平民の星、カサノヴァ家。
抱いた、と言うか抱かれてしまった。
『愛してますよローシュ』
「ネオス、アナタ初めてよね?」
『はい』
「何故、上手なの?」
『見せ付けられてたので』
「は?」
『正確に言うと勉強の為にもと見た時期も有ります、けど鍵穴や秘密の場所を教えられ、アナタの良くなる姿を見せ付けられた時も有ったんです』
「そのせいで欲情しただけじゃない?」
『なら致し終えた時点で愛が冷めるのでは』
「ね、今ならまだ許すわよ?」
『コレを見ても不安ですか?』
お元気でらっしゃるけど。
「最早、条件反射なのでは?」
『なら試してみますか、目隠しをして声も聞かないでいても、反応すると思いますけど』
「それもそれで、違う扉が開いても困るわ」
『誰が困るんですか?』
純真無垢な質問。
困るわ、本当に困る。
「今度教えるわ、次は指輪を外して」
『あっ、別にそこまでは』
「傷が痛いかも知れないんでしょう、確認させてくれないなら次は無し」
『嘘を言いました』
「嘘か確認させなさい」
『はぃ』
姿形にコンプレックスが有るのはお互い様。
それと同時にお互いの本当の姿に拘りが無い、痛そうだけど萎える程では無い、なんなら全然抱ける。
だけどネオスは萎え萎え。
「あら、やっぱり愛が冷めちゃったのかしら」
『この顔では、不安なんです』
「私にとってのネオスの半分は、この顔のネオスなのだけど。実は、本当にローレンスになりたいのかしら」
『違います、本当にローシュだけが良いんです』
「でも全然元気が無くなっちゃったわよ?」
『この顔を愛してくれるのは嬉しいんです、ですけど、私が、この顔で愛されたく無いんです』
「何故」
『ローシュの相手は綺麗な顔ばかりだったので、だから』
「じゃあネオスは顔しか愛されてないのね」
『違、そうじゃなくて』
「この顔のネオスを抱くのがローシュじゃないなら、今からネオスを抱くのは誰なんでしょうね」
快感に弱いの、かわヨ。
『待って下さいローシュ』
「愛されたく無いと駄々を捏ねたいなら、愛されたくないなら、好きに我慢してどうぞ」
少し抗ってたけど、熟練の技の圧勝ですわよ。
可愛いネオス。
『ローシュ』
「コッチの方が可愛くて好きよ、出会った時と同じ感じで、可愛い。傷は本当に痛くない?」
『はぃ』
「なら良かった」
『どうして、この顔で、したんですか』
「両方ネオスでしょう、抱けるって証明したかったの」
『嫌なら無理に』
「嫌がってるかどうかも分からない?」
『ぃぇ』
「恥ずかしがってるネオスが凄く可愛いから、幾らでも出来ちゃうかも」
ルツが私に意地悪する気持ちが、良く分かったわ。
恥ずかしそうで、嬉しそうで、可愛い。
『本当に、このまましますよ』
「はい、どうぞ」
さっきとはまるで別人みたいな控えめなキスで、凄く可愛い。
アバタもエクボ越えて、もう何でも可愛いかも知れない。
『ローシュ』
ローレンスに加減出来無いのかと怒った事を、謝らないと。
《ネオス、あまり外に顔を見せては》
『すみません、気を付けます』
《何を考えていたんですか》
『ローレンスに、加減出来無いのかと怒ってしまった事を、謝ろうかと』
《ふっ、アレに誂われる材料を提供したら、君が想像する以上に誂われますよ》
『どうして、彼は煽る様な事を』
《嫉妬もですが、苛立ちですよ、差し出されないからと言って目の前のお菓子に手を付けないなんて馬鹿げている。そうした苛立ちでしょう》
『ならルツさんも』
《いえ、良く躾けられた動物の様で可愛らしいなと、だから抜け道を教えたんですから》
ローシュを口説く方法として、私が最も邪道だと思う方法を試した。
私の身を賭けて、脅した。
『コレで本当に』
《良かったかどうかは今後次第、ですけどアナタを可愛らしいと言ってるんですから、成功なんですよ。ローレンスもローシュも、完璧な者より、少し欠けた者が好きなんですよ》
『ルツさんは』
