6話 スライムと最弱な俺


「なんで、太郎はミシェルの美少女になってるんだ?」


 俺達と血の繋がっていない・・・・・・・・・妹、北欧出身のミシェルを引き合いにして姉は問い詰めてくる。



「…………」


 だんまりしてしまった俺に、姉はいぶかしむように首をかしげる。


 失念していたが、姉はおれや妹の事になると多少、過保護な面がある。


 今、ここで姉に俺の身に起きた性転換事件のことを言えば、おそらくすぐさま病院へと連れていかれるだろう。

 そうすべきだし、ちゃんと伝えるべきなのだろう。


 

「太郎?」



 だけど、正直。



 怖い。

 

 

 実際に目の前で俺は実物おれを見ているからわかる。 

 どう見ても、どう考えてもは女の子、かもしれない。

 

 でも、だからといって。十六年間を俺は男として生きてきたんだ。


 まだわからないじゃないか。 

 治るかもしれない。

 

 だからこそ、病院なり市役所なりで身体の検査を受け、女性だとハッキリ認定されるのが嫌だ。

 万が一、この症状は決して治らないと、死刑宣告されるかもしれないのが怖くて堪らない。



 前例は日本で六人だとニュースで報道していた。 

 俺の他に、既に性転化してしまったヒトがいるから多少は安心ができる。だが、戻れるのか? 戻れたのか?


 それに見た目、小学生中学年をやっと超えたあたりの俺は。

 

 学校はどうなるのだろう。

 中学からの親友、晃夜こうや夕輝ゆうきはこの姿をリアルで見て、どう反応するだろう。

 


 全てが、怖い……。




「……バグ、かな」


 姉の質問にぎこちなく答えてしまう。


「そんなバグはベーターテスト時にも聞いたことがない。実は中身はミシェルです、とかそういうドッキリ?」


「いや、ミィはゲームしてる時間ないでしょ。父さん達と、今はトルコにいるんじゃなかったっけ?」



「……太郎、私に何か隠し事はしてないか?」


 現在、姉は大学生という身分でありながら、とある分野でそこそこ名の知れた社会人でもある。生活費および、学費も全て自分の収入でやりくりをしている優秀な姉だ。

 そんな姉を持てて誇りに思える半面、しばらくは心配をかけたくないなという思いが胸中に浮かぶ。


 姉への配慮を、現実から目を背けるための理由にしてしまった……。



「いや、別に隠し事はしていない……」


 暗い感情にフタをするように、俺は姉へ至極しごく平静な顔を向ける。


 

 もう少し、もう少しだけ。


 今はまだ、ウン白をぶちまけてしまった、茜ちゃんの事も。

 自分の身に起きたことも。


 受け入れるなんてできない。



 俺を疑うように見つめていた姉だが、弟の顔を眺めるのも飽きたのかあさっての方向へ視線を移した。



「太郎がそう言うなら、わたしはタロの判断を信じるとしよーか」


 どこかひっかかりを覚える言い方ではあったが、姉なりに納得してくれたようだ。

 その後、姉はオンラインゲームにふさわしい一言を溜息とともに放った。



「レベル上げにいこっか」




 というわけで。

 俺たち姉弟きょうだいは先駆都市ミケランジェロから出て、見渡す限り緑一色のフィールドに立っていた。


『始まりの草原』と呼ばれたこのフィールドは、初心者が最初に冒険の舞台として活動する場所らしい。


 風に波打つ草、緑のかぐわしい匂い、旅立ちにふさわしい情景だ。

 


「じゃあ手っ取り早く、PTを組んでレベルを上げよう」



:PT申請が『シン』より届いています:



 イエスorノーの選択肢が浮かび上がったので俺は迷わずイエスをタップ。

 PT申請を受諾すると姉のステータスの一部が表示される。



 シン


 レベル11


 HP280

 MP90


頭 風鳴りのティアラ

胴 ブラック・ハインドレザーアーマー

腰 放浪者のレイド

腕 ブラック・ハインドアーム

足 ブラック・ハインドレッグ


武器 風鳴りの双剣

 

 

 レベル11で……HPが俺の9倍以上ある。

 PvPでこんなのとレベル1が戦ったら瞬殺なのではないだろうか?

