第6話 一月後
その日の深夜、そろそろ空も明けてくるかいう時間。
僕たちは4人パーティーだけど、ひとつしか取っていない部屋に僕たちはいた。
素っ裸のままベッドに深く腰を下ろす僕。
横を見ると、そこには全裸で寝息を立てるユキノ・ノア・ファニの姿。ついさっきまで激しく求め合っていたけど、みんな疲れて寝てしまった。前世では彼女なんていなかったし、夜のお店にも怖くて行けなかった。転生してこんな美少女たちとこんな関係になるなんて、前世の僕に言ってもきっと信じないだろう。ついに妄想と現実の区別もつかなくなったか、と呆れられるのが関の山だ。
さんざん見たはずなのに、なんど見ても飽きない彼女たちの裸体をじっくりと見てみる。
ユキノは美少女だ。
童顔だから下手をすると中学生くらいにも見えるけど、その完全に左右対称のひどく整った顔立ちは、前世のアイドル顔負けだと思う。胸は……まぁそれなり、って感じだけどすらりと長い手足は、その起伏の少なさと相まって、本当の女子中学生のような未成熟がゆえのあやしい魅力を彼女に与えていた。
ノアは三人で一番の巨乳。
胸の話ばっかりするとノアが怒りそうだけど、やっぱりノアの魅力は大きな胸を抜きにしては語れないだろうと思う。ノアの優しそうな、清純そうな見た目と相反する巨乳……それが男の欲望を掻き立てずにはいられない。もちろん体つきも素晴らしいけど、スレンダーとかいう言葉よりは豊満、という言葉がしっくりくる体つきで、これも男の欲望を掻き立てる。
ファニはまぁ、一言で言うと幼児体型だ。
幼児体型なんだけど、その好奇心旺盛でくりくりとした目と豊かな表情が庇護欲を掻き立てる。あっちの方も好奇心旺盛で、ぷにぷにとした柔らかい身体は抱き心地が抜群だ。……ちなみに、僕の初体験の相手で、しかも邪淫失楽を初めて使った相手がこのファニだ。そのころのファニは本当にまだ子供だったんだけど、僕も一番性欲の高まる年頃でムラムラしてつい無理矢理みたいな感じで……。正直、反省してます。本当に申し訳ない。
そんな三人の美少女が、我先にと僕を求めてくれる。
大抵一番先に求めてくるのはファニ、そして競うようにユキノ。ノアは最初は恥ずかしがって、見てるだけのことが多い。とはいえしっかり見てるわけだし、いつも結局最後には求めてくるんだから最初から混ざればいいのに、と思うんだけどそれは恥ずかしいらしい。
だから一番最後までしているのは、最後に参戦してきたノア、という訳だ。
「そうだよね、僕はいま幸せだよ、とても」
誰に言うでもなく言う。
あんなことがあったせいか、近頃はとくにそう思ったりする。
もう一月前になるか、日本の異世界拉致問題対策本部から外務省の人が来たのは。ユキノがその人を殺してしまうし、ノアが動揺するし、一時はどうなる事かと思った。だけど、僕たちが彼女たちを殺したことは誰にもバレなかったし、それから日本の人にも会っていない。
ユキノの言うとおり、特に問題は無かった。
この今が壊されなくて良かった、と本当に思う。
「だからこそ、ギフトの使い所は気を付けないとね」
僕はこのギフトをユキノ・ノア・ファニ以外には使っていない。
ユキノだけは向こうから積極的に誘ってきたんだけど、ファニは半ば無理矢理だったし、ノアはユキノが強引に引っ張ってきた感じだった。意に沿わない感じで行為に持ち込まれたファニとノアだったけど、彼女達曰くギフト邪淫失楽のもたらす快楽は圧倒的ですぐに抗う事が出来なくなったという。
前世なら下手すると訴訟とかになるケースだけど、ファニもノアもすぐに快楽の虜となり、向こうから求めて来るようになった。本当にエロマンガかよ、って感じだったよ。
とんでもないギフトだと思う。
使った相手の理性を歪め、意のままにしてしまう力を持つギフトだ。
だからこそ、僕はすでに使ってしまったユキノ・ノア・ファニ以外には使わない事に決めた。
僕に好意を寄せてくれている三人への義理立て、という意味合いも勿論ある。
三人とのこの毎日を、僕は本当に大切に思っているから。
「おっと、そんなことを考えている場合じゃないな」
外を見ると、だんだんと明るくなってきていた。
今日は領主様に呼ばれているのだ。
なんの用件なのかは聞いてないけど、ギルド経由で領主の館に昼過ぎに来るように連絡があった。だから、そろそろ僕も寝ないとマズイ。
裸のままのユキノ達に布団をかけてあげ、そして僕もその中にもぐりこんだ。
◇◇◇◇◇
「領主様はなんの用なのでしょうかね?」
