115話 流れてゆく夢



 夕闇がお祭り会場に訪れる頃には、『屋台』での商売は大成功していた。

 かなりの額を稼げた俺達は内心でほくそ笑みつつ、在庫がなくなってしまった手前、そろそろ『屋台』をたたむ準備をする。


 今回だけで総売り上げは24万エソだ。

 内訳と素材費等、各人の貢献度を加味して、俺の取り分は3万エソ程だろう。

 すごくもうかった!


 こんなに一気に稼げるとは思わず、所持金の増大に歓喜していると、唐突に運営からの告知ログが流れた。



:イベント会場『祭り社』に夜のとばりが下りようとしています:

:みなさん、よろしければ中央の湖に向けて『妖精の包み灯籠とうろう』を放つ準備をしてください:



「お、例のイベントアイテム使用を促すログがきたな」


灯籠とうろうといえば川に流すものだけど……あの湖に繋がってる川って、『水のやしろ』から流れてるのしかないよね」


「あちゃー。そうなると今後は『水のやしろ』に人が集まりやすくなるかもね」


「屋台を出す側としてわぁー、立地的に有利になるかもねぇー……」



 さすがは百騎夜行の面々だ。即座にゲーム脳な意見をこぼす。



「天士さまっ、灯籠流しですよ! 妖精さんの!」


「綺麗な感じになるといいな」


「川に流した方が美しいかしら?」


「では、水のやしろまでおもむくでありんすか?」



 対するミナやリリィさん、アンノウンさんはかなりのエンジョイ勢な感想を漏らしている。



「あちきわぁぁああん、いいオトコがいる場所がいいわぁん♪」


「小官は美少女がいるのであれば、どこがミッションエリアでも任務を遂行してみせるであります!」


 二人だけ、よく分からない事を言っている。



:では『妖精の包み灯籠』使用までカウントダウンを始めます:



「え、ちょ!? 水の社に行くまで時間ないよね!?」


「このアイテムってここでも普通に使えるってこと?」


「天士さまっ! どうなのですか!?」


「あ、いや、ミナ……俺は何も知らないよ」



 準備もままならない状態で、俺達は宙に浮かぶ『風のやしろ』エリアにて『妖精の包み灯籠とうろう』を使用することになった。




「わぁー天士さま、これって……」



 隣でアイテムを使ったミナが、うっとりした顔で灯籠とうろうを見つめている。

 いや、この場にいる誰もがきっと同じような表情を浮かべているだろう。



灯籠とうろう流しと言っても、まさか空へ流すとはな……」


「これが、妖精流しね……」


 晃夜こうや夕輝ゆうきの感想は、イベント会場にいる傭兵プレイヤーたちの言葉を代弁していた。



 和紙によって作られた立方体、『妖精の包み灯籠とうろう』を使用すると、中から火が灯ったかのようにぼんやりと発光した。その色は灯籠それぞれで、青、緑、赤、黄、白、紫と色彩豊かな、優しい光だった。

 和紙の箱に封じられた妖精自身が、明りでも放っているのだろうか?