 

 とりあえず、PTを組むとアクセサリ以外の装備も確認できることがわかった俺は、装備を詳しく調べてみることにする。



「姉……」


「なに?」


 俺が装備している武器、ローヌの木刀がレア度0に対し、姉の装備している風鳴りの双剣はレア度4だった。

 

 なので純粋な疑問を述べる。



「武器のレア度が4ってどうなの?」


「あぁ、現時点では最高峰だろう。それも明日には更新されるだろうけど」

 

 ひぃ。最高峰。先ほどのバカップルの反応からしても、姉はもしかしてベータテスターの中でも屈指の強者?


 ミケランジェロを姉と歩いている間、やけに姉をチラ見する傭兵プレイヤーがいたけど、単に美人アバターだからと思っていたが、もしかして別の理由があるのでは?


 結論を言うと、姉とPTを組んでわかったことは、姉がオンラインゲームにガッツリはまっているということであった。



「そんなことより、ホラ。あの子を倒してごらん」


「ん」


 姉が指す方を注視すると、背の高い草に埋もれて、水色の物体がもぞもぞしていた。



「なにあれ」


「モンスターだ」


「名前とか表示されてないんだけど」


「戦闘状態になれば表示されるから。稀に表示されないのもいるけど」


 戦闘状態か。


「あれはクラン・クランで一番弱いモンスターだ。その腰に吊るした木刀でも倒せるだろう」



 後半はクスリと笑って、俺の装備を小馬鹿にした姉。


「見てろよ」


 少しムッとした俺は、ローヌの木刀を正眼にかまえて水色の物体を見据える。

 ターゲットの大きさは直径にして40cmほどの小さな生き物だ。 

 外見はゼリーのようにプルプルしていて、フォルムは丸い。


 おれは不意打ちとも言える形で、一気に距離を詰めて握りしめた木刀を上段からソイツに振り下ろした。


「キュイッ!?」

 

 木刀はモンスターに接触した瞬間、ゼリー状のその身体に深く食い込み、そして柔軟性に富んだ性質上からバインッとはじかれた。


 その衝撃に反応できず、握った木刀は俺の頭へと吸い込まれるように返された。

 

 ゴツッ。


「うわっ」



 痛みはないが衝撃はあり、俺は頭を押されるようにたたらをふむ。

 そこへ、腹部に衝撃が走り、更に後方へとよろめく。


 水色のゼリーモンスター、『スライム』が間髪いれずに反撃をしてきたようだ。


 点が二つ、つぶらにも見える瞳でこちらを油断なくうかがっている。

 口に該当する部位は見受けられない。


「こいつがスライム……」



 これがVRMMOの戦闘か……身体の動かし方はリアルの世界となんら変わらず、違和感がまるでない。

 俺は木刀を構え直して、姉を横目でうかがう。彼女はポカーンとした顔でこちらの様子を眺めていた。


 何か驚いているようで、協力してくれそうな雰囲気ではない。 

 元より、このクラン・クラン最弱のモンスター相手に姉の助けを借りるつもりは毛頭ない。ゆえに次の攻撃を放つ。



「せやっ」


 再び、スライムにめがけて木刀を打ち付ける。 

 見事にヒットするが、またもやその弾力性によってボインっとあさっての方向に木刀がはじかれる。そして体勢を崩した俺の腹部へと、スライムが体当たりをかます。


「ぐっ」

 

 思わずしりもちをついてしまうが、すぐに立ち上がる。


 すると今度は顔めがけて、スライムが飛びついてくる。


 間一髪、しゃがんでかわす。

 

 


 気付けば俺のHPが30 → 20へと減少している。

 最弱と言えどあなどうなかれ、か。


 

「そいやっ」


 今度は横一閃いっせん


 上から振りかぶるから、スライムが地面に押さえつけられ、ボインっとはじかれるのだ。横からなら反発されることなく吹っ飛ばすことができるはず。

  

 予想通り、スライムは木刀のえじきにな…………らなかった。

 ペニョンと自身の身体を変形させ、体高を縮めたのだ。

 そのため木刀は空振りに終わる。



「なんだと!?」


 そして、俺の木刀を振り切った隙だらけの体勢めがけて、スライムは突進をかましてくる。


「くほっ」


 肩に軽い衝撃が走る。HPが20 → 15に減った。



 これが……クラン・クラン最弱のモンスター『スライム』。

 





 強すぎる。

 



 最弱でこの難易度。


 

