52話 風妖精の加護

 

 いざ、晃夜こうやと共に気合いを入れて足を踏み込んだとき、妙な違和感を覚える。

 その疑問の答えとばかりに、俺はふわりと浮いてしまった。

 


 先に行く晃夜こうやの後ろ姿を、焦りながら目で追いつつ自分の状況を把握する。


 やってしまった……。

 ミソラさんからもらったドレス『空踊る円舞曲ロンド』の恩恵を失念していたのだ。


 装備者の重力を六分の一にするということは、摩擦力の減少、いわゆる踏ん張りにくくなっている。しかも上空へと浮きやすい。ここにきて、ドレスの特殊能力が扱いづらいモノになる。



「タロ、いけ!」

「タロタローだっしゅー」

「タロン、とつげきん♪」


 俺の動揺を全く気にしていないかのように、背後で妖精達が元気よく号令の声を上げる。

 と、同時に背中を勢いよく叩かれたかのような衝撃を受ける。


「わっ!」

 

 その謎の力を受けて、俺は仰け反り気味に猛スピードで直進する。

 ヴァイキンめがけて。


「何だぁ!? ザコの銀髪からかかってくるとはいい度胸だなぁ?! 使えねえミナは隅っこで見学会かぁ?」


 思惑通りというべきか、あちらが敢えてこちらの戦法に乗ってきてくれたのかはわからない。

 どちらにしろ、ヴァイキンとヴォルフを二人一緒に行動させることを何とか阻止できたと言えよう。


 現在、少し離れたところで晃夜こうやがヴォルフを。

 俺がヴァイキンと相対することに成功した。


 ミナは俺と晃夜こうやの中間地点で、少し下がって様子をうかがっている。

 フォーメーションは万端だ。 


 だが、どうしよう。

 一気にヴァイキンへと距離を詰めている俺だが。

 この突進、止まれない。



「や、やばい!?」


「タロ、右? 左?」


 俺の悲鳴に反応して、後ろにひっついている妖精さんが変な質問をしてくる。


「正面からかかってくるとたぁ! なめてんじゃねえ!」


 ヴァイキンは吠えながら、金棒を俺へと振りおろしてくる。

 俺はとっさに、妖精さんに「右!」と思わず叫んでしまう。



 すると、今度は左から衝撃を受け、右にガクンっと飛ばされる。

 そのおかげでヴァイキンの攻撃を避けることができた。


「今のって、もしかして!?」


 俺は小太刀を地面にガッと突き刺して、なんとかその場でとどまる。

 地面が近くてよかったと安堵しつつも、すぐに肩につかまる妖精たちに確認する。


「タロ、軽い」

「わたしたちーかぜのようせいー」

「タロンッ風にのるんッ♪」


 なるほど。

 風妖精さんたちが、俺に突風のようなモノを浴びせて飛ばしてくれたと。


「風妖精さんたち、さっきのをまたお願い!」


 俺の号令とともに、背中を強く圧す風が突発的に発生した。





「チビがちょこまかと」


 ヴァイキンはリーチの長い金棒を握り、接近する俺に狙いを定めて押しつぶすが如く、上から下に振り降ろしてくる。

 

 その威力は先ほど見たものと変わらず、すさまじい。

 灰石でできた床は、金棒が激突するたびに割れて破片となり、エフェクトとして霧散していく。

 砕かれた地面は、小さな陥没かんぼつの痕をどんどん増やす。

 

「おらおらおらぁ!」


 だが、俺には当たらない。

 

 今の俺は、直線状の動きのみであるならばかなり素早く動ける。ドレス『空踊る円舞曲ロンド』と風妖精たちの突風アシストを受け、地を駆けずり回っている。

 正確には重力が六分の一になった俺が飛ばされまくっている、ではあるが。


 なんとか反撃として、手にした小太刀を地面へと突き立て、グルンっと半転して敵の足元に方向転換し奴のスネを切りつけたりもする。



「うおっっと。ちっとばかし、はええからって調子にのんじゃねえ!」


 俺の攻撃はヴァイキンにさほどのダメージを与えることはできない。

 それはわかりきっていること。


 しかし、これでいい。


 ヴァイキンはすっかり頭に血が上ったのか、金棒を立て続けに叩きつけてくる。



「しっ」


 こいつの攻撃を一心に引きつけ、その全てを見事にかわしてみせる。一撃でもヒットすればキルされるのは間違いないだろう。だが、これが最善かつ俺に見合った役目ロール

 


