27話 戦乱の兆し
不思議な教会を後にした俺は、無事に家につくとスマホが点滅している事に気付く。
また、携帯を忘れてた。
『戦いの時代、乱世がくるぜ……』
さらに。
『
ログアウトしているのか? という質問が追加で送られてきた。
何か
『おうー』
急いで返信を打ち込む。
『イベントの告知は聞いたか? 〈妖精の舞踏会〉ってやつだ』
『聞いた聞いたー』
『お、なら話は早いな。俺達〈百騎夜行〉は契約都市をミケランジェロから、〈鉱山街グレルディ〉に移そうかと思ってな』
契約都市? 鉱山街グレルディ?
『ごめん、話が見えない。契約都市ってなに?』
『あぁ。そうだったな、悪い。
『おう』
『契約都市っていうのは、名前の通り
『なんか便利そうだな』
『そうだな。都市によるけど〈先駆都市ミケランジェロ〉なんかは、全傭兵団員の取得経験値+2%、だしな』
『それ、めっちゃいいな』
なるほど。
『それに、その都市と契約してれば、その都市の〈
『ってことは……ミケランジェロで契約してれば、ミケランジェロの〈
『
傭兵団に所属しようかな……。
『信頼度?』
『その都市の〈
へぇ。
なんか本格的だなぁ。
『まぁ契約都市に関してはメリットだけじゃないがな』
『む、なにかあるのか?』
『
『まじっすか』
『まぁそれでも、
『都市と契約してない
『維持費は運営に自動的に降ろされるんだ。だったら、どこかと契約していた方が得って事で、だいたいの
『お金がかかるのは少し痛いな』
『まぁな。あとは契約してる都市が危機に
『なるほど。でもそれはイベントっぽくて面白そうだな』
いくつもの
『それでだ。さっきも伝えたが〈百騎夜行〉は契約都市を変える』
『んん、なぜそれをわざわざ俺に?』
『早い話が、しばらくミケランジェロには行かないと思う』
『活動の拠点を〈鉱山街グレルディ〉って場所にうつすってわけか』
『そうだ』
『どうして、拠点を移すか聞いてもいい?』
『まず理由は一つ。〈妖精の舞踏会〉が開かれるとともに、各都市の主要施設、
そう言えばそうだったな。
『ミケランジェロの場合は……三公邸宅の奥に立地している〈王城〉だっけか?』
『そうだ……それでだ。各都市の支配者へアクセスが通ったってことは?』
『ってことは?』
『支配者に挑戦して、都市の支配権を奪うことができるようになる』
『な! そんなことができるのか?』
『あぁ、できる。クラン・クランの公式サイトにも発表されているが、各町や都市、国家の支配権を
『まじか……支配権って具体的に言うと?』
『そこらへんはまだ詳しく発表されてないが、〈
『す、すごいな……』
それが本当だったら、
『つまりだ。一週間後の〈妖精の舞踏会〉ってイベントの開催は、他傭兵との交流を深めるというお題目はあるものの――』
『実質的に、支配権をめぐって
『そういうことだ』
表向きは友好、新たなる仲間との出会いに祝杯を。
裏では闘争の鐘が鳴り始める。
戦乱の世の幕開け……。
わくわくはする。
だけど、それじゃあ、妖精たちはどうなるんだ。
少し彼らと接してみてわかったことは、妖精達は平和と歓喜を好んでいそうな種族だった。
過去に起きた妖精族と人間の戦いのせいで、ただでさえ、人間たちは恐ろしいって疑念をもっているのに。
争いが勃発しそうな人間界に、強力な素材採取に繋がる妖精族の出現……再び妖精の利用を画策する
そんな状態で、俺は賢者ミソラさんの信任を得て、妖精をお披露目するかもしれない。
不安が
ミソラさんも妖精たちも所詮はNPCに過ぎない。だから彼女たちが人間達の争いに巻き込まれ、どうなろうと、それは所詮ゲームシステム内で起きただけの事だ。
だけれど、陽気に語りかけてくる妖精たちと出会って、可愛がってくれるミソラさんと一緒に過ごして、そう割り切れない何かが俺の中でできてしまった。
『大規模の〈戦争〉が多発する。それはつまり、武器や防具のメンテナンスに必要な鉱石類の素材が大量に消費される可能性がある』
『おう……』
『〈鉱山街グレルディ〉を契約都市にすれば、
『一儲けするってわけだな?』
『そうだ。俺たちは各鉱石系などの値上がりを考えて、今のうちにレベル上げも兼ねて、金策もするってわけだ』
『なるほどな……』
『契約都市を移す、二つ目の理由は……最近、変な奴らに俺と
『む、絡まれる?』
『そうだ。なんだか、お前絡みの連中らしいのだが……何か知らないか?』
夕輝や晃夜に絡む?
百鬼夜行のグレンくん以外で?
『グレンくん?』
『いや、百鬼夜行の奴らじゃない……なんというか』
『なんというか?』
『この間の賢者ミソラの一件で、そのタロ。お前に会いたいって
そうか。
賢者ミソラさんと一緒に歩いていた俺には何かがあると踏んで、探り近づいてくる
既に、俺が何か妖精との繋がりがあると気付いた傭兵もいるかもしれない。
警戒度を上げないといけないな。
それに夕輝や晃夜に迷惑をかけてしまっていたとは……申し訳ない。
『それは、ごめん。迷惑をかけちゃったな』
『いや、別にいいんだ。だが、奴らの様子からすると少し危険な気もしてな……こう、ロリ、犯罪臭とまではいかないんだが……』
晃夜が言いにくそうにしていたのは、こういうことか。
やばい奴らなのか。
『
『いや、実害はないんだがな……とにかく、そういうことで俺たちはしばらく活動拠点を移す』
『……なんだか悪いな』
『いや、本当に
『おう』
『でだ、さっき話した奴らの事もある。タロをミケランジェロに残すのは心配だ。俺達の
『!』
『
『……それは正直、かなり嬉しい誘いだ』
最初は錬金術なんてお荷物スキルって見ていた、ゆらちーですら俺の入団を戦力として誘ってくれるのは凄く嬉しい。
だが、
晃夜たちは、ただでさえ自分たちよりも格上の
〈妖精の舞踏会〉が開かれ、支配権をめぐる戦いが始まり、状況を見定めてから入団を決めた方がいいと思った。
『だけど、まだ所属できそうにない、かな』
『そ、そうか……』
『うん』
『わかった。でも俺達はいつでもタロを歓迎するからな。それに同じ
『おう、助かる。そっちも遠慮なく言ってくれよな。すぐに、錬金術士さまが助太刀にいく』
『頼むぜ、小さな錬金術士どの』
『小さいは余計だ』
『普通な錬金術士の方がよかったか?』
普通人のあだ名をいじってくる晃夜。
『だぁーーー!
『怖いなw』
微妙にちゃかされて、晃夜とのラインのやり取りは終わった。
今後、考えることは多そうだが、何が待ち受けているのか、やはり楽しみだ。
イベントまでできる事を、準備をしておかないといけないな。
さて。
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