 だが、ウン白という史上最悪の経験を持つ俺は、この程度では決して折れない、屈しない。

 スライムは俺に攻撃を終えて地面へ着地すると、そのまま次の攻撃へとつなげてきた。


 今度は脚に狙いを定めてきているようだ。

 

 ならば。

 おれは左足を軸に右足を引く。



「ウオオオオオッ」


 スライムの衝突に合わせて蹴りをお見舞いしてやるのだ。 

 そして蹴りあげられ、空高く舞ったスライムは軌道修正ができない。ゆえに着地地点を狙って木刀で叩き潰す。


 そういう計画だ。



 渾身の蹴りとスライムが激突する。

 大きく舞い上がるはずのスライムの身体は――――



 俺の右足をはじいた。


 

 そう、柔らかいスライムの体当たりに俺の蹴りは競り負けたのだ。 

 足は衝撃によって後方へと引きずられ、その勢いのまま、前方へと顔から地面へダイブ。

 

 The 転倒。



「なん……だと」



 HPは15→11へと減少。

 や、やばい。


 完全に転んでしまったため、スライムの姿を一瞬見失ってしまう。

 それよりも早く立ちあがらねば。


 体勢を立て直そうと膝立ちの状態になった刹那。

 視界が水色に、いやスライムによって支配された。


 草の陰から身を躍りださせたスライムの顔面アタックをくらったのだ。



「ふへっ」

 

 俺は仰向けに草原へと大の字に倒れる。


「キュイイイッ」


 スライムが歓喜の声をあげる。

 これが、勝者のおたけびか。


 そんな事をぼんやりと思い浮かべながら、俺は綺麗な青空へと目を向けた。




 流れる白い雲に、無限に続く蒼穹。



 なんて大きな空なんだ。


 それに比べて俺はなんて矮小な存在なんだ。


 これが冒険か。




 しょせんウン白ヤローは最弱のモンスターにすら勝てない。

 

 もういいや。

 




 おれの残存HPは5。


 おそらく次の一撃で俺のHPは0になるだろう。


 死を覚悟して目を瞑る。






「おい、太郎。なにあきらめてるの」


 俺にトドメを刺そうとしていたスライムに、姉は蹴りをかました。

 するとスライムはべチャッと破裂するように、一瞬で液体化して消滅した。


 さすが11レベル。


「いやぁ……姉。これは無理だわ。1レベルにスライムは強すぎる」


 そよそよとほほをくすぐる緑のカーペットに横たわりながら、俺は強がることなく、姉に正直な感想を述べる。


 ぶっちゃけ勝てる気がしない。



「いやいや。1レベルでも3回ぐらい攻撃を当てればスライムなんて、耐久力を失って破裂するんだけど……」


「へ?」



 姉はいぶかしそうにこちらを眺める。


「いちおう聞いておくけど……」


「あ、うん」


「太郎、ステータス教えてもらってもいい?」



タロ レベル1


HP30 

MP20 


力  1 

魔力 14 

防御 2 

魔防 8 

素早さ18 

知力 27


 そのまま伝えると、姉は少々考え込み始めた。


かたよりすぎている……」


 やはりそうなのか。


「通常、初期ステータスは完全ランダムなのだけど、全てのステータス合計値が120になるように設定されてるの」


「ほうほう」


「太郎の場合……力と防御が異常に低い」


 異常言われた。


「そうですな」


「おまけに素早さが高いのはいいとしても、ゴミ捨て、コホン。ゴミステータスと呼ばれている知力がやたら高い」


「知力ってゴミなんですか」


「ゴミね」


 きっぱり言い切る姉に、少々げんなりし始める。


「知力の使いどころがベータテスト時では発見できていない。今のところ戦闘にも反映されないステータスだし。唯一判明してるのが、ゴミスキル『錬金術』は知力が高いと錬金の成功率が上がりやすいだとか」


