第2話 2時間目

「え?私、モブに転生してる」


なんてことがあった場合、君はどうするだろうか?

正解は、なにもしない、である。


前段でも語ったが、モブにはモブの領域がありそこから出てはいけないのだ。

対策なんぞをたててはいけない、それこそがもうモブの本分から外れる行為である。

モブはモブらしく背景に溶け込むことだけを考えるのだ。

しかしながら、履き違えるモブもいる。



「君のことが好きなんだ」

「・・・クリストファー様」


見つめ合い抱き合う二人。


のような場面に遭遇したとしよう。

ここでの正解はガン見である。

友人と一緒にいるのならば「えー、やだー、そういう関係なのー?」くらい言っとけば満点である。


決して頬を赤らめ俯いてその場をそっと立ち去ってはならない。

立ち去った先で別の攻略対象者と出会い頭にぶつかり頬を赤らめた姿を見られたりするのだ。


「な、なんでタイミング悪くこんなとこにいるのよ」


なんて、茂みに隠れてもいけない。


「こんな所でどうしたんだい?子猫ちゃん」


と、別の攻略対象者にバックハグされてしまうこと請け合いである。

頭の葉っぱなんてとられた日にゃぁ、モブを卒業したも同義である。


私はこの場面に婚約者と遭遇した。

婚約者も紛うことなきモブである。

隣の領地の男爵家の次男。

一人娘の私に婿入りするのだ。

打診があった時少なからず警戒した。

が、彼には可愛い幼馴染も幼少期に病気療養で領地に来た美少女もいなかった。

もちろん、私にも義姉義妹も幼馴染も特にいない。

そう見せかけて実は高位貴族と・・・なんてこともまるでないモブ。

彼もガン見している。さすが私の婚約者、モブをわかってらっしゃる。


「なんか見ちゃいけないとこ見ちゃったね」


なんていうマイモブダーリンを私は愛している。


ここで余談になるが、乙女ゲームの亜種というのか異種というのか、乙女ゲームだと思ってたらBがLするゲームだったというのも少なからず報告されている。

これは、大変厄介である。主に私が。

このBがLするモノによくあるのが『美形‪✕‬平凡』である。

マイモブダーリンはトップオブ平凡なのだ。

まさか、ここがその世界では?と戦々恐々としたが先程の場面を見て安心した。

メインはメインステージでキラキラしておいてくれ、と胸を撫で下ろした。


しかし乙女ゲームにおける『美形‪✕‬‪‪平凡』に物申したい。

平凡とはなにか?


素朴な君が好き

飾らない君が好き


そして「なんであんな平凡な奴を!」とやっかまれるのである。

待ってほしい。ここでの平凡はせいぜいクラスの二番手、三番手なのである。

充分すぎるほど可愛いのだ。

一番手との違いは、まつ毛の量とか頬のピンク具合とか些細なもんである。

んなもん、誤差だ、誤差。

真の平凡とはクラスの十番以下である。

二、三番手を平凡とのたまう美形にその他はどう映ってるんだ。

平凡じゃなかったら底凡か?

いや、まぁモブとしたら満点なんだが、腑に落ちない思いもするのである。

モブにもちょっぴり乙女心があるのです。

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