 さらに灯籠とうろうは空中へと浮かびあがり、少しずつ、ふわふわと上昇していくのだ。

 この手で本当に妖精を放っているかのように。



「あらぁん……ステキねぇん……」


「絶景であります」



 地平線はオレンジ色に染まり、紺碧の夜空が世界に降り注ごうとしているこの瞬間。

 消えゆく夕空を惜しむかのように、たくさんの傭兵プレイヤーが解き放った色とりどりの灯火が、淡い光の粒となって天へと吸い込まれていく。



 まるで星々が湖の上空に集まって行くように見えた。

 さらに、その輝きが湖面に反射して、より一層の美しい煌めきを演出している。



 その幻想的な光景を前に、先程までの傭兵プレイヤーたちによる喧騒は鳴りをひそめ、辺りは静まりかえっている。

 誰もが天へと昇る妖精の灯を目で追いかけ、感嘆の吐息をこぼしている。




 そんなしんみりとした空気の中。



「みんな、今日はおつかれさま」


 と、夕輝ゆうきが今回の『屋台』運営の功労に対し、ねぎらいの言葉を紡ぐ。



「こうして大きな利益を実現できたのも、百騎夜行のメンバー以外のみんなの協力あってのものだな」


「タロちゃん、ミナちゃん、アンノウンさん、ありがとうね!」


「RF4-you君とリリィさん、ジョージさんもご協力感謝してますー」



 晃夜こうやの賛辞に、ゆらちーとシズクちゃんが俺達にお礼を言ってくる。



「特にタロちゃんとジョージさんの合作、ビールの売り上げはすごかったね!」


「アンノウンさんの浴衣やジンベエも、とってもすごかったですー」



「あんなに細かいデザインが施された和服を売ってる傭兵プレイヤーは初めて見たかもな」


 晃夜の評価通り、アンノウンさんの売り出す浴衣には帯や柄、袖の作りがしっかりとしていたし、ちょっとした遊び心の入った奇抜なモノもあった。



「なんだかさー、このクラン・クランをプレイしてると毎日が夢のようって、思っちゃうときがたまにあるよね……」


「たしかに? 贅沢な事言ってるかもだけど……ちょっと学校って退屈だもんねー」


 女子二人が、空へとゆっくり流れていく『妖精の包み灯籠とうろう』をぼんやりと眺めながらそう呟く。



「勉強やだよねー……」


「わたしの学校なんかさぁー、まだ一年の一学期なのに、二年から理系と文系コースでクラス編成するから……この間、進路希望の調査表とか提出しなくちゃいけなかったんだよー」


「うわぁーそっちは早いんだ……」



「将来かぁ」



「みんなは夢とか? なりたいものとかあったりするの? あたし、まだまだそういうの全然考えてなくて」


「夢でありんすか……」



 ゆらちーのふとした疑問に、アンノウンさんがしみじみとした口調で反応した。



「おっ? その口ぶりだとアンノウンさんは何か夢がおありのようす」


「なになにー? 聞かせて欲しいですー」



 百騎夜行の女子二人に迫られたアンノウンさんは、柄にもなく照れた様子で、その夢を白状した。



「……ファッションデザイナーに……なることが夢でありんす……」



「なるほどね! だからアンノウンさんはクラン・クランで裁縫スキルを鍛えてるの?」


「クラン・クランでは実際に、自分でデザインしたものを作ったりできて……現実だと費用がかかってしまうでありすんからね。便利なツールとして、プレイさせてもらってるってわけでありんす……」



「わたしも服飾関係のお仕事に就きたいかもー」


「シズはアイテム作るの好きだもんね」


 ロリィタ服のね。

 よもや俺に着せたりしないよな?


 そんな感じでそれぞれの、漠然とした将来の夢を聞き出していくシズクちゃんとゆらちー。



「私は……まだ、そういうのはわからないです。でも、天士さまと一緒にいれたらいいなと思ってます」


 ミナの微笑ましい願いには、俺も一緒に思わずコクリと頷いてしまう。



わたくしは……きっとどこかに嫁ぐことになりますわ……」


 リリィさんの口ぶりは夢ではなく、まるで決定事項を述べるような感じだった。彼女が切なそうに妖精たちの灯火を目で追っているのを見て、少しだけ気になったけど……なんとなくこれ以上は踏み込んではいけない話題だと思い、俺は何も質問をしなかった。


 それはシズクちゃんたちも同様に感じ取ったようで、追求することはなかった。



「あらぁん、あちきも同じよぉん! 乙女ならやっぱり、ステキな旦那さんとの結婚よねぇん♪ まだ運命の漢とは巡り合ってないけれどぉん、あちきも早く花嫁になりたいわぁん!」


 そんな暗くなりそうな雰囲気を霧散させるように、元気よく自分の願望をまくしたてるオカマ。

 いい人見つけられるといいね。



「小官はっ! イラストレーターであります!」


 ふーん?

