朝から拉致られる俺
自宅へ戻り、いつもの日々を過ごしていく。
晩御飯を食べ、テレビに映し出されているニュースを見ていると、なにやら物騒な内容が報道されていた。
「――お、これってウチの地域だよな。
俺に話題を振ってくる親父。
「ああ~、割と近所だよな。今時、いるんだな暴走族とか」
ニュースによると、どうやら族同士の大規模な抗争があったらしい。
片方が『
デストロイヤー』という集団のようだ。
意外にも、デストロイヤーというイカツイ名前の族がボコボコにやられたようだ。
しかも、たったひとりの族長に。
いったい何者なんだ。
しかも、これだけの事件だというのに『
おいおい、暴力事件だろうが。
いいのかこれ。
「日本の警察はどうなっているんだかな」
親父の言う通りだが、あんたは現役のお巡りさんのはずですけどねぇ!?
「親父が取り締まってくれよ」
「無理だな」
「そんなキッパリと……」
「この件については、なぜか上からの許しが出ないんだ。だから、現場の様子を見に行くくらいしか出来ん」
「嘘だろ。だって、重傷者も出てるってニュースで……」
「恐らくだが、暴走族の中に上層部と繋がりのある者がいるようだな。でなければ、とっくに両者を壊滅に追いやっているはずだ」
一体何が起きているんだかな。
まあいいや、俺は暴力とは無縁の世界に生きているつもりだ。それよりも学業優先だ。三年となった今、進学の為にひたすら勉強とバイトを繰り返す。
それでいいと、
思っていたんだがな――。
――翌日。
朝になってアラームが鳴る前に俺は叩き起こされた。
「おい、紅! 起きろ!」
「……んだよ、親父。まだアラーム鳴ってないだろ。あと十分もあるぞ」
「寝ている場合か。家の前にすげぇ美人の女子がいるぞ。しかも、バイクに乗って……お前を迎えに来たそうだぞ」
「は……?」
美人の女子?
バイクに乗って?
って、まさかあああああああああああ!!
俺は飛び上がって窓を覗いた。
二階から見下ろすと、玄関前に見覚えのあるギャルがいた。バイクもあった。
あ、あ、あれは……春風さん!!
どうして!
どうしているんだよおおおおおお!!
俺は急いで着替え、パンを咥えて玄関を飛び出た。
「春風さん!!」
「おはよ、生徒会長」
「おはよ……。じゃなくて! なんでいるのさ!?」
「む、迎えに来たんじゃん。悪い?」
「悪いっていうか……意外すぎるっていうか。そんな義理ないだろうに」
「いやさ、生徒会長って絡まれやすいみたいじゃん。わたしが守ってやらないとさ」
確かに、昨日は二度も襲われたけど……。
俺は昔からケンカを売られやすい体質だった。なぜか分からん。目つきが悪いせいかもしれん。けど、これは生まれつきだ。どうすることもできない。
「しかしだな」
「いいから、学校行こ。後ろ乗って」
「め、目立つじゃないか」
「気にする必要はないよ。どうせ誰も見てないし」
「嫌でも視界に入ると思うけどね」
春風さん自体、美人だからなぁ。
こんなギャルがバイクで走っていれば目立ちまくる光景しかないのだが。
「さっさと行くよ」
「……分かったよ。春風さんには敵わんな」
「それでいい。絶対に守ってあげるからさ」
クールなサムズアップを貰った。
でも、なんだろう……すげぇ頼り甲斐がある。
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