第5話 チートスキル【死因回避】発動
ステータスを確認したオレは、飲んでいたエールを吹き出す。
「どうしたの急に吹き出して。大丈夫?」
「すまん。気分が悪くなった。外の空気を吸ってくる」
オレは心配そうに顔色を窺ってくるユウキを手で制したあと、酒場の裏手に出た。
頬を撫でる夜風が気持ちいい。
酒に酔ったわけでもないのに、自然と足がフラフラする。やけに体が熱かった。
それはそれとして――――
「ど、どういうことだぁ、これはぁ~!?」
オレはひと気のないところで叫び、何度もステータスを確認する。
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【ロイス・コレート】
●冒険者ランク:ゴールド
●クラス:デュラハン(Lv1) ファイター(Lv30)
●能力値:【体力47】【反射31】【知覚25】【理知20】【幸運1】
●ユニークスキル:【死因回避】
●所持スキル:【シールドマスタリー】【ダークシールド】【闇の寵愛】【剣技/上級】【攻防の構え】【炎耐性】
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「やっぱり職業欄にデュラハンと書かれている……」
しかも、レベルが「パラディンLv7」から「デュラハンLv1」に下がってる。
能力値も全体的に落ちていた。幸運なんて最低値だ。
(デュラハンって不死の騎士のことだよな……)
心の中で【ダークシールド】について情報を閲覧してみる。
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●盾技スキル【ダークシールド】
→ 魔属性の魔法障壁を前方に展開。
魔属性魔法、魔属性攻撃を吸収。聖属性魔法、聖属性攻撃の威力を軽減する。
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(【ホーリーシールド】の魔属性バージョンってことか……)
ホーリーシールドはオレがパラディンになった時に覚えた初期スキルだ。
聖属性の魔法障壁を前方に展開して、魔属性の魔法や攻撃を軽減する。
パラディンは女神の恩寵を受けた聖属性の力を宿す騎士だ。
ホーリーシールドだけでなく回復魔法も使える。
一方、デュラハンはアンデッド系の魔物の一種とされている。
この世に未練を残した騎士が闇落ちした姿とされていた。
(心あたりがありすぎる!)
前世でユウキに殺されたとき、これまでの人生を後悔して二度目の生を願った。
しかも、死に際に豚バラ定食を食べたいとか思ってた。この世に未練たらたらだった。
時間が巻き戻った仕組みはわからないが、アンデッドの騎士デュラハンとして蘇ったのは確実だろう。
よく見たら【闇の寵愛】とか、それっぽいスキルも覚えてる。
それと……。
「ユニークスキル【死因回避】……か」
まさかこのオレがユニークスキルを覚えるなんて。
スキルの詳細を閲覧してみよう。
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●ユニークスキル【死因回避】
→死因となった事象を魂に記録。
死を回避するための耐性スキルを自動的に習得する。
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「え……? なんだそれ。めちゃくちゃ強くないか?」
おそらく【炎耐性】が【死因回避】で覚えた新スキルだろう。
前世でのオレの死因は、溶岩に落ちて灰になったことだからな。
(もしも【ダークシールド】が使えていたら、ユウキの攻撃に耐えられたかもしれない)
反属性による軽減効果ではなく、同属性による吸収効果で【ダークエンチャント】を無効化できたならユウキの攻撃を止められただろう。
【ダークシールド】もまた【死因回避】によって覚えたスキルなのかもしれない。
「おい、兄ちゃん」
「ん……?」
オレが夜空を見上げてスキルを確認していると、背後から声をかけられた。
後ろを振り向くと、頬にキズがある見るからにゴロついていそうなシーフがオレを睨んでいた。
「ここはオレの縄張りなんだよ。立ちションなら余所でやんな」
「酒場の裏が縄張りって。おまえは野良猫か?」
「ナメてんのかゴラァ!」
シーフが激昂してナイフを取り出した。
(あれ……? こいつの顔に見覚えがあるぞ……)
前世の記憶でこのシーフと会ったことがある。
ユウキを追放したあと、パーティーメンバーと作戦会議をしていたときにウザ絡みしてきたのだ。
軽く腕をひねって追い返したのだが、街中で騒動を起こしたとされて冒険者ギルドからペナルティーを食らった。
今にして思えば、あの出来事が不和の始まりでもあって……。
「野郎、ぶっ殺してやる!」
あと先を考えてなさそうなシーフが、ナイフを手にして襲いかかってきた!
「くたばれ! 【ウィークポイント】!」
ご丁寧にもシーフは暗殺スキルである急所突きを使ってきた。
(試してみるか……)
オレは両腕を広げてシーフの攻撃を腹部で受ける。
――ぐさり。
鎧を身につけていないオレは大事な器官をナイフで刺され、致命傷を負う。
強烈な痛み、それ以上に耐えがたいほどの熱が腹部を襲い、オレはその場に倒れた。
「ぐおおっ……!」
「へへっ。ざまぁみろ! こいつは貰っていくぜ」
シーフは血まみれになったオレの懐から銀貨の詰まった袋を奪うと、足早に立ち去った。
「ま、待て……」
それはユウキに渡すはずだった馬車賃だ。
そう言おうとしたが、口から溢れるのは鉄臭い血の塊。
「ごほっ……!」
まずいなこれは。とてつもなく気分が悪い。
走馬灯が流れ始まる。最初に浮かんだのはユウキの笑顔だった。
(すまない。こんな死に方をして……)
伸ばした指の先から冷たくなっていく……。
やがてオレは意識を失い、路地裏で息絶えた……。
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――――――――――――
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―――――
「ここはオレの縄張りなんだよ。立ちションなら余所でやんな」
気がつけばオレは酒場の裏でシーフに脅されていた。
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