 ユウジが絵を描く方に興味があったとは意外だった。


「この手で自ら究極の美少女を描き上げるであります! そのために日夜、クラン・クランで気配を消し、あらゆる角度で美少女たちをスクリーンショットで収め、ポージングの参考にするのが現段階での極秘ミッションであります」


 サァーっとユウジの周囲から引いて行く女性陣。

 道理で影が薄いと思ったら……おまえはそんな事のためにクラン・クランをプレイしているのか……と、ユウジに呆れてしまう。


 だけど、その美少女に対するブレない姿勢や、理想形を自分で作ると意気込むポテンシャルだけは感心できた。



「あたしはシズと同じで服飾もいいと思うけど、髪型とか美容関係に興味があるかも? 美容師さんとか、なんかこーかっこよくない?」


 こうして聞いていると、なんだかんだ自分のやりたいことをみんなは持っていることがわかった。それがどんなにぼんやりとしているモノであっても。



 将来の夢か……。

 俺は、夜空に散りばめられた灯籠とうろうたちの明りを眺めながら思う。



 今まで自分の将来について考えた事なんてなかった。

 毎日、いろんな事に一喜一憂して、忙しない高校生活を過ごすのに手いっぱいだった。


 でも、もしかすると俺もそろそろ、そういう夢とかについての骨組だけでも作っておいた方がいいのかもしれない……。




「俺はゲームが好きだしな。ゲームを作ってみたいから、今のところはゲームプログラマーが目標だな」


「ボクは……医者か弁護士になりたいな。難しい道だろうけど、人の役に立ちたいかな」



 ゲーマーの晃夜こうやに、人助けが好きな夕輝ゆうき

 親友たちらしい夢だった。



 なんだろう……このじんわりと胸に押し寄せてくる不安は……。


 二人は穏やかな顔で、浮かびあがる灯籠の明りを、湖上の輝きを見つめている。その落ち着いた、どこか大人びた横顔を見れば見る程……俺はなぜか焦ってしまう。



 なぜ……?

 どうして、こんなにも不安になるのか。

 

 そこで、気付いた。


 俺の身体が、もしも戻らなくて。

 少女のままの姿で生きて、成長して、人生を歩むことになったら……。

 そんな将来は思いもつかなかった。


 いや、それはウソだ。意図的に目を背けていた可能性のうちの一つだ。



 今、こうして目にしている妖精の灯火の一つ一つが、俺の可能性を示す輝きだとして、一体どの輝きをこの手に掴めばいいのか。



 わからない。


 自分が何者なのか、男か女か不安定なこの状況で、自分が本当になりたいモノなんて見つけられるのだろうか。


 興味のある事、好きなモノ。

 きっと、みんなが口にしたように何でもいいのだろう。

 

 でも、自分の事すらわからない俺が、どうしてソレを見出すことができるのだろうか……。



 漠然とした未来に思いを馳せるより、現状の事で頭がいっぱいな俺には到底むりだ。


 しいて言うなら元の身体に戻る。

 それが俺の今の願いなんだろうけど……。



 まっすぐに未来を見つめる晃夜こうや夕輝ゆうきうらやましかった。



 置いて、行かないでほしい……。



 お前らだけで、先に進まないでほしい……。



 思わず、そっと晃夜こうや夕輝ゆうきの手をひっぱってしまう。

 いつも助けてくれた親友たちを見上げ、込み上げてくる感情を必死に抑える。


 不安、寂しさ、悔しさ。

 

 何気なく、みんなが語り合うその内容に……言いようのない不安が、先を見渡すことを妨げる暗闇が、俺にふりかかる。



「で、タロ。お前はどうなんだよ?」

「そういえば、タロの将来の夢ってなに?」


 親友たちが、何気なく俺に問い掛けた。


 ただ、俺は彼らの声に答えることはなく。

 下を向き、うつむいた。



「おう? タロ、どした?」

「もしかして、具合が悪い?」



 二人の心配そうな声音が、やけに遠い場所から聞こえてくる気がして……自分がそんな風に感じている事実が悲しくて、耐えられず、嗚咽が漏れそうになってしまった。


 そんな瞬間とき



 ドォンっと身体を揺らす程の爆音が、遠くから響き渡った。



「お、かなりでかい花火だな」


「うわぁー、綺麗だねぇ」



 親友たちの声に顔を上げれば――――



 湖の上空に、大きな大きな花火が咲いていた。



 いつの間にか妖精たちはミソラさんの元、宵闇の空へと帰ったのか、灯籠は消えていた。そして、そんな淡い光とは正反対の、激しく雄々しい大輪が夜空を支配していた。

 

