そら、そう、なりますよね。
「はい、では先ず言い訳からどうぞ」
『いや、マジで、悪かったと思う』
《王の嘘を見抜けず、すみませんでした》
「ブラド」
『流石にさ、神様でも心を通わさないと善人かどうか見抜けんし、それこそ天使が居たら嘘は言わんかった』
『私は認知されてはいませんでしたからね』
「で」
『言う機会は、完全に失ってた』
「何故」
『気が付いたらルツがマジで惚れてたから、言い出せなくて』
「50年モノの童貞だからって」
『だって50年だぜ?俺らの倍、孤独すら感じなかったヤツが』
《情に絆されて貰おうと確かに思いましたし、王にも言いました、ですが直ぐにアナタには悪手だと悟り考えを改めました》
『すまん、俺の平和への熱い想いが嘘を言わした、すまん』
「はぁ、どうして?」
『転移転生者がココで亡くなったの、俺のせいなんだ』
《もっと詳しく言うと先代のせいです、ですので彼は為政者としては正しい判断を下しましたが、私に直ぐにも言うべきでした》
『だからさ、ならどう言う気だ?俺の嘘を信じました、とか逆に信用を失うかもだろ』
「それこそ神様達への信用も、ね」
『願ってたのは本当よ、毎日、起きてからと寝る前に』
『アリアドネ様、恥ずかしいから止めてくんない?』
「こうバレるとは思わなかったの?」
『ぉぅ、考えが甘かった、それこそ何処の国の者でもそう言われてるとすら思ってた』
「まぁ、確かに所属無しは考え難いし、何処も転移者には言うでしょうね」
『キャラバン経由でヤバいヤツの噂も知ってたから、そこはマジでごめん、信用半分だった』
「で、ルツ」
《以降は王の言う事は一切信じません》
『拗ねんなよぉ』
「そうよ、アナタも同じ立場なら同じ事をしたでしょう」
《ですが直ぐにバラすべきでした》
「すっかりアナタのモノになってないからこそ、王が心配しての事でしょう」
『それな!』
「まぁ、相性が悪かったら嘘を言った事を責めるけど、王とも国とも相性が悪く無いと思ってるから。問題無しよ」
『やったー、ありがとう姉上』
「但し、クソだと思われたら皆殺しにされても仕方無い事だから、以降はもう少し文言を考えましょうね」
『おう』
《ローシュ》
「アナタも、王の配慮を考慮して、身内が居て狂われるのと最初から居ないのではワケが違う。信用出来無いのは私も分かる、私も同じ事をする」
《だとしても、もう尽くす義理は無い筈です》
「ぁあ、酬いるって事についてね。別に王にだけに酬いる気じゃなかったのよ、それこそ先代だとか、魔法が存在するこの世界に酬いたかったのよ」
《何故、そこまで》
「だって若さとアーリスと良い環境を下さったんですもの、酬いないのは居心地が悪い、身に余った分を返してるだけ」
『マジで姉上は女神様だな、貰い過ぎると嫌がる』
《私は受け取り過ぎだとは思いませんが》
「誰が欲張りかどうか決めるか、よね」
『俺的にはルツをやっても足りんがな、どうしてくれるんだ?』
「アンタねぇ、切り替えしが爆速過ぎよ」
『俺は無罪だしぃ』
「まぁ、確かに無罪ね」
『ほら。つかさ、新婚旅行なのにさ、もう休んだら?マジで』
「何か、つい、忘れちゃうのよね。アーリスに言われて思い出したりだとかは有るんだけど、つい外遊だって気になって」
『ひと段落ついたんだし、暫くコッチでは、アレが居るのか』
「あ、彼、何て名乗った?」
『いや、聞いてねぇわ』
「あらー、私も」
『まぁ、聞いておくから、今日はもう休んでくれや?な?』
「ルツもね、じゃ、おやすみ」
《はい》
『おう、おやすみ』
いやー、クソ怒られるかと思ったけど。
それこそ俺の考えが甘かったわ。
姉上が転生者ならな、そんで俺の娘とかなら。
いや、ダメだな、苦労させる事になるだろうし。
《はぁ》
『なんだよ、許されたのに』
《私を迎え入れる他の理由が出てしまったので、気が重いんです》
『アレか、ウチからの酬いが足りないからお前をってか、無いだろ』
《私が嫌なんです、利益になるからだなんて》
『お前、凄い我儘になったな?』
《こうした事だけですのでご心配無く、以降は余計な事を言わないで下さい》
『はいはい』
思春期かよ、オモロ。
「おはよう諸君」