《私にとっては完璧ですよ、弱さも強さも何もかも、私の為の女性だとすら思ってますから》
『ネオスー、そろそろ来るから上がっててー』
『はーい』
《では、コレからも仲良くしましょうね、ネオス》
コレで本当に良かったのだろうか。
そう不安にならない事が逆に怖い、コレしか無かった、コレで良かった。
寧ろ、何故今までこうしなかったのか、不思議な位で。
《あ、ネオスさん、もうお客さんが来るんですか?》
『だそうです、アーリスに言われました』
《本当だ、耳も良くなったかもって本当だったんですね》
『ですね』
《何か、もっと喜ぶのかなと思ったのに、嬉しく無いんですか?》
『不思議なんです、どうして今までこの手段を取らなかったのか、ナポリ公を可愛いと言ってた時点で気付けた筈なのに』
《アハ体験的な?そう納得するのに何かが足りなかったんですかね?》
『信じる、力、でしょうか』
《ローシュ様が口説き落とされて下さるって、信じる力、ですか?》
『傷の有る顔を愛されたい、けれども愛されたくない、その葛藤ばかりに気が向いてた気がします』
《タイミングってヤツですかね?》
『かも知れません、あの日は、今言うしか無いと思ったんです』
《良いなぁ、僕にも来るかなぁ》
『ファウストがその日まで良い子なら、私も手伝いますよ』
《本当ですか?!》
『はい』
《やったー!》
良い水場だからこそ、良い人間とは分け合いたい。
私だけ抱いて貰えない疎外感であって、独占欲とは少し違っていたらしい。
今は凄く穏やかで、次に抱いて貰える日が待ち遠しいけれど、恋い焦がれると言うよりは穏やかなまま。
当たり前に降るだろう、優しい恵みの雨を待っている感覚、それに近い何か。
《女神ケリドウェン、ローシュにアヴァグドゥを抱かせましたね》
《あら、どうして気付かれちゃったのかしら》
《ご冗談を、アーリスの恩恵無しに常人に何回もは不可能です、そう無理な事は私が1番理解しているんですから》
《ふふふ、それで、ローシュに言うの?》
《とんでもない、ローシュにメリットが無いですから言いませんよ。ただ、対価を、神の計画の一端を知りたいんです》
《はい、コレ》
《魔石ですか》
《言葉の知恵の1滴が染み込んだ魔石、ローシュの言う翻訳機の魔導具の材料に、どうかしら》
《私に渡すのですね》
《だって見抜いたのはアナタ、抱かれるだけでは目標の半分にも満たないもの》
《そう認識され、決定された》
《例え事実がどうであれ、アナタがそう認識した時点で事象は確定し、対価はアナタの手に渡った。ふふふふ、じゃあね坊や》
神々がどれだけローシュに期待しているのか、負担を掛けるのか、それらを確認するつもりだったのですが。
完全に逆手に取られてしまった。
アヴァグドゥが抱かれたかどうかは不確定要素が大きかった、それこそ魔法や何かで回数はこなせたかも知れないのに、私が事象を確定させてしまった。
《呼び出すだけなら、もう少し穏便な内容でも良かったのに》
私の声、顔は隠されてはいるけれど、私の姿。
《アヴァグドゥですか》
《ごめんね、母さんは過保護なんだ》
《いえ、どうでしたかローシュは》
《君凄いね、寝取られたのに感想を聞くなんて、もしかして君こそ真のサイコパスなんじゃない》
《残念ですけど違うんですよ、罪悪感と共感能力も有りますし、見当違いですよ》
《サイコパスが言いそうだ》
《そうなら楽でしょうね》
《凄く良かったと思う、比べられる様な行為もした事が無いから、こう言うしか無いんだけど。最高だった、またしたい》
《ローシュが許すならどうぞ》
《成程。確定された事象だから、だから僕からの対価を渡すよ、神では無いけど神性としても過不足は気持ち悪いから》
《この名と姿絵は》
《この地に踏み入った転移転生者が使っていた名と、当時の姿絵》
《ローシュを抱いた対価》
《嫌なら僕の名を言わせなければ良いだけなんだけど。ネオスの心配はしないんだね、神憑りの後遺症の心配すらしない》