「ちょこまかとおお! うぜえ! うぜえぞ!」


 注意しなければいけないのは上方に少しでも飛べば、この身を宙にさらしかねない。地面近くでさえ、カクカクと視界が急激にぶれて、身体も揺れるこの移動法。変に衝撃を受けて空中へと体勢を崩されながら投げ出されたら、正直目が回りそうだ。


 だからこそ、顔が地面に着きそうな程の前傾姿勢で移動し続ける必要がある。


 さらに小太刀を下段に構え、その刀身を地に付けながら動く。これにより、摩擦力が発生して身体が浮きたちそうになるのを防ぎ、どこかに飛んでいってしまいそうな勢いを必死に制御している。

 この戦法を地奔ちばしりとでも名付けようか。


 一歩間違えれば隙だらけになってしまう事や、どうしても直角的な移動になりがちになるこのドレスと妖精さん達の支援。それでもレベル差、ステータス差を埋める素早さを手に入れるにはこれしかない。



「くそがぁああ! 『台風の眼ハリゲン』!」


 業を煮やしたのか、ヴァイキンがついにアビリティを使用してきた。


 今まで上下に金棒を振り降ろすという攻撃ばかりを繰り返してきたと思いきや、どうやらソレはこのアビリティを確実にヒットさせるための布石だったようだ。


 縦方向に叩きつけられていた金棒は、アビリティにより急遽、横へと振りはらわれた。



 そのため、俺は攻撃を避けようと思わず反射的に全力で上へとジャンプしてしまった。

 ドレスの効果のおかげで、その高さは4メートルを優に超え、宙をさまよってしまう。



 すんでのところで、かわす事はできた。



「妖精さん! 下へ!」


 素早く地表にもどるよう、妖精さんたちに号令をかける。


「つ、つかれたっ」

「休憩~休憩~」

「まったりタロん♪」


 しかし、まさかのここで妖精さんたちの息切れ。



 ピンチすぎる。

 ヴァイキンの追撃を空中で避けることはできない。

 


 ヴァイキンの狙いにまんまと乗せられてしまったのを後悔しつつ、浮遊する身体のバランスを制御しながら奴を見下ろす。


『一匹狼』の副団長さまは、ハンマー投げの選手ばりに身体をコマのように回転させながら、金棒を振りまわし続けていた。

 


 その破壊力は驚異以外のなにものでもない。近くで戦っていた何人かの傭兵プレイヤーたちすらも巻き添えにしている。



 しかし、あれは……もしかしたら。

 一度発動したら、なかなか止まれない類のアビリティ?


 そうと決まれば、逆にチャンスだ!



「天士さまっ」


 タイミング良くミナが叫ぶ。

 どうやら彼女も好機と見たのかもしれない。


 このまま徐々に高度を下げている俺が、真下で発生している攻撃の嵐に巻き込まれるのは必然。ならば、アビリティを発動しっぱなしのヴァイキンを攻撃するしかない。

 

 時来たれりと合図を送る。



「ミナ! ぶっぱなして!」



 ミナはMPが少ないからこそ、初級魔法しか放てない。

 MPにふるレベルポイントを、ほぼ魔力にふっていたからだ。

 だから、初級魔法にしては火力が高いが所詮は初級魔法。それしか使用できない1パターンのミナは『使えない』とののしられてきた。 



「天士さまっ、任せてくださいです!」


 だが、MPの最大値をアイテムで一時的に増やす事ができたら?

