生徒会副会長と書記
廊下を少し歩くと目的の場所に到着した。
スライドドアを引けば、そこは俺を含め総勢三名という小規模な生徒会。……いや、今日は春風さんがいるから四名か。
部屋の中では、二人の少女が既に着席し、白熱した議論らしきものを展開していた。
副会長……
夜のような黒い髪をお団子ヘアで纏め上げている。
驚くほど精巧な容姿。
アイドルと言われても違和感はない。生徒会になぜ所属しているのか不思議なくらいの存在だ。だが、俺を支えてくれる貴重な人材である。感謝しかない。
書記……
唯一の二年であり、義理の妹である来花と友人でもある。そんな縁から、生徒会に加入して書記をしてくれていた。
栗色のセミロングはいつもサラサラで、風に
そんな二人が珍しく衝突しているように見えた。
「――ですから、
おや、これは生徒会に関係のある話ではなさそうだぞ。有馬が副会長である東雲に何か訴えているようだった。
「そんわけないでしょう。会長はこの生徒会を一番に思ってくれて――」
こちらの存在にハッと気づく東雲さんと有馬は息を止めた。
俺と春風さんを見比べるようにして――そして、叫んだ。
「「か、会長おおおおおぉぉ!?」」
東雲さんも有馬もビックリして椅子から転げ落ちそうになっていた。おいおい。驚きすぎだろう。
「や、やあ……二人とも」
「か……会長。その隣の女子は……もしや」
震えるような口調で東雲さんは、俺の隣にいる春風さんを見つめた。
「あ、ああ。彼女は同じクラスで隣の席の春風さん」
「よろしく」
俺が紹介すると春風さんはクールに挨拶をした。
「よ、よろしくお願いします……。ていうか、会長!」
俺の腕を引っ張る東雲さんは、耳打ちしてきた。
「なんだい?」
「いつのまにあんなギャルと仲良くなったんですか! 風紀が乱れます!」
風紀って……いつから、東雲さんは風紀委員長になったんだか。というか、なんでこんな問い詰めてくる?
「仕方ないだろう。同じクラスなんだから」
「会長はギャルの方が好きなんですか……」
東雲の声が小さすぎて聞こえなかった。
今、なにを言ったんだろう?
「ともかく、春風さんも参加する。よろしくね」
「「……は、はい!?」」
信じられないと、東雲さんも有馬も目を白黒させた。そこまで驚くとは。俺もちょっと意外だったというか。
俺は春風さんを生徒会室へ招こうとしたが、東雲さんが阻んだ。
「ダメです、会長。関係者以外、立ち入り禁止です」
いや、そんな
困惑していると、春風さんが強引に俺の腕を引っ張った。
「どうやら、歓迎されていないようね。行きましょ、会長」
「ちょ……春風さん!?」
「残り少ない学生生活なんだから、青春を
抵抗する暇もなく俺は拉致られていく。
東雲さんと有馬は呆然としていた。
助けてくれないのかよッ。
* * *
駐輪場まで引っ張られてしまった。
「ストップ、春風さん」
「会長は、わたしといる方が楽しいよね」
期待と不安の入り混じった瞳を向けられ、俺はドキッとした。
なんだか答え次第では、春風さんが目の前から消えてしまような気がしたからだ。
そこはかとなく脆さを感じた。
春風さんを一人にしちゃダメだ。
「もちろん、楽しいよ。今日もどこか行く?」
「……そ、それでいいのよ。うん、行こ」
バイクに乗れとヘルメットを投げ渡されたので、俺は受け取った。
生徒会も大切な仕事ではあるけれど、今は春風さんが気になって仕方ない。
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