《言い出して頂いて助かります、やはりアナタは良い神性ですね》
《良く言う、ローシュ以外はどうでも良いクセに》
《ぁあ、ソレは内緒でお願いしますね》
《アンタみたいなのに愛されてローシュは本当に可哀想だ》
《本当に、可哀想ですから是非気にかけてあげて下さいね》
返事は無し。
次こそは真意を聞けたら良いんですが。
「ルツ」
《ローシュ、お客様の相手は宜しいんですか》
「まだ、紹介するわ」
《その前にキスを、そろそろ私の相手もしてくれないと泣きますよ》
「泣いてくれたら考えるわ」
やっと元のローシュに戻ってきましたね。
《アナベルと申します》
「“優雅で美しいって意味よ”」
《“素晴らしい名前ですね”》
「“それから彼はフィリップ、馬を愛する人”」
《“成程”》
「“成程って何よ”」
《“神に愛されそうな名だな、と”》
「“確かにそうね”」
《私はルツ、宜しくお願いしますねアナベル、フィリップ》
《はい、宜しくお願いします》
『宜しくお願いします、ルツ』
私達を助けてくれた方は新参の子爵家、カサノヴァ子爵家のローレンス当主の叔母、ルアンド夫人。
当主のローレンスは生憎と不在だそうで、けれども確かに家紋と同じ印章の指輪を彼女が付けている。
そして夫のルツさん、侍従のアーリスとネオス、先に預かっていたファウストと言う少年だけ。
彼の母親が知らない場所とは言えど、本当に大丈夫なのか。
「じゃあ、さっさと終わらせる為に、作戦を練るから。アナタは食事の支度を、私達は少し話し合いをするわね」
《はい》
『はい、アナベルを宜しくお願いします』
私の不安は直ぐに解消した、ルアンド夫人には商才が有る。
《月経用のパッドの販売ですか?》
「自分達でキルトを縫うじゃない、けど面倒で何年も使い回したり、雑に縫ったり。けど売ってれば買うでしょう?」
《ですけど、だけ、では》
「赤ちゃん用の品物と一緒に売ればどう?妊婦用にも、オムツもだけど、よだれかけに良いと思うの」
《成程》
「コレはアナタの案、良いわね」
《それではルアンド夫人の利益が》
「アナタが同じ様に誰かを救うの、機会を与えられるべき子をココに連れて来て助ける、そして子育てに失敗しない事が私の利益になる」
《国の為になる者を育てるのも、貴族の仕事だとは思いますが》
「優秀な子を増やす事もね、そうなると程々が1番ではない?」
《はい、嫉妬は怖いですし、出来れば円満な家庭を築きたいと思ってます》
「そうなると品物も程々で、宣伝の為にも多く作ってタダ同然で子供に配るの」
《それから母親に買わせるんですね》
「そう、子供用は簡単で分かり易い図案。親のは、そうね、生理痛が軽くなる、妊娠し易くなるって思えそうな図案にして、実際に試して貰うの」
《天才では?》
「いいえ、コレは実は王命なの。私がエジンバラに行った噂は聞いてるわね」
《まさかそれで、凄い》
「それで成功して、もしアナタに他の良い案が出たら、欲張らずに次代に託すの。秘密の本に書き記して保管する、ココと王室にね」
《そうして次の子の立身出世の糧になるのですね》
「本当に見込みが有る善人にだけ、そして本の事は秘密を守れる子にだけ」
《もし、それを破れば》
「神罰が下る予定ね、一家に」
《なら間違っても持ち出せぬ様に、本に魔法を掛けて貰えませんか?信頼と警備は別物ですから》
「そうそう、そうした案をもっと出して、ココはまだ出来たばかりだから」
《ココは不用心が過ぎます、武器が持ち込めぬ様に何か策を講じて下さい》
「ありがとう、可愛いだけではなくて賢い、素晴らしいわアナベル」
そうして私は場所と人員が揃うまで、このフリーメイソンと呼ばれる秘密組織の決まり、ルールの見極めをする事になった。
《あの女を出して頂戴》
アナベルとルアンドの案が軌道に乗るかどうか、そんな時に母に見付かってしまった。
「あら、どちら様かしら」
《フィリップの母よ!》
