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げこげこ天秤
Zentrifräulein――遠心少女外伝――
Cosmic Dark Age 0.4
空の群青は妹の瞳の色だから、ふと手を伸ばしては引き寄せたくなる時がある。成層圏までの距離は約一万メートル。無論、生身で向かえば、たちまち酸素欠乏に陥る。けれど、もし行けたとすれば、そこに広がる空の色は紺青。――お姉ちゃんの目の色だねと、あなたは言うのだろう。
「ああ、うん。ごめん。ちょっと考え事」
「気を張りすぎなんだよ、お姉ちゃんは」
自分と同じ顔、自分と同じ声で言われると、本当に不思議な気分になる。十二月の風から耳を守るようにしてフードを被る少女――
「って、あれれ? お姉ちゃん、ちょっと背が伸びたー?」
「こんなのちょっとじゃん」
多分、自分が持つV遠心能力のせいだ。
もともとは一つの受精卵だったんだよ? もともとは同じ生命体。それを分けてしまったものは何なのだろう。いつか
「一緒に、沖縄に行こう」
これが
V遠心第五分類、〈
H遠心第五分類、〈
防衛大学付属岩国学園遠心科。そこに入学された時に与えられたステータス。遠心能力は第一分類から第十分類まで存在するが、第六分類以上になれば政府から認められて、その将来が保証される。そのシンボルが沖縄への配属であった。
「沖縄かぁ……。ボク、寒いのは苦手だけど、暑いのはもっと苦手だなぁ」
「文句言わない。沖縄に行けば、私たちはずっと一緒にいられるんだから。だから、ちゃんと本気だしなさい」
「えー。沖縄に拘んなくていいじゃん。お姉ちゃんが〈
「
はいはーい、と
「じゃっ、後でね。お姉ちゃん」
卒業試験は午後から、岩国基地内で実施される。V遠心とH遠心では異なる課題が課せられ、V遠心能力を持つ
「
消えていく背中を見ながら、海風が連れて来た虚しさに堪えられなくなった
「第五以下で許されるのは……学園や基地のなかだけなんだよ?」
「それでは、高等部第二三期、V遠心能力測定及び卒業試験を始めます。〈
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