断絶のレジリエンス ~日本に帰って来いと言ってももう遅い、ハーレム最高です~
蘭駆ひろまさ
第1話 この世界
見晴らしの良い平原の中を、二十体以上のオーガが鋼鉄の棍棒を振り上げて迫ってくる。
オーガ――並の冒険者じゃ相手にならない魔物だけど、B級冒険者に昇進して初めての相手としては不足はないね。
「ユキノ、頼む!」
「分かってるよぉ、カナト。見ててねぇ?」
僕――カナト・ロアンが声をかけると、にこにこと微笑むちょっと童顔の美少女、ユキノ・フォイアンが答える。
僕と同じ黒髪黒目の日本人的な特徴を持つ美少女で、僕と同じ日本からの転生者。ふわっとした感じの肩より少し長いセミロングの髪が印象的で、僕と同じ20歳だけど種族特性と童顔のせいか中学生くらいに見えなくもない。
ユキノが躍るように歩を進める。
僕の横を通り、僕達の先頭となる位置へ。僕たちの冒険者パーティーのいつもの戦法、必勝パターンと言っていい。
ユキノが自分の目の位置を右手で覆い隠す。
僕からは見えないけど、今は目を閉じているはずだ。そしてユキノが右手をちょっと芝居がかった様なしぐさで、さっと振り払うように顔から外す。
ユキノの両目は今、流れ落ちる鮮血の様な、燃え盛る炎の様な、真紅の輝きを放っているはずだ。
「
静かにユキノが宣言すると、こちらに向けて襲いかかろうとしていたオーガ達が一瞬で炎に包まれる。
「ガアアアアッ?!」
何が起こったのか分からず、驚愕の表情でごろごろと転がるオーガ達。
ユキノの持つ
このギフトを使用すればユキノの目は真っ赤に光り、その目を見た者は全身を炎に包まれる。戦闘になれば相手を見ない訳にはいかないから、目を見れば攻撃を受ける、というのは相手からすれば非常に厄介だ。しかも、今回の様に相手が複数でも目を見た相手全員に効果が及ぶから、ちょっと厨二病的な響きの名前だけど集団を相手する時には非常に有用な
この異世界に住む人たちは、生まれた時に誰でも一つだけこの世界を作った精霊神様より『ギフト』を授かる。ギフトには
「おお、痛ったそぉ~。はい、じゃあ殺しちゃいますよぉ~~」
ユキノが背中のフランベルジュを抜き放つ。
波打つような形状の刃が特徴の両手剣で、これで斬られると傷口が潰れて治りにくいというとても残酷な武器だ。両手剣なので大きいし重いしあんまり切れ味良くないし、使いやすい武器じゃないと思うんだけど、ユキノは好んで使っている。
「そりゃっ!」
ユキノが気の抜けた声を上げながら、全身炎に巻かれ動揺しているオーガ達を斬り捨てていく。
だけど、オーガを包んでいた炎はだんだんと小さくなっているし、ユキノのギフトはその特性から敵味方入り乱れる混戦になると使えない。味方を巻き込んでしまうから。
援護に行かないと。
そう思い、後ろを振り返り声をかける。
「ノア、結界お願い。あと、ファニと一緒に援護もね」
「分かってます。ファニエちゃんも用意いい?」
「大丈夫だよっ! がんばるよ、ファニも!」
ゆっくりと頷いてくれるノアと、しゅたっと右手を上げて声を上げるファニ。
最初に頷いてくれたのがノア、ノア・クオリア。
僕とユキノと同じ黒髪黒目の日本からの転生者で、ユキノよりはちょっと大人っぽい雰囲気の、穏やかな雰囲気の美少女だ。年齢は僕とユキノと同じ20歳で、特徴は腰まで届くくらいのストレートのロングヘアと眼鏡をかけている事。見た目の雰囲気は高校の学級委員という感じ。
「
ノアが両手を合わせ言葉を紡ぐと、ノアとその横のファニの周りに光る球状の結界が現れる。
これがノアの
このギフトを使うと、ノアの周りをあらゆる攻撃を通さない結界を張ることが出来る。直接攻撃でも魔法攻撃でもすべての攻撃を防ぐ、絶対的な防御を可能にする非常に強力なスキルだ。
僕やユキノは接近戦をするから必要ないけど、遠距離攻撃主体のノアやファニは念のため結界を張っておいた方が安心だ。
「すごいよっ! すごいよ、いつ見てもやっぱり!」
両手を上げて、ぴょんぴょんと跳ね回っているのがファニエ・クシー。僕たちはファニ、と呼んでいる。
彼女は僕たちの中で唯一未成年の15歳で、僕たちより5歳年下だ。だから僕たち元日本人組の中で一番背の低いユキノよりもすこし背が低く、顔立ちなんかも幼い。彼女のくりくりとした大きな目も、幼いイメージを際立だせていると思う。
そして、なんといっても彼女の特徴で目を引くのはその桃色の髪と、ぴんと伸びた耳。
彼女の髪は桜の花びらのような桃色で、その髪を後ろでくくって短めのポニーテールにしている。
大きな瞳は緑色で、そしてなにより僕たち元日本人組の3倍くらいは長い横にぴんと伸びた耳。そう、前世のゲームやラノベに出ていたエルフのような外見。
この世界では『エルフェン』と呼ばれているけど、彼女の様なカラフルな髪色と長い耳をしているのがこの世界では普通だ。僕・ユキノ・ノアみたいな黒髪黒目で短い耳をしている方が異端で、僕たち以外にもいるのかもしれないけど、僕はユキノとノア以外には見たことが無い。
「僕も出るからね、ノアとファニはそこから魔法で援護して」
「はい、気を付けて下さいね」
「分かったよ! 援護するんだよっ、ファニも!」
優しく微笑んでくれるノアと、拳を握りしめてふんと気合を入れるファニ。