 キラキラと飛び散る火花は、湖水に反射して一層その美しさを際立たせている。



「あれ、あの花火……なんだ?」


 打ちあがった花火は円形に広がり――――

 そのまま円を描き、光り続けながら湖へと着水する。



「なにあれ」


「どういうことだ?」


「湖面に浮かんでるぞ!?」


「消えないのか!?」



 周囲がどよめいている。


 それもそのはず。

 散りばめられた火の粉は、それぞれが宝石のように輝き、固形化しているように見えた。突如、湖の上にできたきらびやかな丸いステージ。

 

 そして、いくつもの花火が次々と打ち上げられていく。

 光り輝く嵐の中、キラキラ粒子のステージ上には二人の少女が立っていた。



「ん、誰だあれ……?」


「NPCか……?」


「おれ、あの子たち見た事あるんだけど……遠くてわからないな」



 傭兵プレイヤーたちの疑問に答えるように、いくつものスクリーンが何個も浮かびあがった。いろんな角度から映し出された彼女たちの正体は、遠目から見る傭兵プレイヤーたちにもこれでハッキリとわかった。


 俺にとっては、登場した少女が一体誰なのか、一目了然だった。

 

 間近でスクリーン内に映る彼女たちは、マイクをその手に、みんなへとよく響く美声で挨拶をした。




『クラン・クランで夏祭りを堪能している傭兵のみなさん、こんばんわー!』


『こ、今夜は突然ですが、わた、私達とっ! この……夏まつりを楽しみましょうね?』



 花火が舞い散るステージ上で、呼びかけてくる彼女たちを知らない人も、知っている人も。これから、彼女たちが何を行おうとしているのかだけは伝わった。



『さぁー元気にいっくよぉーっ!』


『は、はいっ! いきます姉さんっ!』



 ゲリラライブだ。



『あんたはもー、みんなといくんだよ?』


『はいっ! がんばります!』



 そして、歌い、踊りだしたのは双子姉妹のユニットアイドル、『クラルス』だった。


 これには、傭兵プレイヤーたちも驚かざるを得ない。




「あれ? あの子たちってアイドルじゃね?」


「なんかテレビで見た事あるなぁ」


「おいおい、クラルスじゃねえか!」


「もっと近くで見に行こうぜ!」


「おれ、ファンなんだよな! てか、うんええええええい! コラボするとかきいてねええええぞおおおお!」


「サプライズイベントってやつか!」


「もしかして、花火が打ち上がる日が限定されてるって、クラルスとのスケジュールを合わせた結果とか?」


「だとしたら、本物じゃねええええかああああああああ!」


「湖に直行だ!」


「ふぉおおおおおおお! 小官も、出撃であります!」



 切れのある動きで飛び跳ね、ポップな曲調に合わせて可愛らしく踊るクラルス。

 懸命に歌うルルスちゃんの姿を見て、先程まで落ち込んでいた俺の胸の内がスッと晴れていく。


 苦手なMCもなんとかこなし、ライブを敢行するルルスちゃん。目の前であんなに頑張ってる女の子がいるんだ。俺だって親友たちに喰らいついてでも、前に進まないと。


 

「俺も行く!」


 ユウジに続き、駆けだす。

 もっと近くで、輝く彼女たちを見たい。

 


 スクリーンなんて画面上じゃなくて、もっとルルスちゃんの頑張りを直で感じられる距離で!