 それはもちろん、初級魔法以外も放てるようになる。

 

 しかも、ミナの魔力は高いから発動すれば威力も大きいはず。


 

 これが俺達の『妖精の舞踏会』に対する備えの一つ。

 

 そう、最も今のミナに相性のいいアイテムを俺は作り出すことに成功し、それを彼女に渡していたのだ。

 


 それはミケランジェロやそこらじゅうに転がっている『ミコの実』。

 それとスライムより抽出できた『原初の青プニ・ブルー』。

 そして、宝石を生む森クリステアリーより採取した『琥珀水』。

 


 これら三つを合成してできたアイテム、『蒼き琥珀種ブルメラ・シード』だ。



 ミコの実

【栄養価が高めの実】


原初の青プニ・ブルー

【モンスターの起源と言われる、最も弱いスライムが持つ純真な青。その特性は弾力性に富み、時に原初の力を引き出すこともあると言われている】


 この二つを合成して作れたのが、『青の種』だ。



『青の種』

【原初の青に染められた実は、実になる前、木になる以前、起源の姿へと変貌を遂げ、青い種へと退行した】


 最初はこんな素材、何の使い道があるかとぼやいていたが、宝石を生む森クリステアリーの木々から取れた『琥珀水』と合成すると化けた。



『琥珀水』

あめ色に輝く樹液。その美しさには宝石の森の木々に宿る魔力が関係しているとか】


 宝石を生む森クリステアリーで採取できる素材から、作成できるアイテムの数々を見てもわかるように、質が良く、かの森に生える木々には高い魔力が宿っているのが窺える。


 その樹脂ともなる『琥珀水』には、もちろん魔力がたくさん含まれているはず。そして、『琥珀水』の原初なる力を引き出したのが、『原初の青プニ・ブルー』の特性を引き継いだ『青の種』だったのだ。


 こうして『琥珀水』と『青の種』を掛け合わせ、生まれたのが『蒼き琥珀種ブルメラ・シード』だ。



蒼き琥珀種ブルメラ・シード

【宝石成る木々の魔力が、原初を呼び覚ます色によって潤沢に詰め込まれた種。この種が植物を咲かす事は絶対にない。しかし、ひとたび体内に入れれば、魔力が一時的に育まれるであろう。使用すると1分間、最大MPを30増やすことができる】



 わずか四つしかできなかったので、使いどころは限られているが今使わずにしていつ使う。




 ミナはその『蒼き琥珀種ブルメラ・シード』を素早く食べ、詠唱を始める。


「『黄金こがねになびく麦風の音よ。そのはしりを刃にせしめ、我がを守り敵の懐を討て』」


 彼女の詠唱を聞きながら、ふと不自然な状況に気付く。

 それは俺の落下速度が妙に遅くなっているということ。むしろ浮いているに近い。


 何故だろうと疑問を持ちつつも、ゆっくりと・・・・・落ちゆく俺の終着点は金棒の嵐。



 金棒による蹂躙か、ミナの魔法発動か、果たしてどちらが早いのか。

 


「……『麦穂揺らすフルール風乙女の護刃メイデン』!」


 その問いの答えは、少女の自信に満ち溢れた声が出した。



 ゴウッと風が鳴り吹き、周囲にいる傭兵プレイヤーたちが、麦穂のように揺れる。

 ミナが発動したのはスキル緑魔法Lv7で習得する魔法だ。



「風だ」

「かぜだ~!」

「たろたろ、風をあじわってくるん♪」



 大人しく休憩に入っていた風妖精達が急に騒ぎ出したかと思ったら、そのうちの二匹が呼びとめる間もなく、俺の傍を離れた。何をし出すかと思えば、妖精たちは地表で乱戦を繰り広げている傭兵プレイヤーたちの合間を、スイスイと飛び回って行くではないか。



 彼らが通り抜けた箇所は、ミナが起こした風よりも大きく傭兵プレイヤーたちの体勢を崩していった。



 ミナの魔法と妖精たちが発生させた風。

 その風達の収束地点は、俺の真下、つまりヴァイキンだった。


「タロ、まずい」

「え?」



 その様子を見ていた、俺のもとに残った一匹の風妖精が青い顔で呻く。


「ボクだけじゃ、支えきれない」


 一瞬何の事かわからなかったが、先ほどよりも速いスピードで地面が近づいている事に気付く。


 ……もしかして、妖精のおかげで落下速度が今までやけに遅かった?



