先生

riasu

第1話

僕の手にはまだ、先生の血がついていた。



「先生、僕らと一緒にキャンプ来ませんか」


授業の後で、仲の良い男女数人が先生の周りに集まって談笑しているときに、冗談半分で言った。


なにかのきっかけで、僕らがキャンプでに行く話になったからだった。


先生なんだから、来られないだろうなとぼんやり思っていた。


しかし、その場にいた仲間たちは意外にも反応を示した。


「え、良くね?」


「先生いるの楽しそうじゃん!」


「ねね、先生ホントに行こうよ!」


先生は眉毛を下げて笑っていた。


ダメ押しをしたのは僕だった。


「先生、ダメですか?」


弱気な先生は断りきれずに唸った。


ううん…ちょっと、考えさせてね。


可哀想な先生。


それから先生に会う度に、僕らはそのことを言った。


「先生、来てくださいよお」


「考えてきてくれましたか?」


そしていつも先生は困った笑顔で、


ごめんね、もうちょっと考えるから。


と言うのだった。


ある日遂に、キャンプに行くメンバーの一人、押しの強い女子が、


「先生、早く決めてよ、あと一ヶ月しかないよ」


と急かした。


先生は一瞬教室を舞うほこりに目をやってから口を開いた。


…先生も行っていいの?


「もちろん!むしろ来てほしいって言ってんじゃん」


何日に行くんだったかしら?


「来月の1日と2日だよ。夏休み入ってすぐ」


…分かった。じゃあお休みを貰って、先生も行くわ。


「え、本当に!」


ええ。たまには息抜きしたっていいわよね。…


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