「わたしも行きますっ天士さま!」


「日本のアイドルなんて興味がありますわ!」


「はらはら、衣装の参考にするでありんすよ」


「なんだか楽しそうねぇン! 騒ぎ出す中にイイ男が見つかるかもぉん!」



 なんて、みんなも俺に続く形で湖へと走り出した。




 そして湖に到着する頃には、クラルスは一曲を歌い終わっていた。



『さてさてー、お集まりのみなさまにご報告でーっす!』


『わたし、たちはあと、三曲だけ歌いま、す!』



『というわけでー! みなさんと一緒に楽しむには、少し距離がある気がしますねー!』


『そ、そこで……花火が落とした花弁の、う、上に乗って来てください!』


 クララちゃんとルルスちゃんが妙な説明をし出すと、運営からさらなるイベントログが流れ出す。




:花火から飛び出る星型スライムを捕まえると、クラルスと同じステージへワープできます:



 よくよく花火の散り際を観察すると、確かに星型のスライムが湖に落ちている。なぜか水に反発して浮く性質があるのか、キラキラスライムは湖面を跳ねたり、走ったり、とにかく移動をしている。


:星型スライムの上に着地すると、捕まえた事になります:



「うぉぉぉお! 何だかよくわからないが早いもん勝ちだ!」

「俺が先にアイドルの隣に辿り着いてやる!」



 プレイヤーが星型スライムの上に乗るとペタンとつぶれ、楕円形の床というか、池に浮かぶ葉っぱのような形になり、プレイヤーの足場となった。



:10秒以上、星型のスライムに乗る事ができれば、そのスライムは傭兵プレイヤーの領土として支配できます:


 つまり、湖面の上でもライブが見れるって事になるのかな?



:ステージへの参入権は三曲のライブが終わる前に星型スライムを4匹、自分の領域にすることで、アイドルたちと同じステージへワープできます:



「四個か! ってことは、支配する前に葉っぱのスライムの上を陣取ってる傭兵プレイヤーを押しのければ、自分のモノにできるって事か!?」


「おらおら、どけえええ!」


「一度、支配が成功すると支配権は変わらないっぽいぞ!?」



:4匹の星型スライムを支配した傭兵プレイヤーがステージに転送されると同時に、その支配された4匹のスライムたちも消えます:



「また新たに降り注ぐスライムの争奪戦が始まるってわけか」


 

 そうしてクラルスのいるステージを目指して、花火から飛び散る星型スライムを奪い合う、水上戦が幕を開けるかに思えた。



『本当にこっちに来れるのかー!? 疑問に思う方もいますよねー!?』


『だ、だからっ! 今から特別に、わた、私達が一人ずつだけ、指名します!』




「ふぁっ!?」


「なんだってぃ!?」


「指名ってクラルスからか!?」


「ここは目立ってナンボだ!」


「アピール!」


「派手なアビリティをぶちかませえ!」



 傭兵プレイヤーたちはどんちゃん騒ぎだ。

 なんかお祭りのクライマックスっぽくていいなぁ、なんてしみじみと思っていると、不意に名を呼ばれた。



『た、太郎ちゃん、どこですかぁ』



 その可愛らしい声はマイクで拡張され、その場にいる全傭兵プレイヤーの耳に響き渡った。


 百騎夜行のみんなが勢い良く俺の方へ、首だけ回してこっちを見てくる。

 RF4-youユウジにいたっては、『閣下! 閣下はクラルスとお知り合いなのでありますか!?』と詰め寄ってくる始末。


 ルルスちゃん……楽しみにしていろとは、こういう事だったのか。

 ビックリしすぎて、どう反応していいかわからないでいると、クラルスが映っていたスクリーンに、でかでかと銀髪美少女のポカーンとした顔が映し出された。


 お、俺だ……。

 恥ずかしくなって、思わず手で顔を覆い隠してしまう。

 しかし、指の隙間からルルスちゃんたちの様子だけはバッチリ見てしまう。



『あ、あの子です。運営さんっ! お願いします!』


 極上の笑みで俺を指名するルルスちゃん。



『あっ、じゃー私は隣にいる、なんだかおもしろそうな黒いアフロの人で!』


 さらにスクリーンに、色黒パンチパーマなミニスカメイドオカマも映される。



「まじか」


「あらぁん、可愛い子ちゃんのご指名とあっては、イクしかないわねぇん♪」


 動揺する俺に反して、ジョージはノリノリだった。





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