猛獣使い。
《ローシュ、素敵な二つ名が付きましたね》
「ルツ、喜べば宜しいか?」
《ふふふ、思うままで結構ですよ》
「おうエレン、き」
『マジで俺じゃ無いです』
「ほう、では出所や原因を探してらっしゃい。そうね、私が出発する日まで」
『その日付を俺は知らないんですが』
「だからこそ、可及的速やかに、迅速に炙り出しなさい」
『はぃ』
コレが、俺ら兄弟への最後の試練だったと言うのは。
本当に彼女が出て行った後に、知る事になった。
《母上、どうして》
《アナタ達が縋っては出立のお邪魔になるでしょう、それにコレは最終試験。成果をしっかりとお手紙に書き、出すのですよ》
《けど、お名前はローシュ嬢としか》
『長兄でそうなら、いや。おい、エレン、お前なら知ってるんじゃないのか?』
『まぁ、はい』
『そうかそうか、ならお前がお名前を書き上げなさい』
《コレは大切な伝書紙と呼ばれる魔道具、アナタ達でも粗末には扱えない物よ、大事に使いなさい》
コレは4人で協力し、手紙を出し、届くまでが試験。
合格発表は、母上達の元へ届く事になっているらしいが。
それがいつなのかも、俺らには知らされず。
『おい、伝書紙は大事な資源なんだ、もし失敗したら』
《分かってるよ、単なる紙にしても、作るのにはマメが出来る程に苦労したんだし》
《この折り方、凄い難しい》
『けど速い方が安全らしいから、仕方無い、頑張れ』
読み易く、伝わり易い表現で。
けれどもコチラの個人の名前は頭文字だけで、如何に簡潔に書くか。
《はい、どうかな》
『おう』
《この余白に書いたら、ダメですかね?》
『あぁ、まぁ、良いんじゃないかな。無駄にするワケじゃないのだし』
そう、ココが甘かった。
後日、長兄と四弟が呼び出され、恋文を出したいなら俺を通せと怒られていた。
『お前が用事しか書かないのは意外だったが、こうなると分かってたのか』
『いや、ただ、未だに性欲なのか恋と呼ばれるモノだったのかが区別が付かないので。そんな事を書いてもインクの無駄だと怒られるのが目に見えてただけで、ただ、それだけです。すみません、読みが甘かったです』
『いや、俺にも責任は有る、お前だけの責では無い』
『ありがとうございます』
『長兄も四弟も似た様な恋の病なら、いつか分かる日が来るんだろ、病なら』
『意外ですね、二兄がそう言った事を口にするのは』
『俺にはまだ分からんが、分からん事が悪の場合も有る。だが蔑み侮る事の方が悪だと教えられたんだ、嫌でも理解した、させられたんでな』
『マジで、アレ、そんなに凄かったんですか?』
『あぁ、長兄の語彙力が吹き飛んだのも理解した。アレでローシュ嬢が相手なら、俺そのものが消し飛んでたかも知れん』
『そんなに』
『自分で試してみれば良いだろ。まぁ、出来たら、だがな』
『そこが分からないんですよねぇ』
『まぁ、モノは試しだ、試してみろ』
ココでも、後悔した。
逆に、凄く。
『何なんですか、アレは』
『よう、やっとコッチ側に来たか』
《凄いですね、逆に》
《本当に自分だけで出来たのかい?》
『いや、寧ろそこですよ、無理ですよ自分でなんて』
『何だ、まだお前はソッチ側か』
《だよね、残念だよエレン》
《けど良かった、僕も試してみたけど無理だったから、僕だけがダメなのかと思った》
『兄者達は、縛られでもしていたんですか?』
『あぁ、そうだが、言わなかったか?』
《抵抗しないなんて無理だよね、逆に》
《そう聞いてたから、もっと良いのかなと思ってたんですけどね》
『無理でしょうよ、まさに腰が引けるんですし』
『あぁ、だろ』
《最近だと浮気の処刑に使われてるんだって、拷問としてね》
《けど、良いんですよね?》
《痛みは無いけれど》
『ある意味では苦痛なんだが、そこを超えるとだな』
《吹き飛ぶ?》
『吹き飛ぶ、確かに、拷問には良いでしょうけど。相当の趣味の持ち主でなければ、あぁ、だからか』
『噂の出所に施したらしい』
《傷1つ付けずに雄たけびを上げさせる猛獣使い、正に拷問者にピッタリだものね》
《流石ローシュさんですね》
『やっぱ怖いわ、あの人』
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