ズリ山の散策、ご利用は計画的に。
「さ~てさてさて、熊さんはどこかな~?」
「そもそもみゆ莉さん、貴女⋯⋯狩りの経験はございますの?」
「え? 勿論無いけど。それが何?」
あっけらかんと言い放つみゆ莉に、のばらは呆気にとられた後、ワナワナと肩を震わせる。
「なっ、無いってどういうつもりですの!? それなのにいきなり熊を狩ろうだなんて正気の沙汰じゃありませんわ!」
「大丈夫だって、何てったってあたしには猟師だったおじいちゃんの血が流れてるから! それに、狩り経験者のモモタローもいるし。のばらもいるし」
「わ、わたくしだって生き物に向かって矢を放った事はありませんわ! それに、お祖父様が猟師だからって初めてには変わりないんですもの。何の気休めにもなりませんわ」
のばらは照れ臭そうにほんのりと頬を染めた後、小さな声で言った。
そんな彼女の頭上にはいつの間にか白い毛玉——もといコキンメフクロウのフゥちゃんが鎮座しており、ぷうぷうと可愛らしい寝息を立ててコクコクと首を前後させていた。
「ま、何とかなるっしょ」
「わ、わたくしは無理ですからねっ」
そう言って、みゆ莉を冷ややかな眼差しで見つめるのばら。
本来ならば獲物を取り逃す可能性の高い弓矢を狩猟に用いるのはご法度である為、経験が無いのも無理はない。
しかし、のばらが弓道を嗜んでいると耳にしたみゆ莉は世界が滅びた今、咎める人間など居ない為、存分にその腕を振るって貰うつもりだ。
2人と1匹(1羽は頭上)は
気が遠くなる程の長い階段を、積もった雪を掻き分けながら前へ進む。札幌から越して来たみゆ莉も最初は交通網が麻痺する程の雪の多さに驚いたが、今では慣れたものだ。
踏み締める度に水分を多分に含んだ雪がギュッ、ギュッと悲鳴を上げる。
東京では見られない積雪量に戸惑うのばらは、ふと思い出したように口を開いた。
「みゆ莉さん、熊を狩ろうとしているのは何故ですの?」
「どうせなら最強な奴と戦いたいじゃん? ほら、モモタローもそう言ってる」
「ゥワンッ!」
「貴女って人は⋯⋯本当に命知らずですわね」
「いやぁ、それ程でも~!」
「褒めてませんわっ!」
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