 おお。錬金術は知力が高いと成功しやすいのか。

 知力も捨てたもんじゃないな。タブン。


「太郎の場合、力がなさすぎてクラン・クラン中の最弱モンスターであるスライムを倒せないといったところ」


「そんなのありですか」


「わたしもそんな傭兵プレイヤー、初めて見た」


「うはー」


 初めてオンラインゲームをするから、どこかでつまずくのではないかと不安だったが、まさか最弱のモンスターを倒せないとか。


 ウン白に引き続き、残念無双すぎる。

 俺が絶望に打ちひしがれていると、姉が肩に手をポンと乗せてきた。



「ドンマイ」


 笑っていた。

 姉は地味に弟のオンゲーデビュー最弱な状況をおもしろがっているようだ。


「……」


 そんな姉をジト目で見つめ返す。



「まったく、世話のやける弟だこと」


 俺の恨みがましい視線に耐えられなかったのか、姉は呆れるように溜息をつき何やらウィンドゥをいじる素振りを始めた。


「ほら、これあげる」


:シン Lv11 より、『小太刀・いさめのよい』を取引きが持ち出されています:

:受託しますか?:


 とシステムログが流れてきた。


「おおお、くれるの?」


「ええ。クラン・クランはエソ(通貨)をプレイヤー間で譲渡することはできないけれど、装備品やアイテムは他人と取引できるの。装備条件ステータスが力1と知力14だったから珍しい武器だなって思って、そのままアイテムストレージの肥やしになっていたけど、まさかこんなところで役に立つなんて。タロの木刀よりは攻撃力が高いと思う」



「恩に着るぜ、姉」


「気にしなくていい。それ相応の対価はのちほどもらう予定だから」


 対価がどのようなものなのか、ちょっと嫌な予感はするが、今は背に腹を代えられない。貰える武器は受け取っておこう。


 取引を受諾し、さっそく『小太刀・諌めの宵』のステータスを見てみる。




『小太刀・諌めの宵』レア度2


装備条件 力1 知力14


攻撃力+10(+1) 技量補正G




 見た目はまんま小太刀だ。柄の部分は紫色の刺繍で握り布が巻かれており、鞘は黒い。刀身含めて、全長40cmあるかないかぐらいの長さだろう。


 

 装備条件が力1なのにたいして攻撃力が+10もある。

 ローヌの木刀が+2だったことを踏まえると、5倍だ。

 しかもレア度が2。

 

 技量補正Gとは……よくわからないが、扱いが上手になれば補正がつくとか?

 とにかく、これは素直にうれしい。



「姉、ありがとう」


「いいわ、弟」



 その後、俺たちは数回の戦闘をして、8匹ほどスライムを倒すことに成功した。

 姉から譲り受けた小太刀はローヌの木刀よりリーチは短くはなってしまったが、スライムの動きを見定めて小太刀をふるえば、スライムを切れる威力もあり、大いに活躍した。



傭兵プレイヤーが多いね」



 さすがに実装初日ということもあって、この初期フィールドの平原には多くの傭兵がモブ狩りに勤しんでいたため、なかなかモンスターとエンカウントできなかった。


 なので少し時間がかかってしまった。


 スライムを8匹倒したところで、俺のレベルが2に上がった。



 レベル2になるとレベルポイントが100、スキルポイントが15もらえた。


 称号「老練たる少女」の効果でスキルポイントが3倍もらえているはずだから、通常は5ポイントなのか、などと思考をめぐらす。

 

 レベルポイントとはそのポイントをステータスに好きにわりふって、自分のキャラを強化するポイントだ。

 スキルポイントはスキルにふって、スキルLvを上昇させ、新しい技などを覚えることができる。



「太郎、レベルアップおめでとう」


「あ、うん」



 俺はさっそく自分のステータスにレベルポイントをわりふっていく。


 やはり、せっかく手に入れたスキル『錬金術』の錬金成功率を少しでも上げたいので、知力を重点的に上げる方針にする。他には、元から高い素早さを伸ばそう。力や防御は今のところ装備条件的にも上げる必要がないのでそのままでも大丈夫だろう。


 防御などは攻撃を回避する素早さがあれば、上げる必要なんてない。ちょっとそんなロマンな展開を狙うのもありではないだろうか。




タロ Lv2


HP40(+10) 

MP25(+5) 


力1(+0) 

魔力14(+0) 

防御2(+0) 

魔防8(+0) 

素早さ53(+35) 

知力77(+50)



