風邪〜学校一のイケメンに告白されて

東雲三日月

第1話

――風邪――


 学校一イケメンと噂の高崎順たかざきじゅん先輩に告白された。


 今まで、知っているイケメンは、皆自分の外見が良いことを周知しているからなのか性格が良くない。


 顔だけはトップクラスなのに、内面的なところで見ると中身が空っぽで……そんな人が多い感じがする。


 一つ年上の高崎順先輩がそれに当てはまるかどうかは分からない、以前から一目惚れして好きだったので真剣に付き合いたいと思っていた。


 それだけに、今回の出来事は付き合えるチャンスなのかもしれない、でも性格がわからないので決められずにいる。


 高崎先輩は本当に、何の努力も無しにモテる!


 だからこの告白で断っり先輩を振ったところで、どうせ直ぐ誰かしら可愛い子、美人な子が傍によってくるに違いないだろう。


 それに、高崎先輩にはつい先月まで、美人で性格の可愛い彼女がいたことは、学校内で知れ渡っていることだった。


 それなのに、そもそも何が原因で彼女と別れれることになったのか、詳しい事情まで出回らないので知らないけど、どうやら噂では別れたらしい。


 だから、先輩がフリーになった途端、連日のように高崎先輩の元には可愛い子や、美人な子が押し掛け、学校内で繰り広げられる告白劇が開始されることに……。


 ボーナスゲームの如く、イケメンな高崎先輩目当てにやってくる女の子達を、先輩は選び放題だったはずなのに、今回ばかりはどうやら選ばなかった様子。


 そんな光景を目の当たりにしていた学校中の男子達は、どうして選ばないのか羨ましがりながら、不思議そうにしていた。


 そんな高崎先輩は、状況が良すぎる世界にいながらその世界の中から女の子を選ぶことなく、すべての女子の告白を断り、普通すぎる外見の自分なんかに近づいてきて

「告白」という予想だにしていなかった行動に打って出てきのである。


 日々の学校生活の中で、特別高崎先輩と接してきたことは一度もなく、遠くから眺めるだけの存在でしかなかったはずなのに、どうして自分なんかが告白対象として選ばれたのか、考えてみたところでわからない。


 友達数人に聞いてみても、皆首を傾げるだけで、何故かなんてことは誰に聞いても結局分からずじまいだった。


 「これってチャンスじゃん!」


「今回のは辞めといたほうが良いんじゃないの?」


 以前から高崎先輩に一目惚れして「好き」だとしってる友達からはチャンスと言ってもらったり、心配してくれて辞めときなと言ってくれたりと、友達からの反応は半々……。


 ……何で高崎先輩のこと好きになったんだっけ?


 ……好きになったのって……理由は顔?


……もしかして彼女に優しくしてるとこ見て……中身!?


 心の中で自分で自分に自問自答する。


「好きです。  付き合ってもらえませんか?」


 突然そう告白されてから、返事を返さないまま丁度一週間が経過する。


 イケメンだからなのか、そんなに焦りも無く余裕があるのだろうか、返事の催促はされない。


「返事まってます」


 その宣言通り、高崎先輩からは何もアクションは無かった。


……そろそろ返事しないと悪いよな。


 そう思いながら、自分の気持ちに素直になれない自分がいて……。


 そんなある日、学校に登校したばかりなのに、昇降口で脱いだ靴をロッカーに入れ、上履きを手に取り床に置いて履き替えようとしたところで、突然目眩がして立っていられなくなり、その場で倒れ込んでしまった。


 すると、まだ僅かに意識のある中で、誰かにヒョイッと抱えられた……それも、この感じはお姫様抱っこ……なんだか凄く恥ずかしくなり、心臓がバクバク高鳴りなる音が自分だけに伝わる感じがしていると……。


 どうやら、その直後、本当に意識を失ってしまったらしい。


 目を覚ました時は保健室のベットで、三時間目が終わるチャイムが鳴り響いているところだだのが、保健室の壁にかけられている時計で分かった。


 徐々に意識が戻ってくると、ふと手を握り締められていることに気づく。


 目を覚ました瞬間は、感触すら良く分かっていなかったのだろう。


 握られている方の右手側に振り向くと、そこにはあろうことか高崎先輩がいて……先輩は握ったままベット隅に顔をうつ伏せてスヤスヤと気持ち良さげに眠っている様子。


 声をかけて起こそうか迷ったけど、あまりにも高崎先輩の寝顔が可子猫のような寝顔で可愛かったので、思わず安堵しながら無意識に反対の手で高崎先輩の頭を撫でていた。


「みゅ……」


 起こそうとしたわかじゃないのに、優しく触ったただけで可愛い声で先輩が目を覚ます。


「おはよう!」


 寝起きで言われて、ドキドキしてしまう自分がいた。


「高崎先輩お、おはようございます」


「あ、そうだった、ごめん、看病してるはずだったのに、いつの間にかねちゃってた」


「お疲れなんですよ、先輩のほうこそ休んでください」


「何いってんだよ、病人のくせに……」


「びょ、病人……そういえば登校して上履き履こうとしたらフラフラっと目眩がして……」


「少しは覚えてんだな、それからはここまで僕が運んだんだ、体温測ったら熱が高くて心配したんだぞ!  保健の先生は風邪だろうで言ってたから、このままここで休ませてもらうことにしたんだ」