「出た、おはよう、何を説明してくれるの?」
「さてはお前、そこそこの年齢だな」
「さぁ?」
「まぁ良い、先ずはお前に考えさせようと思ってな」
「何を?」
「正史派の中でも、風が吹けば桶屋が儲かる理論信者、要はバタフライエフェクト派の想定が有るかだ」
「言いたい事は分かるんだけど」
「少しの違いも許さない、直接違うワケじゃなくても、何もかも正史と同じでなければならない派」
「ぁあ、自殺するしか無いんじゃない?」
「だよな、真っ先に異物の自分を排除すべきだ、真に正史派だと言うならな」
「けど、結構、どの宗教も自殺は御法度よ」
「しかも他の異物が先に目に入れば、ソッチに気が行く」
「けど上下水道の破壊の報告は無いのよね」
「で、寧ろ無い事象の再現をする事に繋がるワケだ。つかパルマ公の事件、お前かよ」
「未来でどうなのか気になるぅ」
「パルマ夫人とスペランツァ公主が結託し、遠方に居た婚約者を呼び戻し助力させ、パルマ公を排除。あの奇祭は俺も知らなかったんだが、知ってたか?」
「ネットで」
「ネットェ、クソが、紙媒体ばっかりだよ。しかも何だよルーマニア語って、第2言語にしてるヤツがどんだけ居ると思ってんだよ、喋れてるのがマジで不思議だわ」
「その、元は何処の?」
「どっちでも日本だ、英語が少し、ガキのレベルでな」
「成程」
「寧ろ、俺はアンタを知らない方が良いのかもな、俺の知り合いの知り合いかもだし」
「私は嫌いでもルーマニアの事は嫌いにならないで下さい」
「知らなきゃ嫌わない、確かにアンタの行動は正解かもな」
「どうも」
「でだ、話を戻すが。言っちゃ悪いが、本来無い筈の事象を起こしたり早める者が正史派だと思われるワケだ」
「私も、ね」
「ただ俺にしてみたらアンタの選択は正解なんだ」
「ほう?」
「かなり早い段階で真珠養殖は行われてる、それこそ転移転生者のお陰だと言われてるが、詳細は全く不明だとなってる」
「アナタを信じるなら、私は寧ろ行動すべき?」
「そう行動しないかも知れないって事も俺は考慮しなきゃならない、なら開示するしか無い。火薬や金属の抑止の為にもと、既にこの時代から真珠を養殖してる筈なんだ、日本は」
「ちょ、早過ぎじゃない?」
「流通はもう少し先らしいが、それとほぼ同時期に各地でも養殖が始まったとされてる、多分キャラバン経由なんだろうな」
「その予定ね」
「けど先ではキャラバンの存在はただの物流集団、絡んでたとはな、だから情報が少ないワケだ」
「キャラバンが壊滅してるの?」
「コレは俺の予測だが、物流が安定し始める頃に各地で従者の育成が始まったんだ」
「従者?」
「流石に想定に無かったか、召喚者には従者が基本だ。アンタのアーリスやルツ、そう身の回りの世話から護衛、知識を分け与えるのが従者」
「成程、けど」
「先ずは発見した国の従者が派遣され、そして召喚者が指定する国が有ればそのまま移行させる。召喚者は世界の所有、どの国も勝手に所有する権利は無いし、囲う事も禁じられてるんだが」
「問題が起きたのね」
「教会派だ、しかもロサンゼルスのな」
「そう支部を置かせるなんて」
「寧ろロサンゼルスが本拠地なんだ、色々と有って、ローマの自治区以外にも存在はしてる」
「ぁあ、多分、
「それもアンタか?!」
「まだ、止めさせる事も出来ると思うけれど」
「いや、いや、アレの存在は重要だからそのままで。ただ、マジか、驚いたわ」
「私、何かしちゃい」
「アンタそこそこ知ってるな?」
「何の事だか」
「いや、亜細亜圏じゃないなら重度のヲタクにしても過ぎるぞ、それ」
「と言うかその知識は」
「転生者が齎したとか転移者が齎したって、向こうの作品はコッチで売られてる、転移転生者の資金源としてな」
「成程」
「こう、良く考えればいつかアンタでも辿り着いける事を、俺が少し先んじて論じてるだけなのかもな。アンタを動かす為に、後押しの為に」
「それ、死ぬ程心当たりが有るのよね、加減が分からないって昨日話し合いをしてたのよ」
「で、ルツってのが転移転生者に会おうとして、俺に来た。運命が過ぎるだろ」
「運命と言うか、都合が良過ぎて逆にキモい」
「分かる、俺も同じ立場なら疑うが、俺もアンタも天使を信用してるしな」