 よし、次はスキルポイントだ。

 もちろん、ゴミスキルと言われようが俺は錬金スキルに振るつもりだ。



「そういえば太郎はスキルを習得しているの?」


「うん、錬金術を習得したよ」


「そのキャラ、消したほうがいい」


 即答だった。


「そもそもバグで女子キャラとか、リアルの身体と感覚が違いすぎて違和感あるでしょう。やっぱり作り直した方がいいと思うけど」



 消しても、今のところは女子キャラしか作れないのは変わりない。 

 なぜなら、クラン・クランのシステムでは・・リアルが現時点では女体と判定されてしまうからな……。


 作り直したキャラが、どうしてまた女子キャラなのかと問われるのはめんどくさい。



「せっかくだから、これでやってみるよ」


「でも、それは……」


「まーまーしばらくは好きにさせてよ」


「太郎のことを思って、私は助言しているつもりなのだけど」


 しかめ面をする姉。


「わかってるって」



「むぅ。じゃ、じゃあ、その、なんだ」



 しかし、急にそわそわしだす姉。


「ん?」


「ちょっと、こっちにきてごらん」


「なに」




 姉はその場で正座をした。


「ここに座れ」


 その自身の膝の上を手でトントンとする。



「えー」


 なんとなく姉の意図は読めた。



「いいから」


 有無を言わさぬ強い視線を浴びせてくる。


「はいはい……」


 俺は指示にしたがって、姉の膝上に腰を落とす。



 すると姉は俺を後ろから抱き寄せ、髪の毛をなでてくる。


「ちょ、頭はやめてよ」


「昔は太郎が落ち込んでいる・・・・・・・と、よくこうやってあげたんだ。覚えてる?」


「覚えてるけど、別に俺は落ち込んでないから」


 姉は俺の不平を無視して頭をなで続ける。



「ふぅ、いい子いい子」



 超、いこってる姉。





 ……。



 何年ぶりだろうか。姉にこうされるのは。

 小学生のとき以来ではなかろうか。


 広い野原で姉になでなでされるとか、懐かしい感覚が少しくすぐったい。



「ふぅ……」


 おもわず俺まで、いこってしまう。

 この大空の前ではウン告白とかちっぽけなモノに思えてきた……。



「やはり。太郎はセクシャルガードをしてないな?」


「セクシャルガード?」


「そうだ、戦闘行為以外では身体に接触できないシステムだ。また許容部分を任意に設定したりもできる。しっかりやっているのか?」


「いや、やってない」


「まったく。私以外には全部位をセクシャルガード設定しておきなさい」


「えーあとで適当にやっておくよ」


 全部位をセクシャルガードとか、肩もポンと気軽に叩けないわけで、つまらなそうだわ。

 一部分以外は解放しておこう。



「むむむむ……」


 うなる姉と共に、俺は心地よい風が吹く大草原の中で、しばらく蒼空を眺めていたのだった。


 ウン告白をかましてしまった茜ちゃんを想いながら……。








〈クラン・クラン〉


【公式サイト 傭兵たちの宴会 掲示板】


(ジャンル ●生活系)




スレッド名 【いやし】名所スポットのご紹介【風景】



1:クラン・クラン内の名所スポットを知りたい! というわけで立ててみました


2:お、いいね。俺も知りたいわ


3:名所言ってもなぁ……けっこうあるよな。ちょっとした場所も綺麗だし


4:名所つったら、やっぱ『月光樹の丘』とかいいと思うぜ


5:確かにあそこはいい


6:それって、天候が『月夜』の時のみ、咲くっていう木がある丘のことか?


7:それそれ


8:おれ、そこで告白してみた


9:フラレ乙w


10:>>9 見事成功しますたwww嫉妬乙wwww


ここからしばらく、非クラ充とクラ充の醜い応酬が繰り返されるのでカット





46:名所スポットの話題に戻そうぜ。そういうのはカップルスレでもやってくれ


47:ですな。他に名所と言ったらどこだろうか


48:癒しな風景でもいいんだよな?


49:いいんじゃないか?



50:今日、『始まりの草原』でロリと美人が座ってたんだが、すごく癒しなツーショットだったわ。なんつーか、きつめの美人がロリをなでなでしながら、なごんでる感じだったな。ロリもポヤーっと空を眺めていた気がする



51:それ、風景っていうか……まぁ風景か


52:幼女ぽ!? 容姿を詳しくぺろりすと


53:スクリーンショットはどうしたのじゃ


54:マジ、スクショのうp希望!


55:クラン・クランで15歳以下のプレイヤーとか珍しいな


56:どんな娘っ子達だったんでごわすか?



57:実はSS撮っちゃったんだわ


58:>>57 GJ!