「あ、ありがとうございます。  でも、先輩はどうして一緒にここにいるんですか?  もしかして、ここに運んでくれたのって……」


「僕だよ、だって、目の前でいきなり倒れるところを目撃したんだもの、そりゃびっくりしたし、心配だったからね、それに、一緒にいるのはその後もずっと心配だからに決まってるだろ……でも、サボってるわけじゃなくて、一応担任にはお腹痛くて今日は早退したってことになってるから……」


「そ、そんなことまでしてくれたんですね、すみません」


「おいおい、すむませんじゃないだろ、そこはありがとうって言えよ」


「はい、高崎先輩ありがとうございます」


「で、どれどれ……」


 先輩はふたりのおでこ同士をくっつけて体温の確認をする。


「熱は大丈夫そうだけど、もう少し寝とくのがよいね、帰るまで時間有るから寝ておきな……僕も一緒にねるからさ」


 そういうと、高崎先輩はシングルベットに一緒に入って添い寝した。


 何故か安心するのと同時のドキドキが止まらない先輩にこの心臓の音が聞こえないかとハラハラしながら気づけば眠りについていた。


 目を覚ますとそんなに寝てはいなかったらしい、歌声なしの音楽が流れていたので、時計を確認しなくても今がお昼休みだということが分かった。


 ところが一緒に添い寝してくれていたはずの高崎先輩が隣にいない。


 やっぱり、お腹空くし、食べにでも行ったのだろう……そう思いながらベッドの上で横になっていると、そこへ幼馴染の千夏ちなつが保健室にやって来た。


「あれ、もう帰ったんじゃなかったんだね、風邪なんでしょ、熱は大丈夫?」


 千夏は心配してくれているのだろう、おでこ同士をくっつけてきた。


「や、辞めろって!」


「なんでよ、幼馴染なんだし、このくらい気にすることないじゃん、でも、今見たら、熱はない感じだね」


「うん、頭痛くないから、熱は下がったんだと思う。  ところで千夏はなにしにきたの?」


「えへへ、用紙を切ってノートに貼ろうとしてただけなのにうっかり、紙で指きっちゃって、それで絆創膏もらいにきたんだよ。  じゃあ戻るね!」


そう言うと、幼馴染の千夏は教室に戻っていった。


「何話してたの?」


 丁度千夏と入れ替わるように高崎先輩が戻って来た。


「べ、別にたいした話はしてません、大丈夫って心配されて」


「どういう関係?」


「お、おさ……」


 最後まで答える前に先輩にキスされ、口を抑えられてしまった。


 その後先輩の舌が口の中にねじ込んできて、少し感じてしまい。


「あっつ!」


……感じてしまって声が漏れた。


「ご、ごめん」


 咄嗟に口から舌を抜くと高崎先輩は謝る。


「い、いえ、いきなりで変な声だしちゃいました」


 その後、高崎先輩は、さっき女の子と距離が近くて会話していたこと、おでこ同士をくっつけていたことに嫉妬したことを話してくれた。


「ほら、これ……」


 差し出した手にはお弁当の袋らしきものが握られていて……どいうやら高崎先輩は購買に行って二人分のお弁当と飲み物を買ってきてくれたらしい。


 まさか、こんなにも高崎先輩がイケメンで性格まで良かったとは……。


「あ、あの、高崎先輩、告白の返事なんですけど、ぼ、僕なんかでイイんで

あればお願いします」


「うん、良かった。  なぎさくんに断られるかと思ってたから嬉しい、ずっと渚くんは女の子しか駄目だろって思ってたんだ……」


「ぼ、僕もです!  高崎先輩は女の人としか付き合ったことないから、絶対僕なんか選んで告白してきたのは罰ゲームなんじゃないかって……でも、僕は入学した時から先輩に一目惚れしていて……でも、イケメンにはその、性格悪い人多いの知ってたんでそれもあって直ぐ返事できなくて……」


「ありがとう、実は僕も最初は女の子しか駄目だったんだ、でも、入学式の後、僕より頭一つ分背が低くて、中性的な可愛いかをの君と、渚くんとすれ違った時に、女の子には感じなかったビビビっとくるものがあって、もしかして、これが一目惚れかなって感じたんだ」


こうして、その後な渚くんと高崎先輩はお付き合いすることになった。


「先輩が風邪引いたら次は僕がお世話しますからね!  順先輩!」



























 






 

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