「と言うか神々をね」
「精霊もな、アレ、マジで馴染みが凄かったわ」
「ディンセレ?」
「おう、不思議だな、彼女だなんてな」
「結構雑なのよね、シベリア自治区もだし」
「ぁあ、名と言うか固有名詞的だよな、自然崇拝って」
「そうそう」
「あ、何だったか」
「その、昨日の、厄災って」
「そこは濁させてくれ、ただ、関連する事を。俺は国連について調べてて、寝落ちして国境に居た。3日前だが、この姿で助かったわ、捨て子だと思われてな」
「ぁあ、確かに子供の姿は便利よね。けど、よく3日で覚悟出来たわね?」
「厄災の内容がな、内輪揉めも含んでるんだ。国連所属の従者も居る、各国に従者庁が存在してて。因みにだな、警視庁と警察庁は統合してる、ややこしいからな」
「確かに、その方が、でも」
「他は問題無い、ユートピアに汚染された教会派が召喚者を囲った、神獣もな」
「神獣?」
「それこそアーリスみたいな竜だ、アンタが原型なのかもな、召喚者と従者の」
「アレ、一応、夫よ?」
「神獣も家族愛が凄いんだよ、超世話好き」
「ぁあ、まぁ、居てくれたら確かに心強いけど」
「ティターニアやオベロンの成立前なんだよな、不思議な感覚だわ」
「お会いした事が?」
「まぁ、ちょっとだけな、見たってのが正しいが。そうだ、どうして転生者に加護が無いのか知ってるか?」
「それ、言って良いのかしら」
「知ってるのか、転移転生者絡みだって」
「数多の性病を持って来て広めてたのが転移者、それと一緒に楽しんでた転生者が薬を必死で開発して薬を広めた。けど、転移者の方は既に耐性菌で、薬が効かないからと転生者を殺して腐り落ちて亡くなった。そうして薬と病だけが残り、他の転生者が耐性菌持ちを殺して、薬と伝説だけが残った」
「で、それも教会派なんだろ」
「そこは真偽不明なのよね、一神教を信じて無いと無宗教扱いされる時代が有ったんだし、向こうの概念を重視して楽に行動する為に一神教信者と名乗ってただけかもだし」
「ココより数が少なくなっててな、向こうと同じ勢力に戻したがってるのも居る」
「ぁあ、それは殺されそうな情報ね」
「だろ、俺のはこんなんばっか、それこそ魔法は殆ど使えないまま。転移者らしい所は言葉の壁が無い所と、神性の加護だが、俺に同意を得ろよ」
『だとして、同意頂けましたか?』
「いや、だが心の準備をさせろ」
『それでも拒絶したかと』
「ぐぬぬ」
「ぐうの音が出まくってるわよ」
「でもだ、準備させないせいでボロが出たんだ」
『結果として、最適解かと』
「だとしても、俺は認めないぞ」
「それで、真珠の養殖なのだけど」
「やっちまえ、向こうでは観光地を安定させた材料になった、各地で養殖が始まったからだ。一国がやるより既に常識だとした方が安全だろ」
「真逆」
「良い悪いで言うなら良い事だろ、兵器に関わる火薬や金属ならまだ分かるが、漢方にもなる宝飾品で神々も好む。俺の存在で物事が無くなる方が気分が悪い、ダメなら俺を呼ぶな引き合わせるな、それこそ死ぬ様に仕向ければ良かったんだ。例え問題が起きても俺もアンタも悪くねぇ、悪いのは天使だ」
「責任を分け合ってしまった感覚が有るんですが」
「晒し首だとかする割に、結構優しいのな?」
「アレは、仕方無く、と言うか別に優しさと言うか」
「ツンデレか」
「だから、失敗の責任を感じて欲しくないだけで」
「で、真珠以外に何が心配だ?」
「この時代の、ユーゴスラビア王国の代表者の名を」
「何でもは知らねぇよ、それこそルーマニアの事は殆ど知らん、アンタら鎖国状態で情報の制限が半端ねぇんだ。知ってる事は限られる」
「じゃあ何を知ってるのよ」
「ベナンダンティの魔女、アレらの系譜が殆ど居なくなってる、だがルーマニアに存在してた。ほら、もう既に決定事項なんだろ、一部をココへ残すって聞いてるぞ」
「何で居なくなってるのよ」
「医科学を進化させる為、黒いオーラの魔法使いの治癒能力は邪魔になる、重用されれば医科学は伸び悩む。ある意味でココがガラパゴス化する、鎖国によって国と存在が守られる」
「重用、そうね、目を付けられて量産されても困るし」
