第5話「光る一滴」

 おやつランチは日本の4人|(元5人)組ガールズバンド。

 レーベルは自主レーベルであるSTUDIO ICHIJIKU(2019年3月時点)


▽概要

▽メンバー

△来歴

●2016年

 ・高校在籍1年目に現バンドリーダー件ベース担当の五月日さつきびこいが、以前から交流のあった加賀谷かがや麻荷まに加賀谷かがや未来みらに呼びかけ、軽音楽部がなかった高校に同好会という形でそれを設立する。

 ・5月、当時帰宅部だった浮綿ふわた阿衣あいがバンドに加わり、おやつランチの前身となるバンドが結成。

 ・8月、文化祭で初めての演奏を披露。邦楽のコピーが主だったが、オリジナル楽曲を1曲披露し、大きな反響を得る[要出典]。

・9月、10代のみに出演者を限定したロックフェス「青色ライジング」に出演、審査員特別賞を獲得。


●2017年 

 ・4月、1つ学年が下の比合ひあこころが加わり、おやつランチが結成される。

 ・8月、2度目の文化祭で、おやつランチとして初めての人前演奏を行う。


 その時、アニメ作品「マーチング!」の取材のため母校を訪れていたアニメ監督の戸瀬とせ礼二れいじの目に止まり、OP、EDの楽曲提供を提案される。

 メンバーはそれに応え、約4ヶ月で4曲の楽曲を作り上げ、その中の2曲が実際に採用される(OP、時煌ときめきアイキャッチ。ED、∞クールインフィニティ)


●2018年

 ・4月、楽曲制作に関わったテレビアニメ「マーチング」が放送されるとOP、及びEDは「マーチングバンドが主題の本編において、マーチングに必須な楽器を用いず、かつポップでかわいらしい楽曲に仕上がっている」と高く評価され[要出典]大きな話題を呼び、歌唱していないにも関わらずバンドの知名度を飛躍的に高めた。

 ・7月22日、ツリーレコードにてオリジナルCD「いちじくデイズ」を発売。1000枚を売りインディーズデビューを果たす。

 ・10月ミニアルバム「おやつタイム」を限定500枚で販売。

 ・都内を中心にライブハウスでのライブ活動が増えていく。


●2019年。

 ・2月、シングルCD「空白をはみ出して」を発売

 ・初の300人規模のワンマンライブを行う。このライブをもって、比合心が正式脱退する――

  




「これですこれ! 見て下さい」



 都市の象徴とも言える、巨大な交差点。そこを見下ろす形で店舗を構えるカフェに、嬉々とした女性の声がした。

 声の主は、ソロシンガー春継はるつな。そして彼女が楽しげに話す先には、茶色がかったワイルドショートの髪の男がいた。

 ヒップホップグループ〝キリングオブライム〟の一人、暮磯くれいそ真三しんぞうである。


 千夜琉の手にはモバホ。画面には、開いたままのウェブサイト。

 千夜琉は暮磯にモバホを渡し、目を輝かせて反応を待つ。

 

「どうです? おやつランチさん。けっこう良さそうじゃないですか? 結成まもなくでこの情報量、将来有望そうじゃないですか?」


 モバホを見る暮磯は、どこか面倒そうに顔をしかめていた。

 それは、左方の窓から射す日の光が眩しい為か、はたまた……


「俺が意見した所で、結局はお前さんの決定がすべてだろうに」

「わたし的にはボーカルの子がいいかなって


 千夜琉は、暮磯の話を右から左に、長めの黒髪を左から右方に流しクスリと笑う。

 そんな千夜琉の態度には慣れたものなのか、暮磯はモバホを千夜琉に返し、空いた手をコーヒーに持ち替える。


「というかだ…… 前から言ってるだろ。こんな野暮用程度で呼び出すなと」

「いいじゃないですか。誰もわたしたちだって気付きませんって」


 千夜琉と暮磯。二人は所属するレーベルや事務所は違えど、共通点があった。

 メディアの露出が殆どない点である。

 知名度は決して低いわけでは無いが、外見的な認知度はかなり低いという状態にある。

 だが、れっきとしたアーティスト。そういうもののスキャンダルを好む雑誌もあるにはある。


「それとも…… ホントにしちゃいます? メディアが喜びそうなこと。男、三三才。女、二四才、良い感じの年の差じゃないですか」


 千夜琉は暮磯の懸念を察し、からかってみせた。

 が、暮磯に動じる様子は無い。愛想笑いやため息さえも見せない。

 代わりに、その口は言葉を放つ。


「その気がまるで無い奴の言うことは虚しいな」


 それには、千夜琉も思わず苦笑い。さらに、


「それに俺が言いたいことはそういうことじゃない。〝狙われる機会〟をそう無駄に増やすなって事だ」


 その追言には、思わずため息をつく羽目になる。


「そうですね。マシンナリーが無くなって万々歳、とはいかないですもんね。むしろ〝彼ら〟がどうでるか、これが一番ですもんね」


 春継千夜琉と暮磯真三。二人には、世間には言えないもう一つの大きな共通点があった。それは――


「まあ、話を戻すか。おやつランチ、だったか。高校を卒業したら解散って噂もあるが、もし続くようなら加えても良いかもな」

「お、暮磯さんもなんだかんだで乗り気じゃないですか! では、もしバンドを続けたら是非仲間に加えましょう! なにせわたしたち〝マーチ〟は、フレッシュな人員を募集中ですからね!」


 大きな共通点…… それは、ある能力を持った特別な集団〝マーチ〟の仲間同士という点である。


 と、千夜琉の元に、頼んでおいた本日二杯目のメロンソーダがやって来る。

 喉がちょうど乾いていたため、コップを両手で握りストローを使わず一気飲み…… と、それは炭酸が許さない。千夜琉はしかめっ面でコップをコースターに戻した。

 結露で濡れたコップの面を、スッと落ちゆく水の玉。


「後はあれだ。四月からだったか。S4機能の法改正。忙しくなるかも知れんな」


「そのためにもやはり増員を! ま、彼女たちには近いうちに会ってみます。おやつランチ、わくわくですねー」


 ティッシュで口元を拭いた後、千夜琉は再度、メロンソーダを口にした――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る