ギャルゲー世界にニューゲームしたら、ヒロイン全員攻略された記憶があって修羅場です……

ひつじ

第1話

 ギャルゲーの主人公になってみたいだろうか?


 俺はなってみたいと思わない。

 

 何せ、ギャルゲー主人公というものは、ヒロインを狙う組織を壊滅させねば〜だとか、ヒロインにかけられた呪いを解呪せねば〜だとか、ヒロインのトラウマを解消せねば〜だとか、ヒロインと結ばれるために障害を乗り越えなければならないからだ。


 しかも時間、生活、人生を賭けて苦難を乗り越えた先にあるのは、ヒロインと結ばれるという結果だけ。


 あまりにしょっぱい。しょっぱすぎて、無償と変わりない。


 そういうわけで、ギャルゲーの主人公、いわば愛の奴隷になってみたいとは思わないのである。 


 ……そう、思わないのに。


 立ち鏡に映るのは、執事服を基調とした制服姿の美少年。マッシュっぽい茶髪とこぼれそうな瞳というゆるふわ顔に、160cm台後半の華奢な体躯。


 最悪の監獄での生まれ育ちを感じさせない姿に、記憶と合致する。


「あぁ、俺、ギャルゲーの主人公だわ」


 『お嬢様と執事見習いの四重奏』


 お嬢様ヒロインと執事見習いの主人公が、次世代のリーダーを育てる学園で様々な困難を乗り越えた末、結ばれるという美少女ゲーム。

 

 俺、湊理玖みなとりくはそのゲームに出てくる主人公。古今東西のギャルゲー主人公に漏れず、ヒロインとのルートに入ると様々な困難に立ち向かう運命にある。


「ギャルゲー主人公とか無理! どうせなら、悪役とか、友達キャラが良かった! なんか楽そうだし!」


 そう嘆けども、事態は変わらない。冷静に今の状況を確認する。


 転生と似ているが、今まで湊理玖として生きてきた記憶はある。そしてその記憶によると、今日は入学式の朝。原作知識で言うと、ちょうどニューゲームの状態。


 ヒロインたちとのルートに突入しているどころか、まだ誰とも出会っていない。


 と、すれば、ヒロインたちと関わらなければ、俺は恋愛奴隷にならず、自分の人生を歩むことができる。


「なんだ、関わらなければ、気にすることはないのか」


 そう上手くいかないことを思い知る前の俺は、呑気にそんなことを考えていた。


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