「おっこちたら、風のこうげき、くらう……」


「だいじょぶー風おいしかったー」

「たっだいまん、たろんっ♪ 元気かいふくんっ♪」


 踏ん張る風妖精の隣、ニ匹の妖精がすぐさま俺の肩に戻るや否や、地に落ちるスピードが緩やかなものへと変わった。



「これも妖精さんたちのおかげだったのか……ありがとう」



 というか、これもこれで無防備な姿を空中にさらす時間が伸びているわけである。もはや空中に浮遊しているといっても過言ではない。

 そのため、この分だと着地する前に魔法は終わるだろうと判断した俺は、ある意味安心して下を見た。



「ぐッ、かッ、なんだこの威力はっ!」


 そこには『一匹狼』の副団長ともあろう御方が、無様に踊り狂っていた。

 

 というのも、ヴァイキンにはありとあらゆる方向から見えない風の刃が無数に被弾しているようだった。


 防具が弾け散り、頭や腕、足が何かにぶつかったかのように勢いよく仰け反る。


 だが、全方位からの攻撃が、彼が倒れることを許さない。

 後ろに弾かれたと思えば前に弾かれる。

 足を弾かれ膝を着こうとしたら、肩や腕を弾かれ、強制的に立たされる。



「グッ、クソッ、クッ!」


 まるで、糸で操られた人形のごとく、奇怪な動きをしている。



 というか、すごい威力だ。

 実はこの魔法、ミナとの連携を試みるためにも何度か見せてもらっていたりもしたが、ここまでの勢いはなかったはずだ。


 傭兵プレイヤーたちを実りある黄金の麦穂に見立て、その効果を増幅させたのはわかる。

 本来、『麦穂揺らすフルール風乙女の護刃メイデン』は、風が通り抜ける障害物が多いフィールドほど威力が大きくなっていく。今回は風の通り道となる障壁を、ミナは傭兵プレイヤーに設定したのだろう。つまり、ここには数多くの傭兵プレイヤーがいるわけで、風がかいくぐる障害物は自然と多くなり、威力も増えると。


 だが、それだけでは説明のつかない高火力になっている理由は。

 おのずと、俺の肩の上に座り、悲惨なヴァイキンの踊りをニコニコと眺めている風妖精たちに視線がいってしまう。


 ……おそらく風妖精この子たちの助力も加わっているのだろう。



「グソがッ!」


 一通り、ミナの魔法でダメージを負ったヴァイキンはよろめきつつも、なんとか立っていた。



 だが、そこへ先ほどのヴァイキンのアビリティに巻き込まれた傭兵プレイヤー達がすかさず、報復行為に走った。


「マジでガチで! 金棒ヤローはマジキルだから!」

「ふぉっふぉっ……若者が元気なのは良い事じゃが、年上は敬うが吉じゃよ」

「うおおおおっ!」


 哀れ、ヴァイキン。

 だけれど、同情はしない。


 周囲の攻撃を受け、滅多打ちにされた彼はあっけなく仰向けに倒れた。

 

 そんな彼を仕留めた傭兵プレイヤー達は何故か、こぞって俺の方をじっ

と見上げてくる。


 一人は頭の右半分が紫で左が黒と髪色分けていて、髪型もアシメントリーな奇抜でヒョロくチャラそうな男だった。

 もう一人はローブを目深にかぶっているが、顎髭あごひげが物凄く長くて、背格好的に老人だとわかる。


 最後の一人はどこにでもいそうな、平凡な人。



「くそがぁあ! なんだこりゃああ! 麻痺スタンか!」


 というか、ヴァイキン君、叫んでいるということはまだキルされていないと。

 チャラ男、おじいちゃん、モブキャラさんはトドメをさせと言わんばかりに、俺に目配せをしてくる。



「あ、えと……」


 俺が何か口にする前に、三人衆はクルリと背を向けた。


 そして、怒号響く戦場へとその身を躍らせていってしまった。

 まるで次の獲物を探しにいくか、とでも言うかのように三人の足取りは軽やかだった。


 きっとあの三人は、先ほどまで俺がヴァイキンと戦っていたのを見てくれていたのだろうか。



 獲物を横取りするのは俺達傭兵プレイヤーの流儀じゃねぇ。

 だけど、攻撃をされた落し前はキッチリつけさせてもらったぜ。

 

