第40話

「……なんこれ」

 

 確実に二人で入るにはスーパー銭湯かと思うほどに巨大なお風呂。


「……なんこれ」


 そんなお風呂に入る一組の男女。


「……なんこれ」

 

 僕は巨大なお風呂の中で妹である桜の手で自分の全身をくまなく洗われている最中であった。

 年頃の妹と互いに全裸となってお風呂に入り、己の体を妹の素手でくまなく洗われるというありえない状況の陥っている僕であるが、この前に幼馴染に監禁された経験を持つ僕である。

 この程度のことでは動揺しない……しなくなってしまった。


「洗い終わったかな?」


 僕は桜が僕の全身を洗い終わった段階で口を開く。


「うん。終わった……」


「よし……じゃあ、一緒に湯舟に入る?」


「待って。私、体を洗ってない」


「じゃあ、僕は先に湯舟の方に使って待っているね」


「ダメ。お兄ちゃんも私の体を洗って」


「……はぁー」

 

 真顔かつさも当たり前のように告げる桜を前に固まり……深々とため息を吐く。

 

「まぁ、良いよ……いくら兄妹でももう高校生なのに……」

 

 僕は不安を覚えつつも桜の要求に応じ、桜の体へと手を触れる。


「んっ」


「ふんふんふーん」

 

 僕は昔、よく桜の体を洗ってあげていたことを思い出しながら手際よく洗っていく。

 うむ……実に懐かしい。


「はい、これでオッケー」

 

 僕は桜の体を洗終え、口を開く。


「うん。ありがと!お兄ちゃん」


「どういたしまして」


「よし!じゃあ、一緒の湯舟に入ろっか!」


「うん。そうだね……僕としてはまず真っ先にこんな馬鹿みたいに広いお風呂に二人で入っている現状の理由を聞きたいところではあるけど」


「そこら辺の説明は後だよ!」

 

 僕と桜は仲睦まじく会話しながら湯舟の方へと向かった。

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