?」


「だから、私は悪くねぇ」


「ゆえに、私は悪くねぇ」


『……反省しなさい』


「まじスマン」


「いとスマン」


 プリちゃんに対して完全降伏の完全謝罪をする私と師匠であった。謝っておいて何だけど、解せぬ。


 ま、でも、とりあえずは確認してみましょうか。


 大坂本願寺のある方角を視界に収め、鑑定眼アプレイゼルを起動。ちなみに極めに極めた鑑定眼アプレイゼルは千里眼的な力を発揮するのだ。


「……ん~、やっぱり術式が起動した形跡がありますね」


「この世界にそれほどの術者がいるとはねぇ。まさかアリス・・・ちゃんが――」


 師匠の言葉が中断する。


「げ、」


「やべ」


 なんというか……、見つかっちゃった・・・・・・・・



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