 三人衆の背中は、そう語っていた。

 


 俺は彼らの後ろ姿を見て、何だかジーンっと来るものがあった。

 あれが男ってものか。



 背中で語るとか、俺もしてみたい。



「まだ麻痺スタンはきれねえのか! どんだけ、状態異常スキルにポイ

ント注ぎ込んでんだ! 陰険いんけん野郎が!」


 地面に転がったまま喚き散らすヴァイキンのお腹に、俺はふんわりと降り立った。



「なっ、てめえ、どけ!」


 彼のHPバーはわずか数ミリ。

 それを確認した俺は、彼を見下ろして言う。



「図体だけがでかくて、つかえない人……」


 続いて小太刀を突き刺す。


「お前に比べて、ウチのミナは優秀な魔法の使い手だ」



『一匹狼』の副団長さんのHPバーが完全に消失するのを見送る。


 

 そして、ヴァイキンのキャラが爆散するエフェクトと同時に、うちの神官さんへと振りかえる。

 

「天士さま……」


 ミナは照れくさそうに微笑んでいた。

 


:ヴァイキンをキルしました:

:2250エソと、素材『氷狼の大爪』をドロップしました:


 

 キルのログが流れるや否や、俺達は互いに駆け寄った。



「やったです! やったですよ! 天士さまっ」

「やったな! ミナ、よくやった!」


 そして、どちらが、どちらとも言わずに抱き合う。


「天士さまのおかげです!」

「ミナこそ、魔法詠唱の問題をよく解けたな!」

「天士さまのお命がかかっていたのです! もちろんです!」



 思わず戦場であることも忘れ、俺達ははしゃいでしまう。

 だが、その意識は戦闘へとすぐに戻された。



「た、タロっ」


 それは晃夜こうやが洩らした、苦悶の声だった。


 声のした方向を見れば、晃夜が地面に伏していた。その上からヴォルフがサーベルで地面に縫いつけるように上から刺している。

 彼は舌舐めずりをしながら鋭い笑みを浮かべていた。


「コウッ!」


 晃夜こうやのHPは13/270とキルされる寸前だ。

 戦闘に夢中になりすぎて、晃夜こうやのHPバーを見ておくのを忘れていた。

 なんたる大失態だ。


 というか、PTメンバーの情報をチェックすると、『百鬼夜行』の副団長ユキオ君のHPバーも0になっていた。


 マズイ。

 これで晃夜こうやまでキルされたら、味方の数が5人に減ってしまう。


 しかし、晃夜のHPをすぐに削り切ろうとしないところからして、ワザと残しているのだろうか。

 ヴォルフはこちらに見せつけるように、ゆっくりと晃夜こうやに刃を深々と沈めていった。



「フンッ。少しは楽しめそうだな。次はお前達だ」


 狡猾な狼のごとく、俺達をねめつけるように見つめるヴォルフ。

 奴は、わざわざ俺達が晃夜の窮地に気付いたところでトドメを刺そうとしていたのだ。

 意地悪い笑みを口元に浮かべ、空いてる左手で拳を作り、ついに晃夜こうやへと振りかぶった。


 俺は即座に『翡翠エメラルドの涙+2』を使用し、緑のエフェクトが晃夜こうやのHPバーを全快にさせた。



「残念。まだまだコウは戦えるよ」



 さらにもう一つ、新しい『翡翠エメラルドの涙』を持ち、ぷらんぷらんとくゆらす。

 俺はヴォルフに向けて、挑戦的に笑った。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る