第26話 お金儲け


 とある日。

 光秀さんから挨拶があった。なんでも父様の家臣を辞めて、私の家臣になるらしい。


 うん、せめて事前に相談して欲しかったかなー。


 というか、いつ嫁ぐか分からないお姫様に仕える戦国武将ってどうなのさ? あれか? 夫が浮気したら浮気相手の家に光秀さんを攻め込ませればいいのか? ホージョー・マサーコーみたいに。


『浮気された怒りが夫ではなく浮気相手に向かう。女って恐いですよね』


 プリちゃんも設定性別は女性なのだけどね。


「えっと、光秀さん。いいのですか? 私、土地とか与えられませんけど」


「覚悟の上だよ」


「……給料は永楽銭でのお支払いでいいですか?」


「いや私が勝手に仕えると決めたのだから――」


「いらない、というのは無しですよ。煕子さんを困らせたくはないので」


「…………」


 愛する妻の名前を出されると抵抗できないのか光秀さんは永楽銭での雇用に納得してくれた。


 とりあえず。プリちゃんから色々な物価や各職の年収を聞いた結果、光秀さんの月収は2貫(20万円)となった。光秀さんは年齢的に大学生か大卒くらいだろうし、初任給と考えればこのくらいでいいはず。


 なのに光秀さんは戸惑っている。


「いや、いやいや貰いすぎだが? 私はまだ何の武功も立てていないのだが?」


「ご安心を。給料分は迷惑を掛けます――じゃなかった、働いてもらいますので」


「……お手柔らかに頼む」


 なにやら『煕子のため、煕子のため……』と繰り返しつぶやく光秀さんだった。本能寺フラグが立った気がするのは気のせいだろうか?





 お金がない。

 ビックリするほどない。


 いや薬の製造は順調だし、このまま行けば戦傷者だけじゃなく光秀さんも問題なく養っていけるというか、かなりの黒字を出してくれるだろう。


 ただし、薬を美濃(岐阜県)から堺(大阪)まで持って行って、販売し、売り上げをまた美濃まで持ってくるという手順を経なければいけないのですぐにまとまったお金が手に入るわけではない。


 家宗さんや隆佐君は戦傷者を養わないといけないこちらの事情を理解してくれていて、前金という形で永楽銭を渡してくれたけど……それでも足りないのだ、お金が。


 問題なのはノリと勢いで買っちゃった火縄銃十挺。値段聞き忘れ。さすがに一挺一億円とかはしないと思うけど、まだそれほど量産されていないはずなので三百万円くらいしても不思議じゃない。十挺で三千万円。永楽銭で三百貫。今井宗久さんが納品するまでに準備しておかないと……。


『後先考えないからこうなるのです』


 プリちゃんの正論が胸に突き刺さる私であった。





 さてお金儲けである。目標は三千万円である。


 とりあえず、治癒術の訓練をさせていた光秀さんや権兵衛さん、千代さんに城下町の屋敷で『養生院』を開いてもらった。表向きは治癒術の実地訓練。裏向きはもちろんお金儲けだ。治癒術で荒稼ぎしてやるぜー。


 もちろんお給金は支払うよ? クリーンでホワイトな職場を目指します。


 診察費は重病、重症の場合は少し高め。軽傷の場合は最低一文からの診察とした。ちょっとした切り傷くらいね。治癒術なんて怪しいものは中々使おうとは思わないだろうけど、一文くらいなら試しにと使ってくれる人が出るはずだ。


 あと『お母さんが病気だけどお金がない』的な人のために分割払いも導入した。利息は無し。


 そして迎えた初日。

 看板を出してみたけどみんな遠巻きにするだけで中に入ってこようとはしない。初日から大繁盛! というのは甘い見通しだったか……。


 とりあえず何日かやってみて改善が必要なら変えていこうと思う。


        

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