「なら格下ね、帰って下さい準男爵家の当主でも無い方。私はカサノヴァ子爵家当主の代理を務めるルアンドと申します、以後お見知りおき頂かなくて結構、さっさと敷地から出て頂かないと無礼討ちにしますよ」
《そんな無礼な口を、私の夫は》
「アナタにもアナタのご実家にも、爵位は無かった筈では?」
《それでもウチの子を》
「みなさーん、この方、貴族位にご執心でらっしゃってー、何と息子さんに」
《ちょっと!はしたない真似を》
「どちらが?薬を盛って愛の無い愚かな結婚をさせようとする方が、はしたないのでは?」
《それは、子を思って》
「アナタの為に敢えて旦那様には言わないであげたのに、言っちゃおうかしら」
《そん、証拠は》
「直ぐ証拠を出せって言うのよね、この手の方って。良いわ、証拠より良いモノを見せてあげる、アナタが思う通りにした結果をね」
そうルアンドが母に触れるかどうかで、母が倒れた。
そして目覚めた頃にはすっかり泣き崩れて、途切れ途切れに夢で見た事を話し始めた。
『僕は結局不能になり、愚かな令嬢に悪評をバラ撒かれ、嫁を貰う事も婿に行く事も出来ずに、自暴自棄になって半ば男娼に。そして仕事をエサにされ船に乗り、そのまま外国に連れて行かれ、その途中で病に罹ったので海に投げ落とされ、そうして死んだらしい』
《無くわ無いわね、アナタは私が大好きなんだもの》
「もしかしたらお母様はそうなると気付いて、夢に見たのかも知れないし、お父様が言い聞かせた結果かも知れないわね」
僕は知っている。
母がそこまで賢くは無い事を、そして父も、愚かな母に騙される様な人だとも知っている。
けれど母が大人しく帰ってくれたので、僕は何も言わない、僕らはこの土地に新しく住み家族になるのだから。
《フィリップ、分家にしても良いのよ》
『いや、あの家族とは縁を切りたい』
「短気はダメよ、家名は大事、寧ろ手元に置いて制御する方が遥かにアナベルの為になるわ」
《それはそう、目の届かない所で物乞いをされても困るし、人手は必要よフィリップ》
『分かった』
「はぁ、後はお子が無事に育てばもう」
《えっ》
「あら、まだなの?」
《そっ、それはこう、結婚してからの方が良いかと》
「真面目ねぇ、真面目過ぎはダメよ、上手く世渡りしなきゃダメ」
《でも、お世話になってる家でするのは、ちょっと》
「そうよねぇ。ならどうすべきか分かる、フィリップ」
『暫くは近くで家を借り、仕事が軌道に乗るまで住み、軌道に乗った際には家を継いで彼女の家名と合流させます。アシュリー=クーパー家として、2人で爵位を守ろうと思います』
「直ぐ隣は気まずいでしょう、下の海沿いの家を貸すわ。さ、コレが終わったら準備して、フィリップが爆発しては可哀想だわ」
《え、あ、はい》
カサノヴァ家が王族より新しく賜った領地には、既に家が立ち並んでいて不思議に思っていたのだが。
多分、コレは何かしら既に決まっていた運命で、僕らはソレに選ばれたのだと思う。
彼女と生きても良いのだと、そう許して貰えたかの様で、それだけで僕には労を惜しまないだけの価値が有る。
『どうか後見人になって下さいませんか』
「却下、アナタを助けてくれた方を後見人に推しますから、彼女達を頼りなさい。私が面倒を見るのはアナベルの方だけ、ご恩返しをなさいね、最初に助けてくれたのは彼女達なのだから」
《情報網は多い方が良いし、支柱は多い方が良いものね》
『分かりました』
「はい、じゃあ準備して、行ってらっしゃい」
『はい』
「アナベル、アナタが腹芸をしなきゃね」
《任せて下さい、得意は得意ですから》
「でも夫は立てるモノよ、家名は継いだのだし、愚鈍だとすれば愚鈍なままになってしまうから」
《はい、ルアンドの様に上手に、ですね》
「私は本当の事を言ってるだけ、支えて貰ってるのは事実」
《はいはい、梱包も何も終わらせましたから家でゆっくりなさって下さい、ココはもう私だけで大丈夫ですから》
「凄い、年寄り扱いされてしまったわ、アーリス」