出された紅茶を眺めながら、少しだけ緊張した面持ちでノアが言う。
ここは、ここコンティアン領の領都ノーウィリアの中心になる領主様の屋敷。
領主様、というとデカい城とかに住んでいるようなイメージだったけど、そうではない。いかにもという大きな城に住んでいる領主様もいるみたいだけど、このコンティアン領の領主様は先代も先々代も華美な贅沢なんかはあまり好きではない質実剛健な性格だったらしい。
とっても大きなお屋敷だけど、職場も兼ねているので贅沢なお屋敷、というよりはあちこちにいろんな案内板やプレートが掲げられお役所のような雰囲気だ。
そのお屋敷に中にある応接室に、僕たちは通されていた。
今は領主様は執務中とのことで、僕たち四人だけでテーブルとソファーを囲んでいた。
ちなみに、この世界のエルフェンの国は前世で言う所の封建制度で、戦国時代の日本をイメージすると分かりやすい。
エルフェンの国、というのがあって国王や王族がいる。この大陸にはエルフェンの国ひとつしか国が無いので、この大陸全土のトップに立つのがその国王、という事になっている。各領地の領主は国王陛下に領地を任せて頂いている、という形式を取ってはいるけどすでに形骸化していて、各領地が好き勝手に領地を運営している。
戦争――という程ではないけど、領地間の小競り合いみたいなものもまれに起こる。人間ではなく長命なエルフェンの国だとしても、そういう事は普通に起こるらしい。
だけど、国王はそれに介入する力を持たない。
国王直轄の兵力は各領地の兵力と大差ない程度だし、各地の領主は国王の命令に従う義務を持たない。複数の領地間でなにか決めごとをしないといけない時などに、中心に立って進めるのが王族、という感じだ。学級委員とか町内会長みたいな役回りで、絶対的な権力者、というイメージではない。
もし、どこかの領地がものすごく横暴な事をしでかして国王が『兵をあげて討伐するぞ!』と宣言しても、各領主はあいまいな返答を返してお茶を濁すのが関の山だ。
なのでそういう場合、無茶をしでかした領地に国王から『他の領地にヒドイ事をしてはダメだゾ!』という手紙が送られてきて、『サーセン、気を付けまっすwwww』みたいな返事をして終わり、みたいだ。僕の勝手なイメージが入ってるけど。
という訳で、それぞれの領地にとって一番偉い人はあくまで領主様。
国王陛下というのは、なんか遠くにそんな凄い人がいるらしいよー、程度の認識だ。
「あ、美味しい。やっぱいい葉っぱ使ってんねぇ~~」
その偉い領主様に案内された応接室で、出された紅茶をぐびぐび飲みながらユキノが言った。
「単にカナトに会いたくなっただけじゃないのぉ~~?」
「そんな事はないと思うけど……」
からかうような口調のユキノに戸惑いながら返すけど
「そうだよっ! すごく気に入られてるよね、カナト様、領主様に!」
ファニもユキノに賛成みたいだ。
そんなことはないと思うんだけどな……。
確かに名前を憶えてもらっているし、ギルドにも何度か訪ねて来てくれた。でも、とてもやさしい方だからね。
ちなみに、ファニは領主様の屋敷に来てからすごく緊張しているのがありありと分かる。
メイドさんに紅茶を出された時も、何度も何度もぺこぺこ頭を下げていた。紅茶には恐れ多い、って感じで全く手を付けていないし、出された瞬間に手を付けたのはユキノだけだ。
そういう所はちょっと尊敬するよ……。
そんな事を考えていると、一人の男性が応接室に入ってきた。
「お待たせしました、領主様がいらっしゃいます」
すらりとした美形のそのエルフェンは、ここの領主様の補佐をしている宰相様だ。
エルフェンの年齢は見た目では判別できないんだけど既に200歳を超えていて、今の領主様の先代や先々代から仕えているという人物だ。
そして、その後ろから彼女は現れた。
まず目を引くのはゆるくウェーブのかかる、金色に輝くロングヘア。いかにも『お姫様』という雰囲気の純白のドレスに身を包まれていたが、その下にある白く透き通る様な手足はすらりと伸び、それでいて腰はきゅっとくびれ、胸部はしっかりと女性を主張していた。
彼女はぱあっと笑顔を浮かべると、いつもの優し気な、それでいてちょっと気弱な小動物のような緑色の瞳でこちらを見つめる。
「カナト、お久しぶりですね」
彼女の名はレティシア・コンティアン。
若干19歳の、この領地を治める領主様だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます