第130話 光るミア
その後、コンラートと一緒に昼ご飯を食べることになった。
姉と母も一緒だ。
「コンラート君、ルリアとサラと遊んでくれてありがとう」
「……いえ、こちら……こそ……ですぅぅ」
昼ご飯を食べながら、姉が社交辞令でそういうと、コンラートは顔を真っ赤にしていた。
しどろもどろで、語尾が小さくなっている。
それをみて、姉は優しく微笑んでいた。
昼食後、コンラートは丁寧にお礼を言って帰っていった。
それから、あたしたちは自室に戻って精霊力の想像訓練をした。
体の中で精霊力をぐるぐる動かして、実際に発動せずに発動することを想像する訓練だ。
精霊王であるクロが教えてくれた訓練だから、きっと効果があるに違いなかった。
あたしとサラ、スイは寝台の上に座って、あぐらをかいて体内で精霊力をぐるぐるする。
もっとも、サラとスイは精霊力ではなく、魔力の想像訓練だ。
「ルリアちゃん、からだがあったかくなってきた!」
『うまいのだ! サラ、その調子なのだ!』
「サラちゃん、クロが、その調子だって」
「うん!」
「りゃむ~~」
ロアもあたしの膝のうえにのって、真似をしている。
「スイちゃんは、訓練しなくていいんじゃないか?」
スイは魔法を使う達人なので、今更訓練など必要ないと思ったのだが、
「え? スイだけ仲間はずれはさみしいのである」
泣きそうな顔をするのだ。
「そっか。じゃあ一緒にやろ」
そして、あたしたちは一緒に訓練を続ける。
『本当は木登りも剣術訓練もするべきじゃないのだ』
「えーなんで?」
『なんでって、この前、じいちゃんを助けたのだ! あれは相当、精霊力を使ったはずなのだ』
「そんなことないと思う」
『あるのだ! 背が伸びなくなるのだ!』
だから、クロはしばらく安静にしろという。
『じいちゃんの前にスイも助けたし、その前にロアも助けたのだ』
すると、あたしの横で想像訓練中のスイが申し訳なさそうに言う。
「すまんのである。ルリアが背が伸びなくなったら……スイがずっと肩車するのである」
背が伸びなくても高いところに手が届くように肩車するということらしい。
「だいじょうぶだよ? ありがとな?」
肩車はたまになら楽しいが、毎日だと不便な気がした。
『スイやロアのせいと、いっているわけではないのだ』
「うん、わかってるのである」
『でも、ルリア様はまた同じようなことがあれば、同じように助けるのだ』
「うむ。かもしれない」
『なら、普段は精霊力を使うべきではないのだ』
いざというときのために、普段は温存すべきということだだ。
「そだなー。でも、けんじゅつ訓練ならいいと思うが?」
『ルリア様は剣術訓練でも木登りでも精霊力を使っているのだ』
「え? そなのか?」
『そなのだ。剣は精霊力が纏っているし、木登りのときも手足に精霊力が流れているのだ』
そういえば、あたしの剣は精霊力で覆われていると以前聞いた気がする。
『微量だから、そんなに悪影響はないと思うのだけど、一日何時間もするのはどうかと思うのだ』
「ふむ~そんなもんかー」
『剣術訓練とか精霊投げとかした後は、想像訓練で調えたほうがいいのだ!』
「わかった!」
『あと、いっぱい食べるのだ!』
「それは得意だ」
どうやら、大きくなるのは、色々と大変らしかった。
「ルリアちゃん、クロはなんて?」
「大きくなるにはいっぱい食べろって」
『それだけではないのだ!』
「そだな? あとなるべく魔法とか使わない方がいいんだって」
そんなことを話ながら、想像訓練を続けていると、ミアがぼんやりと光り始めた。
ミアはサラのひざのうえで、あたしたちと一緒に想像訓練をしていたのだ。
「ミアが輝いてるな?」
「ミアすごい」
「…………あれ? ミアおおきくなった?」
「ルリアちゃん、ミアは大きくなってないの」
「そかな? でも印象がかわったような……気のせいかな」
「…………」
ミアはまじめに想像訓練をして、ぼんやり輝いていた。
その日の夜、あたしはみんなと一緒に眠った。
サラとスイとロア、それにダーウ、キャロ、コルコにミアと一緒だ。
「きゅ~」
「キャロもたまには一緒にねよ」
キャロはあたし達が寝ている間、ずっと見張りをしていることが多い。
このままだと寝不足になってしまう。
「キャロの背がのびなくなる」
「きゅきゅ」
あたしはキャロとロアを抱っこして横になる。
「だいじょうぶ。敵がきても、これがあるからな?」
そういって、枕元に置いた木剣を撫でる。
「敵が来たら、これでびしばしってやるからな?」
「きゅ~」
それでもキャロは見張りをしたいようだった。
「コルコはかわいいのであるなー」
「こっこ?」
今日のスイはコルコを抱っこして眠りたいらしい。
抱っこしたままあたしの右隣で横になっている。
「こぅ~?」
コルコは寝台が狭くなることを心配している。
大体、コルコは窓辺で外を見張っていることが多い。
「コルコも寝ないと背が伸びなくなるよ? 大丈夫、狭くないよ? でかいからな?」
寝台は充分でかい。一番でかいダーウが一緒に寝ても余裕があるぐらいだ。
「……ば~ぅ~」
そのダーウは、もう気持ち良さそうに眠っていた。
サラはあたしの左隣で、ミアを抱っこして横になっている。
「サラちゃん、ミア、まだ光ってるな?」
「うん、訓練しているのかも?」
「…………」
ミアは食事中、皆がいる前では光っていなかった。
だが、それ以外ではずっと光っている。
「光りたい……おとしごろかも……」
「そだね……」
そんなことを話ながら、あたしたちは眠りについた。
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