《違います、ルアンドの周りの殿方の爆発が怖いだけです、帰ったら食い散らかされない様に気を付けて下さいましね》
「はいはい、気を付けます。けど何か有ったら直ぐに言いなさい、製品の安全性が第1なのだから」
《はい、ありがとうございますルアンド。アーリス、早くルアンドをお連れしてあげて》
『うん』
ローシュはすっかり世話役になって、良い子供達をカーコーディへ送り出したり、ココへ中流の教育係を呼んだり。
結局は療養を碌にしないまま、仕事ばっかりで。
「はぁ、やっと落ち着いたわね」
『この国にも困ってる人間が多く居るのは仕方無いけど、そのお婆ちゃんになる魔道具、いつまでしてる気?』
「意外と楽なのよねぇ、年寄り扱いって。若い子が率先して頑張ってくれるし、敬ってくれるし、エロい目で見られる数は減るし」
『もー、セレッサ、船が出来ちゃうよ?』
「既に建造中だったものね、仕方無いわ」
『良いの?船に乗せる役を取られちゃうんだよ?』
知らん顔して。
本当に大丈夫かな。
「まだやる事が有るんだもの、タイミングを見てるのよね」
『機会ねぇ、ローレンスが本当にアンジェリークと結婚するなんてね』
「いずれはローレンスがココを取り仕切る、表向きはアンジェリーク、何も知らないままの方が安全」
完成した船でココに戻って来る予定。
改良された作物と共に、その成果で平民から貴族の養子になって、暫くはローレンスと一緒に船旅に出る予定。
『ならアナベルを住まわせたままでも、良くないのか』
「ココはカサノヴァ家だからね、代理は代理、しかも身内でないならココには住めない。区別、区分、差を理解させるには仕方無いわ」
『だって、後ちょっとだよセレッサ、船が出来上がるまでもう少し』
「はいはい、そうせっつかないの」
月経用パッド販売の案は、元はアンジェリークの為にローシュが考え出した案。
あの子に役目を与える為、特技を生かす為、為政者の素地が無い者の為の案。
製品の使い心地と噂が噂を呼び、あっと言う間にエジンバラとバーンティスで売り切れる事態に、それがまた更に噂となり。
ココには男女問わず工房に人が集まり、刺繍をし、検品と洗濯を施し販売される。
そこで才を見い出されれば教育も施して貰えるとあって、更に人が集まり。
《鳩の扱いも上手いとは、流石ローシュですね》
「アナタの案を転用しただけよルツ、先行のキャラバンに噂を流させ、後発のキャラバンの品物を売る。怖いわ本当」
《どのキャラバンも似た事はしてますが、プラセボまでは手を出してはいませんよ》
「してるでしょうよ、おまじないも祈りもプラセボ、ただウチが言い出せば魔女狩りの標的になるから鳩を使わせて貰っただけ」
《マリッサに鳩の訓練をさせているんですが、才能が有るらしく、王が手放し難いと言ってるそうで》
「ダメよ、マリッサには支部の人間になって貰うんですから」
《オスマンではエレンが頑張るそうで、ふふふ、凄い愚痴が書かれてましたよ。よくも仕事を増やしてくれたな、と》
「懐かしいわねぇ、第2の弟エレン、愚痴を書けるなら元気って事ね」
《スペランツァも刺繍を頑張ってるそうですよ》
「妊婦に細かい作業をさせ過ぎないで、寧ろ体を適度に動かさせて、周りに頑張らないとと思わせる良い機会にさせて」
《では、その様に伝えておきますね》
「はぁ、意外と老後って良いものね、成長が凄く嬉しい」
《良く育てば、ですよ》
「そこよねぇ、大丈夫かしらアンジェリーク」
《教えのお陰で清い身だそうですから、船旅も問題は無いかと》
「バーミンガム経由でロンドンへ、そこから船でしょう」
《老婆心はしまっておいて下さい、長旅も愛を育む過程なんですから》
「お湯の問題が解決出来れば最高なのだけれど」
《水は貴重ですから、もう100年は客船は据え置きかと》
「私達の船以外はね」
《楽しみですね》
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