ざまぁされた勇者と無能魔女の死に戻りループ無双~追放者に復讐されたら死亡フラグ回避のチートスキルに覚醒しました。今からでも遅くない! 俺と冒険の旅に出よう~

空下元

死に戻りスキル覚醒編

第1話 おまえを追放する!


。おまえをパーティーから追放する」



 冒険者が集う夜の酒場にて。

 オレは金髪の少年ユウキ・マリアドールにそう宣言した。



「え……っ!? いまなんて?」



 動揺したユウキは椅子から立ち上がり、青い瞳を向けてオレに問いかけてくる。



「聞こえなかったのか? おまえをこのオレ……が率いる冒険者パーティーから除名すると言ったんだ」



 オレは黒い前髪を揺らし、わざとらしくため息をついた。



「ど、どうして急に……」



 戸惑い、声を震わせるユウキ。


 ユウキは体が華奢で童顔だ。年齢は17歳。オレより3つも年下だ。

 実年齢よりも若く見られることが多く、他の冒険者に舐められていた。

 ユウキを軽んじていたのはオレのパーティーメンバーも同じだ。

 その理由は……。



!」



 ユウキに向かって手をかざす。

 すると、何もない空間に文字と数字が浮かんだ。



 ――――――――――――――――


【ユウキ・マリアドール】


 ●冒険者ランク:ブロンズ

 ●クラス:プリースト(Lv1)


 ●能力値:【体力7】【反射9】【知覚12】【理知15】【幸運8】

 ●所持スキル:【回復魔法/初級】【感知魔法/初級】【魔法属性付与/初級】【武具強化/初級】


 ――――――――――――――――



「自分のステータスをよく見てみろ。能力値は底辺で所持スキルも少ない。職業レベルも初期のまま。これを無能と言わずなんと言う」


「う、うぅぅ……」



 オレの指摘にユウキは涙目になる。



「確かにボクは万年レベル1で冒険者ランクもブロンズのままだ。体も虚弱で荷物運びも満足にできない」



 ユウキはボソボソと呟いたあと、癇癪を起こしたように大きな音を立ててテーブルを叩く。



「だけどその分、回復魔法や援護魔法でパーティーに貢献してきたじゃないか!」


「確かに武器の強化魔法だけは頑張って覚えたようだな。だが……」



 ユウキの癇癪はいつものことだ。

 オレは顔色を変えず、自分のステータスを表示させる。



 ――――――――――――――――


【ロイス・コレート】


 ●冒険者ランク:ゴールド

 ●クラス:パラディン(Lv7) ファイター(Lv30)


 ●能力値:【体力52】【反射36】【知覚31】【理知25】【幸運21】

 ●所持スキル:【シールドマスタリー】【ホーリーシールド】【ホーリーレジスト】【回復魔法/初級】【剣技/上級】【攻防の構え】


 ――――――――――――――――



「おまえが初期クラスのプリーストで足踏みをしている間に、オレは上位クラスのパラディンになった。防御だけでなく回復魔法も使える。おまえがいてもいなくても変わらない」



