第86話 みんなで朝ご飯

 それからあたしたちは、ロアを含めたみんなで食堂へと向かう。


 食堂に入ると、冷め切った目玉焼きウインナーが並んでいる。

 食事中に部屋に行ったので、当然のことだ。


「クロワッサンは温め直したのですが……急いでほかの料理も」

「その必要はないわ。ありがとう」

「うん。冷めてもうまい。くろわっさんあたためてくれて、ありがと」

「もったいないお言葉」


 侍女はあたしたちが戻ってくるのを見計らって、クロワッサンだけは温め直してくれていた。

 一人しかいないというのに、とてもありがたいことだ。


「いそがしいところ、すまないのだけど……ロアのごはんをもってきてほしい」

「えっと、あ、はい。ルリアお嬢様、その子は一体なにをたべるのですか?」

「なんでもたべるから、ルリアたちのごはんとおなじでいいかも」

「そうなのですね。すぐに準備いたします」


 去りかけた侍女の背中にあたしは慌てて告げる。


「あ、たまごとかすきっぽい?」「りゃっりゃ」

「かしこまりました……あの、ルリアお嬢様」


 振り返った侍女はロアをじっと見つめていた。


「どした?」

「その子は、まさかりゅ……」

「え、えっと……」


 竜であることを教えていいのだろうか。あたしは困って母を見る。


「この子はロアという名の竜なの」

 母はあたしの代わりにロアのことを侍女に紹介してくれた。

 

「りゅ、竜でございますか?」

「そう。でも内緒よ?」

「か、畏まりました」


 侍女はそういうと、頭を下げてキッチンへと走って行った。


 そしてあたしはいつものように母の正面にサラと一緒に座る。

 コルコとキャロは、最初から用意されていたご飯を食べ始める。


「わふぅ?」


 ダーウは「なんで僕のご飯がないの?」と悲しそうな目をして見上げてくる。

 だが、先ほど、ダーウはすごい勢いで朝ご飯を全部食べ終えたのだ。


「ダーウは、さっきぜんぶたべたでしょ?」

「ぴぃ~、ぴぃ……ぁぅ」


 ダーウは「食べてないし、お腹が空いて死にそう」だとアピールし始めた。


「えぇ……ふとるよ?」

「わふう?」

「しかたないのだなぁ」


 あたしは自分の分のウインナーをダーウにあげる。


「わふわふ」

 ダーウが美味しそうに食べるので、あたしも嬉しくなる。


 あたしはクロワッサンを食べる。


「やっぱりうまい、な?」

「おいしい!」

「ロアもたべるといい」

「りゃあ~」


 ロアにもクロワッサンを分ける。

 ロアがバクバク食べるので、嬉しくなってウインナーも食べさせる。

 サラはテーブルの上に置いた木の棒の人形に、食べさせる真似をしながら食べている。


「ロアは、赤ちゃんだから、たくさんたべたほうがいい」


 先ほども食べていたのに、まだ入るらしい。

 そこに侍女がロアの分のご飯を持ってきてくれた。


「ロアのごはんきたよー。どんどんたべてな」

「りゃあ~」


 あたしがロアにご飯をあげていると、侍女がロアをじっと見つめた。


「む? なでる?」

「え、いいのですか?」

「いいよ。な、ロア」

「りゃあ~~」

「ありがとうございます!」


 食事中のロアを侍女は撫ぜて「かわいい」と呟いてニヤニヤしていた。


 あたしはロアにご飯をあげながら、たまにダーウにも食べさせて、自分も食べる。

 時間は掛かったが、あたしもお腹いっぱいになるまでご飯を食べることができた。


 後片付けした後、あたしたちは昨日と同じく書斎兼談話室へと向かった。


「とうさまにロアのことをお願いする手紙をかかないとだからなー」

「みとめてくれるかなー?」

「そこはルリアのうでのみせどころだ」


 あたしには、自信があった。きっと父は認めてくれるに違いない。


―――――

1/6日に2巻が発売となります。どうぞよろしくお願いいたします。

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