「スペインな、神託によりポルトガルとフランスとモロッコ、イタリアとイギリスで制圧した事になってるが。コレもアンタだとはな、俺じゃなかったら過去じゃなくて異世界だと思っただろうよ」
「凄い、自信に繋がっちゃうのだけど」
「悪かったな、話を聞く前に拒絶して。だが、それこもこれも心の準備をだな」
「その、サンジェルマン家とかは」
「あ、そこだよ、コレ言うか少し迷うんだが。そこもお前は正解なんだよ、カサノヴァ家の事も、このままで良い」
「肯定され慣れて無いのだけど」
「クソ陰キャかよ、アレだな、苦労する性格してんな」
「そうなのよ、陽キャなら」
「陽キャなら表に出て叩き潰されるだろうな、天使に聞いたが他の転移転生者は其々に己の正義を持ってして行動してる、お前の想像通りだ」
「一神教信者?」
「まぁ、向こうでの割合的には多いしな、無作為に選んだとしても引き当てる確率は高くなる。殆どは理解と馴染むので手一杯、しかも成して残るか帰るかで更に悩み、滞在が長くなり更に迷いが生じる。で、魔王に目が向くワケだ」
「あ、魔王の事は」
「新大陸送りで大丈夫だろ、アレはベガスとイギリスを行き来するしな」
「こう、無力化は?」
「叶う、いずれな、ただ医科学の発展が重要になる」
「ぐぬぬ」
「アレだ、魔素が尽きるかもって考えた事は無いか?この世界の魔素だ」
「まぁ、還元されてるので、可能性は低いとは思うけど。正直、フィクションでは有りがちよね」
「実際に循環が滞って問題が起きた世界が有る、ココも、妖精が居ないから魔獣が暴れてんだろう」
「凄い、ルツの想定通り」
「結局は安全装置なんだよ、国同士を争わせない為に魔獣が存在してる」
「国力を削ぎ、国境争いをさせない為」
「けど歴史に全く残って無いが、既に国家間で和平協定を成立させたんだろ、なら必要無い筈だ」
「アレって」
「妖精が狂暴化した姿、魔王と同じく魔素の過剰供給でな」
「ごめんね白銀」
「ソイツ、やっぱりお前ヲタクだな?」
「いえ、浅く広く、意外と年なので」
「亜細亜か?」
「そこはノーコメントで、知り合いの身内とか嫌でしょうよ」
「ぁあ、知り合いの家族だったら、確かにクソ気まずいわ」
「ほらね、何の杞憂も無しにココを楽しんで欲しいのよ、ご安全に楽しく過ごして貰う為に平和にしたい」
「一致してんだよなぁ、俺の願いとも。コレで何もするな、は逆に無理だわ、知ったら無理だ」
「不安でしょうよ、良いのか悪いのかの判断」
「いや、俺はクズだから無い、マジで天使に責任が有ると思ってる。どうなろうとも案内した天使が悪い、俺じゃねぇ」
「どうしたら、そう」
「自分の役割と力を良く理解してるからだ、何でもは無理だとな、だから俺は責任を誰かに負わせられる。けどアンタには無理だろう、アンタは何でも出来ちまう」
「何でもかどうかは」
「魔法は何でも出来る、だから力を抑えてんだろ、カッコイイかよクソが」
「アナタにそう信じられちゃうと」
「事実だ、転移者は、召喚者の中でも凄いのは何でも出来る。だが、個人差が凄いんだよな、中身に関しても」
「その国連とか内輪揉めって」
「転移者同士の争いだ、幸いにも転生者同士で揉めた事象は確認されてないが、まぁ情報が表に出ないだけだろうな」
「転移者同士って、はぁ」
「だから関わらないのは正解だ、互いに観測対象であり観測者なら、影響し合ってもおかしくないだろ」
「私達がトリックスター、確かに」
「あ、会ったんだってな、アレと」
「アレて」
「父性の塊だよな、アレ、肩車して貰ったわ」
「子供してるわねぇ」
「だって美味そうな桃を選ぶのに届かないだろうよ」
「桃ぉ、梨ぃ」
「おい亜細亜人、木を植えちまっても問題無いだろうが、どうせ鎖国すんだしな」
「そこ、それで良いのかしらね」
「対価だろ、世界を進める為に、寧ろルーマニアが犠牲となる。けど合意しての事で、しかも死ぬワケじゃない、なら対価だろ」
「そう知ってしまって、余計に責任がぁ」
「ほら、知るとこうなるんだ。苦労すんな、転移者は」
「アナタもでしょうよ」
「実質、転生者だ」
「はぁ」
「どんまい」
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