 この世の住人は女神の力により、己の職業レベルや能力値、スキル熟練度が数値化されている。

 ステータスはそれらのデータを一覧化したもので、自分だけでなく他人のデータも閲覧できる。

 モンスターと力比べを行う冒険者にとって、能力値の高さやスキルの有用性は己の優秀さの証明だった。



「ハッキリと言おう。ユウキ、おまえは足手まといなんだよ」



 オレは努めて冷酷に突き放すようにそう言うと、銀貨の詰まった小袋を懐から取り出した。



「いますぐ荷物をまとめて田舎に帰れ。帰りの馬車賃くらいは出してやる」


「本当にボクを見棄てるの、ロイス……?」



 ユウキが目に涙をためて訴えてくる。

 オレは気持ちが揺らぐのを感じながら、想いを断ち切るように小袋を投げつけた。



「同じことを何度も言わせるな。出て行け、この無能がっ!」


「くっ……!」



 床に飛び散る銀貨。

 ロイスは唇を噛みしめて涙をこらえたあと、銀貨を拾って酒場を後にした。



 ◇◇◇◇



「ふぅ……」



 ユウキが去ったあと、オレは椅子に深く腰掛けてため息をついた。



「お疲れね。リーダー?」


「メイメイ……」



 様子を見ていたのか、パーティーメンバーのメイメイ・ライラックが声をかけてきた。

 ハイソーサラーであるメイメイは、トレードマークの三角帽子と肩まで広げた際どい格好のローブを身につけている。



「眉間にしわを寄せちゃってイケメンが台無しじゃない。嫌なことはお酒を飲んで忘れましょ」



 酒瓶を持ったメイメイは、紫色の長髪と豊満な胸を揺らして隣の席に腰掛けた。



「それとも、いつもみたいに優しく抱きしめましょうか?」


「そうだな。今日は何もかも忘れたい気分だ」


「ふふふっ。そうこなくちゃ。部屋を予約しておかないとね」



 メイメイは妖艶に微笑むと、空のグラスに真っ赤な葡萄酒を注いでくれた。

 泣きぼくろが実に色っぽい。思わず目を奪われる……。



「リーダーは大変ねぇ。憎まれ役を買って出ないといけないんだから」


「これがオレの仕事だからな」



 オレは酒を飲みながら、パーティーから追放したユウキのことを思い出していた。


 ユウキと出会ったのは2年前だ。

 当時のオレは冒険者に成り立てで、同じく駆け出しだったユウキとパーティーを組んだ。

 新しくメンバーを迎えるまで、二人きりで冒険の旅に出かけていた。


 冒険者はモンスターを討伐することで賞金を稼ぎ、また経験値を得る。

 得た経験値によって職業レベルが上がり、戦闘に役立つスキルも覚えられる。

 スキル熟練度が上がると、より高度で役立つ上位スキルを覚えるという仕組みだ。

 このスキルシステムも、戦いを司る女神の祝福とされている。


 異変に気がついたのは、初めてゴブリンを倒したときだ。

 オレはすぐにファイターのレベルが2に上がった。

 だが、ユウキはプリーストレベルが1のまま。


 その後も討伐クエストをこなしたが、ユウキのレベルは止まったままだった。

 そして気がつけば、オレ一人だけが上位クラスのパラディンとなっていた。



(これでよかったんだ……)



 ユウキとの実力差は日に日に広がる一方だ。

 うぬぼれではない。ステータスが如実に真実を物語っている。

 初期メンバーのよしみで控えとして在籍させていたが、それも今日までだ。



「気を取り直して次のクエストの準備に取りかかろう」


「お次に狙うのは【魔竜の洞窟】だっけ?」


「ああ。洞窟の奥には目もくらむような金銀財宝が眠っているらしい。ダークドラゴンを倒せばレベルも一気に上がる。パーティーの箔もつくだろう」



 ユウキがいたせいでくすぶっていたが、ウチのパーティーの実力は申し分ない。



「ダークドラゴンが相手でも、オレたちなら遅れを取ることはない!」



 ◇◇◇◇



「ぐああぁぁぁぁぁぁっ!」



 火山地帯にある難攻不落の【魔竜の洞窟】。

 その最深部にあたる溶岩の間で、仲間たちの悲痛な叫び声があがる。



「くそっ! どうしてこんなことに……っ!」



 仲間を殺したのはダークドラゴンではなかった。

 財宝が眠る大扉の前、そこに立ち塞がったのは――――



「ユウキっ! どうしておまえがオレたちの前に立ち塞がるんだ!?」


「自分の胸に聞いてみなよ、ロイス・コレートっ!」



 ボロボロの黒衣を身にまとい、手に漆黒の剣を携えたユウキだった。




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