59:良い仕事をするのぅ


60:>>57 うpはよ!


61:これがその癒しのSSだ


 大草原に佇む黒髪美人に、膝抱っこされた銀髪の少女がぽーっと空を眺めているスクリーンショットがアップされる。



62:なにこの天使


63:まさに愛すべき可憐な花たちだ……


64:お姉さんも美人アバターでごわすよ


65:銀髪ロリふぉおおおおおおお


66:ロリコンではないが、確かにこの絵は癒しじゃのぅ


67:ロリ子ちゃん、ハァハァ



68:あ、この子、先駆都市ミケランジェロで見たわ


69:うむ? どちらの娘さんを見たのでござるか?


70:銀髪っ子の方


71:うらやましす


72:うらやましいでござるな


73:おふゥ、ボクちゃんも見たかったぽ……そしてペロペロ



74:しかもキャラクリの話をしてたっぽくてさ、この銀髪っ子、リアルモジュールしてどこもいじってないらしいぞ



75:え、ガチのマジ?w


76:ほう……現実でもかような容姿じゃと……


77:なんと美しいレディだ。ぜひ、ボクの妃に……


78:外人さんかのぅ


79:ハーフかもしれないな


80:どっちにしろマジで超絶美少女じゃん?w




81:おれ、この子たちとお友達になりたいな


82:我もぉぉぉおおおお!


83:おいどんも


84:ペロペロしたひ


85:おちつけロリコン共www


86:キミ達は醜いなぁ……少しは冷静になりたまへ



87:そうだ、落ち着け。よく見たら、ヤバい奴に抱っこされてる


88:え、このお姉さんやばい人なの?


89:ベータテスト組なら、そこそこ知ってる奴は多いかもな


90:黒髪ポニテに双剣使い……でござるか



91:「風の狩人」じゃな


92:え、盗人系の傭兵団クランを単身で壊滅状態に追いやったっていう、あの『シン』?


93:この人が……


94:美しい花には棘がある、か……


95:こんなお姉さんに踏まれたいぽ


96:こいつはまじで恐ろしいぞ


97:剣士タイプでも扱いが難しいと言われている双剣使いじゃからのぅ。しかも風系統の魔法も使う魔法剣士タイプだそうじゃ



98:マジナンパしたら、PvPすることになったことあるけど、気迫がマジ半端じゃなかった。もちろんマジ瞬殺されたったw


99:貴殿は恐れ知らずでござるな


100:まぁ確かに、お近づきになりたいって思う気持ちはわからんでもないw




101:おれ、狩人のこんなほんわかした表情、初めて見たぞ……


102:あーおいどんも鉱山街グレルディで見かけた時、厳しい顔をしてたでごわす


103:マジでクールビューティーってやつかね



104:そんな風の狩人をも籠絡ろうらくさせる、謎の銀髪ロリッ子天使


105:気になるなプフゥッ



106:確かにな。ファンクラブでも結成しちゃうか?(笑)


107:マジ、俺がプリティ天使のファン第1号だから、そこらへんマジだから


108:抜け駆けは良くないな。ファン1号はおれだ!


109:いや、おいらだ!


110:貴様らにかような美しい花はふさわしくない。紳士であるこのボクが彼女の花婿にふさわしい。ファン1号はボクだ!



111:キミたちは、年功序列という言葉を知っているかね? ファン第一号はわしぢゃ


112:おいどんでごわす! どすこい!


113:天使ちゃんをペロペロするのは、ボクちゃんだぉ



114:では、拙者はファン0号でござるよ



115:な! お前それは卑怯じゃねえか



 ここから永遠に銀髪ロリ美少女と、黒髪美人おねえさんの話題で盛り上がりを見せるスレッドであった。





362:で、結局のところ名所スポットは?


363: 362>>>美少女あるところに心の名所あり










キャラクター名 タロ


レベル2


HP40 MP25 力1 魔力14 防御2 魔防8 素早さ53 知力77


所持金 200エソ。


装備品

頭:なし

胴:すすけた外套

腕:すすけた皮手袋

足:すすけた革靴


右手:【小太刀】諌めの宵・攻撃力14(+5) 技量補正G

左手:なし


アクセサリ:なし

     :なし

     :なし

     :なし

     :なし


スキル:錬金術Lv2



称号:老練たる少女


レベルアップ時のスキルポイント取得量が3倍。




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