ノアのギフト
具体的には内側からは剣などの直接攻撃は一切できない。魔法攻撃も内側で魔法を具現化して外側へ放つことは出来ないけど、結界の外側で魔法を具現化して敵へ放つことは出来る。だから、ノアが背中に背負っているコンポジットボウも、このギフトを使ってしまうと出番は無くなってしまう。
とはいえ、外からの攻撃は受け付けないのに内側からは攻撃できる、とんだチートだと思う。
もちろん、欠点もある。
結界を張るとノアは移動が出来ないので、相手に逃げられてしまう事が多い事だ。それに結界展開中はノアは魔法が使えないから、戦闘が膠着状態になってしまう事も多い。
まぁ、それでも強力なギフトだとは思うよ。
僕も
そんな事を考えながら腰のロングソードを抜き放ち、左手のバックラーを構える。
「じゃあ、行くよ!」
態勢を立て直しつつあるオーガ達に斬りかかる。
目の前のオーガにロングソードを振り下ろす。
手に伝わるざっくりと肉を切り裂く感覚と、吹き出す鮮血。
オーガみたいな恐ろしい魔物でも、血の色は僕たちと変わらない。
胸によぎった感情に蓋をして、無心でオーガをもう一体斬り捨てる。
「グオオオオオオッ!」
その時、仲間が殺されて激昂したのか、叫びをあげる一体のオーク。振り上げる手には鋼鉄製の棍棒。
「サンダーテンペスト!」
その時ファニの声が響き、目の前のオークに稲妻が落ちる。
ファニの魔法だ、そう思った瞬間いくつもの稲妻が同時に走り、何体ものオークが倒れる。
「行くよ、もうひとつっ! フレイムディザスター!」
ファニが杖をもう一度ぶんと振ると、空に現れるのはいくつものごうごうと燃え盛る炎の塊。
そのいくつもの巨大な炎の塊はゆっくりと、まるで死の宣告かのように動揺するオーガたちへと落ちてくる。
「グギャアアアアアッ!?」
悲鳴を上げるオーガたち。
ファニのギフトは「全属性魔法」。
ファニ以外に持っている人に会ったことの無い、
あたりを見回すと、二十体以上いたオーガも、生きているのは数体となっていた。
「はい、残念でしたぁ。もし転生したらヒトに生まれ変わってねぇ~~」
その残っていたオーガも、ユキノがにこにことした笑顔のままフランベルジュでさくさくと斬り捨てていく。
フランベルジュは決して斬れ味の良い剣ではないから、半分殴り飛ばす、という感じだけど。
それから5分ほどで、その場に生きているオーガはいなくなった。
「みんな、おつかれぇ~~」
「カナトくんもユキノちゃんも、おつかれさまです」
「すごい! すごいよっ、オーガをあんなに簡単に!」
結界を解除したノアの所にユキノが合流し、おたがいに労をねぎらい合う。
この四人でパーティーを組んでから結構経つ。
すでに気心の知れた間柄だし、お互いの性格や考えも良く分かっているから、連携も阿吽の呼吸で出来るようになってきた。自分で言うのもなんだけど、かなり良いパーティーになってきたんじゃないかと思う。
「ほんとうにお疲れさま。思ったより上手くいって良かったよ」
三人に声をかけながら、空を見上げる。
すでに空は薄暗くなり、夜の帳が下りようとしていた。
今からオーガの魔石や素材を採取しないといけないし、そうすると領都に帰ると夜になるかな? 急ぎの依頼でもないしギルドへ報告に行くのは明日でも大丈夫かな?
「ギルドへ行くのは明日にしようか。今日は帰ったら食事にしよう」
そう言うと、ファニが「やった!」と両手を上げた。
「セックス! セックスしよう、帰ったら、みんなで!」
満面の笑顔で、セックスしようと連呼するファニ。
その言葉を聞くと、どきりとして顔が赤くなるのを感じる。
「おお~、いいねいいね。わたしもセックス気持ちいいし大好きだよぉ」
「も、もう! ファニエちゃんもユキノちゃんも、そんなにセックスセックス言わないでよ……」
「はは……」
ニコニコとセックス大好きだと同意するユキノと、顔を真っ赤にして俯いてしまうノア。そして、ノアも恥ずかしがりはしても、セックスしようという提案に対して否定はしてこない。
僕はその様子に、苦笑するしかない。
「じゃあカナト、帰ったらお願いねぇ。期待してるよぉ?」
「カナト様! 気持ちよくして欲しいのっ、いつもみたいに、ファニも!」
「うう……じゃあカナトくん、私もお願いします……」
期待したようにこちらに伸ばされる二本の手と、おずおずと伸ばされる一本の手。
「はは……頑張るよ」
僕が授かった
その効果は単純、異性とのそういう行為が神がかり的に上手くなる、というものだ。僕もユキノたち三人も他の人とそういう行為をしたことは無いから比較は出来ないけど、今まで体験したことも無いこの世のものとは思えないほどの快楽が得られるという。
もちろん、僕もすごい快感を感じることが出来る。
しかもギフトの効果なのか、行為中は全く疲れることなく無限ともいえるスタミナで行為を続けることが出来た。四人でどろどろになりながら続けられるその行為は、いつもユキノ達が気を失うまで続けられる。
……だからきっと今晩もそうなるんだろう。
僕はそう思いながら、まとめて三人の手を手に取った。
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